今回の宗教と政治と歴史とCIA

安倍元総理が亡くなって1週間が経ちました。一報を聞いた時は驚きましたが、その後に世界中でトップニュースになり、要人からの追悼があり、影響力を感じました。

まずは元総理の御冥福を心よりお祈り申し上げます。

今回はその事件の中で出てきた宗教団体と政治のつながりについてとニュースクリップなどです。生まれる前の大昔のニュース記事やCIAの公文書…かこれ…ってのも引っ張ってきました。当然、政治と宗教のつながりも書いてますが、元総理や自民党を責めているとか擁護するとかそういう意図のあるものではありません。あくまで歴史の話です。まあ宗教団体は批判してるけど。

※宗教団体名は、『世界平和統一家庭連合』が正式ですが、旧名であり日本で一般的な『統一教会』で書いています。

　

統一教会の日本とそれ以外の国での温度差

日本では有名アイドルの合同結婚式のニュースが出た当時に騒がれました。合同結婚式が1992年でオウム真理教の地下鉄サリン事件が1995年。未だにセットで語られがちなのも大体同時期だったから。ノストラダムスの大予言とか話題になっていた世紀末で、いろんな宗教が活発になっていた時期でもありました。

私もほとんどの知識はその当時に得てますが、当時は霊感商法で高額のお布施を強要したり壺や印鑑などを買わせるトラブル、そして合同結婚式が社会問題になっていました。

その頃に聞いた教義は――日本はサタンの国で全ての日本人は原罪を持っている。だからイエスの生まれ変わりの教祖様の国に謝罪して献金して祈れば罪は浄化される――だったっけ。合同結婚式も、罪を背負った日本人は教祖の祝福の元で結婚することで赦されるとか。

そんな感じのいかにもな教えだった。子供ながらに「そんな都合良い設定を誰が信じるんだよ？」って不思議だったんだけど、病気や不幸を抱えてる人に近づいて罪悪感をついてあなたが不幸なのは先祖のカルマ、みたいに洗脳するんだと。

　
その後身内に病人が出た際に改めて気づきましたが、病気になると「これを飲めば・買えば・祈れば…治る」系の人たちはわんさか近寄ってきます。うちの身内の時も、病気を知った知り合いや同僚・身内はもとより、同じ病院に入院してる患者さんやその家族からの勧誘もいろいろあった。なので病院によっては『勧誘禁止』みたいな張り紙されてるらしい。

ガンとか余命があり末期になるまで本人も意識があって活動が可能なものだと特に、藁にもすがりたいというか、全ての可能性を試したくなる心理に付け込んでくる。あれをやっていたら治ったかも、助かったかもって後悔したくない。本人も身内も。それでいろんなサプリや民間療法を試したりして、カルトの勧誘にもはまってしまう――と。

　
それ以外のパターンだと、知り合いの有名な霊能者に手相を見てもらおうとか誘ったり、健康食品（朝鮮人参）とかを健康にいいよって勧めてくるとかマイルドなところから勧誘が始まるパターンは当時も問題視されてました。駅前で「手相の勉強してます見せてください」って言ってくるのは統一教会って昔はよく聞いた。有名な壺を売りつけるのもセミナーとかに誘ってそこで勧誘するのもあった。信者同士にノルマがあるから勧誘がエスカレートするとかね。

さてそんな感じで日本では、反日教育を受けた教祖が作った偏った思想の悪徳宗教団体で多額のお布施を強要したり、壺を売ったり、ホールで何千組もが合同結婚式を挙げるヤバイカルト宗教、として多くの人に知られるようになりました。

　
一方でアメリカでは。

記憶していた教義がそんな感じだったので、私は今回の件があるまではアメリカではそんなにメジャーではないと思ってました。それで友達に教義やお布施の件と共に日本で有名なヤバイ新興宗教なのよって説明しようとしたら――実は日本より先に有名であった。

Mass Wedding（合同結婚式）が！

「Unification Church（統一教会の英語名）がー」って私が言ったら、友達は「アメリカではMooniesって呼ぶんだよ」って即答したくらい。サン・ミョン・ムーン（Sun Myung Moon、文鮮明）って教祖の名前も覚えてて、だからMooniesって呼ばれてると。正直ユニフィケーション・チャーチって言いづらかったからムーニーズ呼びは助かった。しかしオムツが脳裏に浮かぶ。←風評被害。

