アメリカドラマの罵倒語に見る文化の考察

※罵倒語・お下品ワード満載なので、不快になる方は注意。

お下品ネタを誤魔化すためにタイトルはお堅くしてみました…。

アメドラを見ていると悪口・罵倒語・侮蔑語・スラングが多彩です。どんなドラマ見てんだって話もありますが、アクションとか犯罪ものが多いので余計にそんな単語ばかり。見始めた頃は、分からない単語を調べるたびに「また罵倒語」「下品な単語」ってうんざりしてました。笑。「テレビドラマでもここまで言っちゃうの?」とか。そのうちシチュエーションで想定できてくるけど。ってホントにどんなドラマ見てんだよって。

でも統計的にも日本語は、英語以外の他言語と比較しても、罵倒語が少ないってどこかで見たので(ソース失念)日本が特殊なのかもしれません。ドラマでも日本だとそんなありとあらゆる言葉で罵倒してたり悔しがってたりしませんから。といっても別に、日本人は悪口も言わないお上品な国民て言うんじゃありません。だって言葉のいじめもよくニュースになるし、パワハラセクハラも多いわけだしさ。単に表現方法が違うのではと。

類義語多すぎ

日本の一般的な悪口「馬鹿」「アホ」「ボケ」「低能」に対応するくらいの単語の時点でまず類義語多すぎです。「stupid」「foolish」「idiot」「silly」「moron」「dumb」「ridiculous」etc。使い分けやニュアンスは英語学習系のサイトとかに載ってますから書きませんけど、比較的軽くて「Don’t be silly.」って使うくらいの「silly」みたいなのから、下品な「co*khead」とかのスラング系まで幅広すぎ。頭おかしいって言いたい時も、英語は単語がたくさんあります。

日本語は全部「バカ」、関西なら「アホ」「ボケ」で済ませつつ、親密なのから侮蔑までニュアンスによって相手へのダメージを変えますが、もしかしたら英語は怒りの度合いによって使う単語のレベルが違うのかもしれない。ムカつき度が上がるごとに汚い言葉になるとか。日本語はハイコンテクストな言語とか言われるのも、同じ単語で罵りつつニュアンスで度合いが変わるのが分かりづらいからかも?とか。ここは推測だけど。

お下品ワード

軽蔑する時に吐き捨てるような単語、「scumbag」とか「douchebag」とか「dirtbag」とか「sleazebag」とかbagの派生だけでもいろいろあるし、最初に意味を調べた時は正直なるほどって感心してしまいました。まあお下品ですが、よく考えるよねって。日本でも身体を『食べて出すだけ』的な袋に例えて無能な人を罵ったりはするよね。子供向けのアメコミアニメ(バットマンB&B←なんでそんなの見てんだよって、好きな俳優が声優もやっているからである)では悪役が人間ヒーローに向かって「earthbag」って罵ってたので、合わせる単語では普通にも使えるのかな。

でも大体のお下品ワードは、日本語と比べるとハイレベルすぎて?相手を罵る意図以前に、日本人的にはむしろそんな単語を他人の前で言う自分が恥ずかしいってなってます!自分にダメージ来てんじゃん!「ass」なんとかってお尻系の単語の派生もそう。下ネタ系・性的な単語は言う側のが罰ゲームに見えるけど、女性も言ってるよ…。

ただこの辺も、日本語以外の文化だと、そんな毒々しい下品な単語を使ってまで下げたくなるほどお前はひどいんだって伝えるため、それほど最低なんだと言うために、故意にひどい単語を使うらしい。そこで自分が恥ずかしいと思わないのも、私にそこまで汚い言葉を使わせるあんた・状況が悪い!って相手のせいにできる文化の違い?でもやっぱり人前で使うと使った当人が眉をひそめられるので、言わない方がいいのは間違いない。

