イギリスドラマ10の謎【後編】

前編では100%独断でアメリカドラマ・日本と比較した、イギリスドラマを見て思った謎を5つ挙げました。さて続いて後編です。

6. 単位がバラバラ…。

単位ってなんの?って聞かれそうですが、重さのキログラムとか距離のキロメートルとか…。

ヤード・ポンド法。インチとフィートが長さ。ヤードとマイルが距離。ポンドオンスが重さ。液体量はパイント、オンス、ガロン。でも同じ単位名でもアメリカとイギリスは量が違うって!紛らわしい。

対して国際単位系(旧メートル法)。長さがメートル。重さがグラム。液体量はリットル。※言うまでもなく日本が使ってるのはこっち。

アメリカは『ヤード・ポンド法』で統一されてるので、ポンド・インチ・マイルを使います。アメドラもそうです。日本人にはピンとこないけど、私は好きな俳優の身長(6 foot 2 inches=約188cm)体重(180 pounds=約82kg)を基準に、それより小さいとか大きいとかで測ってる。小さいやつは足のサイズ(12 inches=約30cm)で。←めちゃテキトーな測り方…。まあ画面越しだしさ。

またまた物騒な台詞も混じってますが…。

イギリスドラマ10の謎

一方でイギリスは、重さはキロなのに、距離はマイル、液体はオンスみたい。バブでビール飲むシーンがイギリスドラマだと出てくるので、パイントで頼んでる。そしてクライムドラマだと今どことか距離はマイルを使ってるからさ、なんでバラバラなのよ?と見るたび気になる。

まあ通貨のポンド(pound)と紛らわしいから、重さのとこだけポンド(pound)じゃなくてキロに変更したのかなと思ったり。でも古い時代設定だと重さもアメドラみたいにポンド使ってたりして。

厳密には今は国際基準でグラム・メートル推奨になってて日本式が正しいらしい。けどアメリカは完全無視で、イギリスは中途半端になってるらしい。実際の場でも重さは混在してるみたいね。それはそれで両方覚えなくちゃならなくて面倒な気がする。

 

7. アジア人の定義が違う

イギリスドラマで「アジアン(Asian)」と言われて出てくる人たちは、私(日本人)が想像するアジアじゃなかった。

どういうことかというと日本人が想像するアジア人といったら自分たちをベースにした――日本中国韓国の東アジアのことだと思います。アメドラで「アジアン」と呼ぶ時も大体この辺が出てくる。禅とかヨガとか武道とか寿司とかラーメンとか好きだしさ。やたら拝んでるし。

けどイギリスドラマで「アジアン」というと、まずインドやパキスタン・バングラデシュとかの南アジアが出てくる。日本人から見るとその辺は距離も文化的にも遠くの外国だから予想外で、でも一瞬考えて「ああ、そっちもアジアか」って納得するという。

宗教も、日本人の感覚だと「アジア=仏教?」って思うけど、アメドラでも日本と同じ感じだけど、イギリスドラマだと「アジア=イスラム教」になってるみたい。

Channel 4『No Offence S01E03』
イギリスドラマ10の謎極右に人種差別で妻を殺された敬虔なイスラム教徒と思いきや、頭おかしくなったジハーディストのふりして妻を殺したと自白したけれど実は保険金殺人でした…。みたいな二転三転してる回で出てきた「アジアンファミリー」の父息子。

Channel 4『No Offence S03E06』
イギリスドラマ10の謎こちらは白人母とアジア系父の間に生まれたけどイギリスで育った(のでスパイシーフードは好きじゃない)とか言ってる。「my」が「me」はキャラ設定。そもそもこの会話は、違法な女子割礼(FGM)の潜入囮捜査前に、こういう環境だから、私はアジア文化を知らないんで教えてくれって頼んでるシーン。……私もそんなアジア文化は知らないんだけども。アジアって広い。

 
これは地理的に、アメリカから見たら太平洋挟んで日本・韓国・中国が隣にあるからアジアと言ったら東アジアに馴染みがあるけども、イギリスからはヨーロッパの向こうの方が近くて、更に歴史的にも(現在のパキスタンやバングラデシュを含む)南アジアのインドが植民地だったから移民も多くて馴染みがあるって事情かと思います。ヨーロッパからは日本は極東だからね。

そして宗教も、日本を含む東アジア側から見ると仏教メインに見えるけど、アジア全域を見ると仏教国は一部だし、西アジア(中東)や南アジア、中央アジア、東南アジアなどイスラム教徒の方が多い。

また日本から見てイギリスドラマの「アジアン」に違和感を覚えるのは逆から見ても同じようで、東アジアもアジアと認識してはいるけれど、中国人はイギリスドラマでもそのまま「チャイニーズ」として出てきてることが多い。これも歴史的経緯から、香港が長らくイギリス領だったこととか、中国系の移民はたくさんいるとかの事情もある。