Mooniesこと統一教会は1982年にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンって有名なスタジアムホールで合同結婚式をやって、メディアでも散々騒がれたらしい。その後もヤンキー・スタジアムとか、でかいところでやるたびに話題になったそうな。普通のクリスチャンばかりのアメリカではアジアから来た謎のカルト信者たちが大ホールで一斉に結婚式挙げてる図は衝撃だったようで、「なんだあれ…」って感じだったとか。

　
アメリカでは教祖の文鮮明が1970年代にアメリカ移住してニクソンとか政治家に近づいてた件とか、その後に脱税で逮捕収監されてる件とかで、政治とのつながりや多岐にわたるビジネスしてた話も普通に知られてたって。逆にそっちは日本ではあまり語られてない。

ワシントン・タイムズって新聞社を持ってる件も真っ先に言われた。ワシントン・ポストとニューヨーク・タイムズはちゃんとした新聞だけど、ワシントン・タイムズは彼らの新聞だから気を付けてって。けど保守には好かれてるって。。。ついでにニューヨーク・ポストってのもあるけどそっちはゴシップクズメディアよって。私たまにそこで芸能ゴシップとか見てたけど…。

※今回は下の方の歴史のソースとしてニューヨーク・タイムズは大活躍してます。50年近く前の記事とか拾ってきたよ。ほんとにすごいメディアだよ。

なので、トランプ元大統領をはじめ、主にアメリカの保守政治家が安倍元首相と同じ関連団体へメッセージ動画を出している件とかも受け入れてはないけども、日本よりは拒否反応が少なめ？ではあったと。

とはいうものの、2006年にアメリカに寿司を広めたのはこの統一教会って話を各メディアが取り上げてそこそこ騒がれると当時に、知らずに食べてたアメリカ人はショックだったそう。うちの友達の知り合いはそれ聞いてから寿司嫌いになったって言ってたよ…。なのでカルトで嫌悪してた人もそれなりにいた様子。

　
というようにアメリカでは宗教の教義よりもそういう派生情報のが有名だった。どうしてかというと、まず日本とは教義が違う。アメリカでは当然ながら反日ベースの教えはなくて、お布施強要や霊感商法もやってない。キリスト教のお布施は聖書ベースで大体が月に収入の1割ってなっててアメリカの統一教会もその程度なんだそうな。

それで合同結婚式にはドン引きしたけど、いろいろなビジネスにも手を出してる、アメリカに大勢あるイカレテル宗教団体のひとつくらいって感じだったのが、今回の件で日本との差を報道で知った人も多かったみたい。

ただし日本でも名称が変わってあまり報道されなくなって、今回の件で初めて知った若い人も大勢いるようですが、アメリカで騒がれたのはそれより先の1980年代なので、今は知らない人もいるって。私の友達が知ってたのも、私より年上の50代だからってのもある。

　
代わりに文鮮明の息子の一人がケンカ別れして作った『サンクチュアリ教会（Sanctuary Church）』って組織は最近、別の面で有名になったので若い人にも知られてるとか。こっちは教義が銃を持つ権利は聖書に書かれてるって銃大好きなカルトなんだそうで。

教祖がトランプ元大統領を支持してて、今、アメリカの下院の調査委員会でいろいろな人が証言してる2021年1月6日の連邦議会襲撃事件にも参加してたそう。去年、東京でトランプ元大統領の支持者デモがあって何故か宗教団体が参加してるってネットメディアでは言われてたけど、その辺はここにつながるらしい。

　
ちなみにヨーロッパではあまり活動していないみたいだけど、やはりキリスト教国が多いので、カルトな合同結婚式はそれなりのインパクトがあってその部分で知られてたらしい。日本の騒ぎより後だけど1997年にイギリスのオアシスが『Stand by Me』ってアルバムのジャケットに合同結婚式の画像を使ったとかが話題になりました。日本では日本の販売元のソニーに弁護士団体からクレームが出て差し替えになってる。

　