いわゆる『four-letter word』『Fワード』ってやつは日本でも有名ですが、『Bワード』『Cワード』『Sワード』なんてのもあります。人種に関わる『Nワード』ってのもあります。『○ワード』って言い方してる時点で、単語言ってるのと変わらないじゃんて気もしますが。。。

この手の単語も英語学習系のサイトなどで紹介されていたりしますからいちいち挙げません。けどほとんどが直訳してるだけで、日本語の意味にすると大体似たり寄ったりになってしまう。もしくは懲りすぎて、由来を見て感心して終わってしまう。というのも、やっぱりそれほど日本語に罵倒語の種類がないから、ということではないかと思います。

一番有名な「f*ck」をとっても、台詞中では形容詞・名詞・動詞化とバリエーション豊富です。やさぐれた登場人物だと連呼してるし、なんでもこの単語で表現してるし。日本語でも全部「すげー」「かわいい」で済ませる人がいますけど、それを「う○こ」に置き換えた感じ?もっとひどいか。。。しかも動詞化がある分、「fu*k」の方がかなりの幅をカバーできてるようです。そんなわけである意味便利だし、なにかと耳につきやすいのが困りものです。

宗教ワード

「son of a bi*ch」とか「motherf**ker」「bast*rd」なんかのいわゆる『お前の母ちゃん出べそ』系の煽りは日本だと子供時代で卒業してるので、罵倒語として出てきても微笑ましい気持ちになっちゃったりして。一方で『アメドラお約束/実の父親じゃない』ってところでも書きましたが、英語圏だとこの辺がとんでもなく侮辱に感じるのは宗教由来なタブーから派生した点もあるんでしょう。

神様が出てくる言葉なんかも取扱注意のようで、テレビドラマだと最近は特に排除されてる様子。悔しがる時も昔はよく「God damn it!(ガッデム)」って言ってたけど、今はただの「Damn it!」なのもそのせいでしょうか。「for God’s sake」がそこだけ英語字幕消えてるのも見たことあります。「Jesus!」みたいな言葉もテレビドラマでは見なくなりましたが、映画だとレイティングが緩い分、まだ見かけたりします。

一方で「How should I know?」が「How the hell should I know?」になるみたいな「the hell」つけて強調するやつは今でも残ってます。まあ仏教でも地獄あるからね?←テキトー。

日本語でもたとえば『ちくしょう=畜生』は『仏教用語で人間以外の動物を指す。転じて人に使う場合は、お前は獣だ=人でなし!ってことです』なんてのが直訳ですが、それ意識して使ってる人とかは多分いないと思います。日頃は無宗教だって言ってても、ムカついたらちくしょー。そういうもんです。なので英語圏も意識せずに使ってる人が多いと思いますが、近年はポリコレとかもあるんでしょう。

ただでさえ日本語は表現少ないのに、日本にもその波が来て、畜生は仏教ワードだからその他の宗教に配慮しましょう――なんて言われたら困るよね。でもいずれはそうなる可能性あるかもしれない。

単語の受け止め方の差異

伏字にしなくていい単語だと、「coward」「pathetic」とか。直訳すると「卑怯者!弱虫!」「惨めなやつ」って感じでしょうか。相手を責めたり罵ったり非難するのによく出てきます。でも、日本語の直訳だと弱いんじゃないかとドラマ見ていて思う。

というのは、「coward」って言われて銃ぶっ放したりしてるから。笑。

日本でもケンカとか状況によっては「弱虫!」とか言われて殴ってしまうってあるかもしれませんが、そこまで怒るほどか?って見ていて思う。ということは日本人が思うよりもキツイ意味なのではないかと。他の単語もそう。アメリカ人の方がキレやすいとかって言うんじゃなく、日本人は単語には反応しないんじゃないかと。耐性ついてるとも言う。

日本は最初に書いたように同じ単語でもニュアンスで変わる。謙遜文化もあって、持ち上げるんじゃなくて下げることで愛着や愛情を表現する。「馬鹿」「アホ」は悪口であると同時に、「もうお馬鹿さんね」「お前はアホやな」なんて甘えてみたり、身内を呼ぶのに使ったりします。(英語でも最初に挙げたような軽い意味の単語はあるし、アメドラでも「お前は馬鹿な女だな」みたいな下げた使い方してるのもありますけど、通常は言い返されてる。)