 
少し前までは、インド・パキスタン辺りまでを「アジアン」と呼んで、以東の東南・東アジアの人を「オリエンタル(Oriental)」って言い方もあった(過去形)。ヨーロッパ人から見たら、まだ近い方が「アジア」で、それ以外は「オリエンタル」だったようです。

「オリエンタル」はラテン語で東を意味するOrienceから来ていて、反対語はOccidenで西。ヨーロッパから見て東側ってそのままの意味で、更に異なる文化や風習にエキゾチックさや神秘性を持ってそう呼んでたと。「東洋」って訳されるけどオリエンタル・ビューティーとか日本語でも言ってた。

けどその言葉の由来、ヨーロッパ中心に見て東(要するに自分たちを基準に下に見てる)ってこととか、神秘性のステレオタイプなイメージが差別につながる(東アジア人の細い目とかをオリエンタルって表現してたから)とかで、アジア系の人たちの訴えにより、アメリカでは今は人種差別語とされてるようです。特に現地で暮らすアジア系の人にとっては前時代的で排他的・侮蔑的に感じる言葉だそうな。オバマ元大統領の時に公文書で使わないよう決まったとか。

2016年のオバマ(元)大統領の署名によって、アメリカの公文書では「オリエンタル」が「アジア系アメリカ人」に変更された。英語。
U.S. government to stop using these words to refer to minorities
https://edition.cnn.com/2016/05/22/politics/obama-federal-law-minorities-references/index.html

The federal government will no longer use the terms “Negro” and “Oriental” after President Barack Obama signed a bill into law.
The official terms will be African-American and Asian-American. Welcome to 2016.

 
アメリカセレブのドロシー・ワンが「オリエンタル」と呼ばれることを差別的だと言っているイギリスBBCの記事。アメリカでは「オリエンタル」を誰か人に使うのは侮辱と受け取られる。英語。
Reality star Dorothy Wang: Don’t call me oriental
http://www.bbc.co.uk/newsbeat/article/40714775/reality-star-dorothy-wang-dont-call-me-oriental

In America, to use the word oriental to describe someone is considered offensive.

その波がイギリスにも向かって、こちらでもやはり使わない方向になってきてるようです。アメリカほど厳密じゃないみたいだけど。とはいっても代替語はないようで、ドラマではイギリスから見た「アジアン」と区別するため、上でも書いたように中国人は「チャイニーズ」って逃げてる感じ。ニュースではアメリカと同じように南アジアも東アジアもみんな「アジア」だけど。そして西アジアは「中東(Middle East)」ってなってる。

これらの流れで見ると、日本や韓国が「中国その他」って括りにされるのも納得できる気がしてくる…。よく海外で日本人が「中国人」って呼ばれるってのも、人数が多いのも勿論だけど、彼らがイメージする「アジア人」とは少し違うし「オリエンタル」は使えないからと。

BBC『The Game S01E06』
イギリスドラマ10の謎アメドラでも差別語と認識されてるのをあえて使うことはあるけども、これも目の前のおっさんが惚れてた中国人バレリーナを「東洋の売春婦」って煽ってるシーンなので、あえてこの単語使ってるのかもしれないし、舞台設定が冷戦期のドラマなので当時の言葉遣いなだけかもしれないし、2014年のイギリスドラマだってのもあるし、OrientalはアウトだけどOrientだからセーフってことかもしれない。笑。

 
日本でもオリエンタルは使われなくなってきたけども、これは単に古いからってだけでネガティブなイメージはないと思います。むしろ褒め言葉として受け取られる。それは日本で生まれ育った人は、自国が欧米とは違う文化圏であるって違いを受け入れて、誇りに思っているからかも。でも現地で生まれ育ってる人には排他的に感じると。なので特に海外ではこの単語は気をつけた方がいいと。

全然ネガティブじゃないからこそ日本には「オリエント」って時計屋があったり、「オリエンタルホテル」とか「オリエンタルランド」とか何かとオリエンタルって社名とかあるよって上の話を教えてくれたアメリカ人に聞いたら、人に使わなければOKらしい。上のドロシー・ワンの記事にも書かれてるけど。なので「オリエント急行」とかもセーフのようです。これはヨーロッパだけども。まあ英語ネイティブじゃないとニュアンスも分かりづらいから、これら固有名詞以外は避けた方が無難かもね。

 

8. 多様性の表現方法がアメリカドラマとはまた違う

ポリコレとか多様性がフィクションにも求められてる昨今ですが、そこから表現するものもアメドラとは違うなーと思ったりしました。

アメリカの場合は、LGBTとか人種差別が今の重点ですが、イギリスドラマは障碍者とか?アメドラにも勿論障碍ある人も出てくるけど、イギリスドラマの方がメインに配置したり進んでる気が。移民や宗教問題も、アメドラだとマイノリティに配慮で遠慮されてる部分も出てきたり。まあ日本と比べたら両者共に進んでます。