政治とのつながり

日本だと元総理が関わりを持っていたか否かで今は報道が二分されていますが、アメリカではそもそもの統一教会の設立と拡大の歴史からも、冷戦と反共の面からもつながりがあるのは周知です。

まず統一教会の設立とアメリカ行きはKCIAの政治目的をカバーするためと言われてる。大昔のニューヨーク・タイムズ引っ張ってきたので興味ある人は翻訳して読んでみてよ。

　
要するに韓国のロビー活動として送り込んだ。それでニクソンや政治家に近づいて、そのことはアメリカ側も分かって反共産勢力として協力してた。それゆえに冷戦が終わってもいまだにいろんな政治家がスピーチしてたわけで。

統一教会とCIAと政治家のつながり――特に反共産主義活動は日本外では普通に言われてる。

冷戦時代は日本も西側であり反共協力していたので、当然統一教会が日本に入って来たのも、この辺の思惑もあるはずで、日本だけ政治的な部分を削ると整合性が取れなくなる。そこは下に書いた自民党とおじいちゃんの代からの歴史の件でも同様なんだけども。

　
今回の事件のニュースでもアメリカでは「日本では容疑者の挙げた宗教名が報道されない」って報道もあったようで、私も「日本は政教分離が原則だから、つながりは隠したがるんでは」って言ったわけ。アメリカは宣誓の際に聖書（自分の宗教の教典）に手を置くし、今は中絶違憲とかキリスト教原理主義っぽい主張が通ったりしてるからさ。

そしたらアメリカ人は「アメリカも政教分離の原則がある」って。日本よりも宗教国家に見えたからこれには一番驚いたよ。ワハハ。ぐぐったら日本と同じく厳格に政教分離してるはずの国であった。宗教に近づくのは集票とかの目的で日本と同じだけどほんとはよくないとか。どの国にも癒着はあるようで。なので日本は建前があるからメディアが報道できないってのも通らないと。

　
ただ上にも書いたように、アメリカでの統一教会と日本でのそれは、教義も違うし温度差がある。アメリカではもっと過激な福音派の宗教団体にも特に保守の政治家は集票のために関わったりするから、多分、統一教会関連のイベントへメッセージ送った政治家たちはそこまで悪い団体とは知らなかったと思う。

今回の件で容疑者の母親が破産するまで1億も献金してたとかは世界中で報道されたので、今後はアメリカの政治家もそれ以外の国の要人も、距離を置くようになるのではと。その点では未来の被害を防ぐことはできた。

　
一方で日本では前から悪質な宗教団体として知られていたわけで、成り立ちや政治的経緯を知っていたり、もっと単純な「アメリカの政治家もやってるから」とか集票とかの利害が絡んだ付き合いがあったとしても、真似したら問題になるのは当然だった。なので政治とのつながりが公になった今になって隠そうとする流れも分からないではない。

でも政治上のつながりを隠すのが不自然になるのはくり返し言ってる通り。亡くなった人を悪く言うべきではないとか、そういう次元の話でもなくて。

勿論、「冷戦当初からつながってたから今も仲良くしてるぞ、悪いか」って開き直られても困るので、政治家には政教分離はしてもらわないとなりません。特に日本では悪徳霊感商法でたくさんの人が被害に遭っていた事実があるわけで、そこに祝電送ったりしたら広告塔になってしまうとかは弁護士先生に抗議されるまでもなくわかることですし。

　

おじいちゃんの代からCIA

今回の犯行の動機のひとつに「安倍元総理の祖父の岸信介が統一教会を日本に持ち込んだ」というのがありました。そのために祖父の名前を出すのも容疑者寄りとか言われたりで批判されたりもするようですが、これも日本の自民党の成り立ちと政治との関係を見ると悪く言うとかの次元の話ではないです。

まず岸信介がA級戦犯被疑者として巣鴨プリズンに収監されたこと、（CIAとの取引で）不起訴になり釈放され、政治家として活躍したことは歴史としては事実です。（）で括ったCIAとのつながりは一昔前は公然の秘密とかある種の都市伝説みたいに言われてましたが、アメリカの情報公開法によって当時の文書がCIAのサイトに公開されて、彼のプロフィールや情報のやり取りがあったことなどのつながりが公にされています。