更に日本のお笑いなんかだと罵倒語もボケツッコミでよく使われてます。だから「馬鹿」「アホ」「ボケ」「カス」とか言われても、ニュアンスによっては相手との親密さを感じ取ったりもするし、笑いにもなる。勿論、ケンカで罵倒するのにも使いますが。なのでダイレクトにダメージは受けない。

我が身に置き換えても、「ババア」って言われるのも確かにムカつくけど、まあ自分でも自虐で言っちゃうし、むしろ「シミ出てきた?」「肌がたるんでるよ」なんて遠回しだけど具体的な方がじわじわダメージ来ます。「デブ」より、「足太い」とか「最近お腹出てきた?」とかの方がキツイ。更には「同じ年の○○さんと比べても老けてるね」とか他人と比較されるとダメージが大きい。

というわけで、日本語に罵倒語が少ないのは、ストレートな単語より、具体的に指摘されたり、他人と比較される方がムカつくから、なのではと思ったりして。世間体を気にする横並びの民族らしい?

最初に挙げたbagの派生のやつも、日本語だと「食って○ソして寝てるだけのろくでなしめ!」とか「お隣の○○君は立派なのに、あんたはいい年してニートで!」とか文章として煽られた方が効くと思う。

まあ英語でも慣用句なんでしょうが「○○○の息子!」って言われても、日本人的には「俺関係ないし」でスルーできちゃう。子供の頃の「お前の母ちゃん出べそ」も「うちの母ちゃんおへそ出てないし」で撃退してたからね。。。それより日本人は「同期の○○さんは昇進したのに、あんたは安月給のままでみっともない」とか、他人と比べられて自分の欠点を具体的に言われた方がショックだよね。そして日本人は実際そういう煽り方をするような。笑。

これ言い方を変えると、日本語は陰湿だとか、ネチネチしてるともいえる気がします。個別カスタマイズして煽るから、オールマイティに使う広義の罵倒語が少ないわけで。対して英語のがシンプル・ストレート。

そして裏返すと、日本人には単語の煽りはそれほどヤバイと自覚できないからこそ、注意する必要があるのではとも思います。海外で日本人がこの手の禁止ワードを使って顰蹙買う…なんてのも、母国語じゃないからダイレクトに伝わらないのもあるし、そもそもが日本人には単語煽りは深刻に感じられないから軽く使ってしまうと。アメリカで恋人や奥さんを「馬鹿」って呼んだら離婚ものらしいし、「愚妻」なんて言ったら慰謝料取られちゃうかもよ。まあそういうのも文化の違いだね。

つまり、
・英語の罵倒語は単語レベルで山ほどあるけど、たくさんあるからこそ迂闊に使わない。人に向けて言う時は覚悟がいる。言われる側も耐性がない。
・日本語は割と相手に向けて下げた単語を頻繁に口にするので耐性がついているから、単語レベルの罵倒語は発展しなかった。本気で叩きたい時はネチネチ具体的に責める。
なんて感じかと。
私が思っただけで、まあほんとかどうか知らないけども。

最後に取ってつけたように取ってつけると、笑、英語は誉め言葉も日本より豊富な気がします。ていうか実際よく褒めてる。そこは日本も見倣うべきだね。

さて今回はお下品な単語の連呼で疲れたので、たまには心洗われるような、おハイソできれいな言葉遣いのドラマでも見たいと思います。。。

アメリカ人なら だれでも知っている
英語フレーズ4000

a*sはあってもf*ckはなかったり、スラングとか汚い言葉はほとんど載ってないけど、
アメリカ英語の熟語から慣用句や定型文までいろいろ載っている。
英語の雑学本として普通に読んでも楽しい。