CIAの資料だよ。一部抜粋。コピペできないから手打ちしたよ。ミスってるかもしれない。訳は機械翻訳。

オチがついてるのは原文ママなんですが。CIAのスパイ日報か何かかこれ。暗躍してること日本人は気づいてないよってエピソードではありますが、日本の女の子を馬鹿にするなー。

ちゃんとcia.govのドメインから引っ張ってきましたが、こんなの証拠になるかと言われそうなネタです。けどまあこれ以外でもアメリカ側の資料や歴史本からも、1950年から1960年代にかけてCIAが日本が左化しないように自民党を支持すると共に資金提供したことや、その流れで親米派の岸信介を首相にしようと圧力をかけてきたことなどは報じられています。

　
ただし日本の自民党はこれを否定してるそうで。笑。党の歴史でもホームページでももちろん触れてない。

　
近視眼的にみると「当の自民党が否定してるなら嘘だ」「陰謀説だ」になるかもですが、まあ上にも書いたように、韓国KCIAが作った統一教会がアメリカCIAと協力してアジアの反共産活動もしていたとか日本とも協力していた全体的な流れを見たり、A級戦犯被疑者だった岸信介が戦後に首相になったり、実際に今も日米の保守政治家が統一教会関連に祝電送ったりの活動している事実を見たら、日本だけCIAを拒否してたってのも不自然なわけで。

じゃあさ、CIAと自民党やおじいちゃんとの関係は100歩譲って事実としても、統一教会と岸信介は関係ないってまだ擁護もあるかもしれないけども。ここも実際、文鮮明とおじいちゃんは反共産主義で一致していて、文鮮明が作った『国際勝共連合』って団体におじいちゃんも勿論賛同していたり、会談の写真や映像が残っていたり、統一教会の拠点を岸信介が融通して自宅の隣に教会本部があったとかの記録は残っています。さらにはCIAには命を助けてもらった恩があるわけで、その流れで統一教会が日本に来る協力をしたところは確かでしょう。

　
その後の流れは分かりませんので「おじいちゃんの代からCIA」かどうかは知らないけども。

というのも、自民党が否定してる自民党への援助、笑、も1970年代までには終わってるとCIA自体が認めていたり、歴史からの流れで今も慣例的に統一教会とアメリカの保守政治家がつながっていて、更に日本がアメリカとの協調でつながったとするなら今はCIAは関係ないとも言えます。なので今のところは個人的な事実認定は「おじいちゃんの代はCIA」程度までではないかと思います。

　

報道やメディアクリップなど

・プレジデントオンライン
｢安倍氏は三代にわたって付き合いがあった｣マスコミが書かない山上容疑者･統一教会･自民党をつなぐ点と線
https://president.jp/articles/-/59539

・NEWSポストセブン
安倍晋三、晋太郎、岸信介「岸・安倍家3代と旧統一教会」60年の知られざる関係
https://www.news-postseven.com/archives/20220715_1773809.html

プレジデントオンラインとNEWSポストセブンは安倍元総理の三代続いた統一教会との歴史を書いてます。日本の部分だけ見るとどうしても批判文書と受け取る人もいるかもですが、上にも挙げたような統一教会とアメリカの歴史の流れでみると単純にそういう話ではないと分かるかと。

　
・全国霊感商法対策弁護士連絡会
https://www.stopreikan.com/index.htm

全国霊感商法対策弁護士連絡会は、旧:統一協会、現:家庭連合による『霊感商法被害』の根絶と『被害者の救済』を目的として結成した会です。――とのことで、今回の事件のきっかけになった元総理の教団関連団体へのビデオレターにも去年のうちから抗議してました。

　
・How Well Do You Know Your Moon
https://howwelldoyouknowyourmoon.tumblr.com/

英語の反統一教会サイト。日本の記事も昔のニュースからここ数日のニュースまで、教会広報の会見を英語で書き起こしたりとか、リアルタイムで翻訳されてるので、多分日本人か日本語読める方が運営してるんだと思いますが、日本での過去の霊感商法の被害については英語圏ではあまり知られてないので、そういう意味では役に立つ。個人的にも記事の英語版とかを伝える際には便利。