一方でどちらも強い女が求められてるのは似てるところだと思ったり。アメドラの方が極端だけど。

人種に配慮も、実際の人口分布も違うからか、ちょっと違う。最近のアメドラではよく出てくるメキシコ・スパニッシュ系はイギリスドラマではポーランド系とか東欧辺り?そして上でアジアの定義が違うって書いたけど、イギリスドラマはイギリス人の思う「アジア人」も割と出てる。

そういう点ではアメドラよりアジア系もレギュラーでもたくさん出てはいるんだけど、日本人からするとアジアはアジアでもやっぱり遠いので、少し違和感が残ると。

先日、1月末のブレグジット(Brexit)が決定しましたが、当たり前だけどそれの話題が出てくるのもイギリスドラマならでは。アメドラだと最近のはトランプ大統領いじりばかりなのでちょっと新鮮。

 

9. 何かと中国レストランが出てくる

アメドラの一話完結で事件を解決する系のクライムものだと、地域にもよるけれど、マンネリ防止でチャイナタウン舞台の話をシリーズで1回は入れてきます。アメリカ人からしたら手軽に異国情緒を味わえるのかな。映画『チャイナタウン』みたいな無法地帯的なイメージがあって、異文化的なドキドキもあるのかもしれない。

一方でイギリスにもロンドンとかにチャイナタウンはあるようですが、舞台としては登場してこない。そこまで大きくないとかメジャーでもないとかなのかも。代わりに中華レストランの登場頻度が高い。最初に挙げたテムズ並みにどのドラマでもチャイニーズレストランか、チャイニーズ料理店が出てくる。日本によくあるラーメン屋みたいなのは出てこないけど、お高そうなのからテイクアウトやチープなお店までいろいろ。上でも書いたように歴史的にも中国系の人が多いからこそでしょうか。

イギリスドラマ10の謎緑の看板、一番下の「士+多」みたいな字は中国語?と調べたら、一文字じゃなくて「士多」で香港・マカオで使われる「store」の当て字らしい。発音分からないけど「ストアー」→「した~」→「士多」みたいな。「沙田」は香港の地名、「蔬菜」は中国語で「野菜」で、「沙田蔬菜士多」は「沙田野菜店」って感じ?香港系の人の店とも分かると。←イギリスドラマで中国語を学んでみた…。

※百度をgoogle検索。
https://baike.baidu.com/item/%E5%A3%AB%E5%A4%9A
香港・マカオで使われる。“士多”は英語の「store」の同音異義語。ほとんどが小さな食料品店です。

 
アメリカのチャイニーズデリバリーは有名で、映画やドラマのあの四角い箱の中華に憧れる日本人は多いと思いますが、イギリスドラマではあの箱は残念ながら見かけないね。

メニューは画面で見る限り、春巻き、焼きそば、チャーハンやラーメンなんかの定番から、肉野菜炒めみたいなのや豆腐がどうのって言ってたからおそらく麻婆豆腐とか、イギリス生まれのクリスピーダック(北京ダックがローカル進化遂げたやつ)とか、バラエティー豊富で美味しそう。

 

10. 鼻をかむのにハンカチ?!

アメドラだとティッシュを抱えて泣いてたり、何かあるとティッシュやトイレットペーパー使いまくってるのは日本と同じ感覚ですが、イギリスドラマだとほとんどティッシュを使ってない。

代わりに何かを拭くのも鼻をかむのも!おえって吐き出すのも!ハンカチ取り出して使ってる…。しかも家の中でも!わざわざハンカチ!

コメディだとしわくちゃのハンカチをポケットから取り出して、くしゃみした後に鼻かんだり、おえってなんか吐き出したりしてた。ハンカチ持ってるだけ育ちがいいとかお上品に見えなくもないけども、そのハンカチをまたポケットに入れるのは…。再利用するのは…。おえっ。

日本でも昔はハンカチを使い回していたそうだし、おじいちゃん世代はティッシュも一度で捨てるのはもったいないって乾かして再利用してたとか言うけども、環境にはいいのかもしれないけどなんとなく抵抗が…。

シリアスもコメディも含め、いくつかのドラマで見たけどみんなハンカチだったので、もしやイギリスにはティッシュがないの?と思ったくらい。それで素直に日本語で「イギリス ティッシュ」ってぐぐったら真っ先に「高い」って予測変換出てきたので、高いのね…。

私は鼻をかんだハンカチを洗濯するくらいなら高くてもティッシュ買うわ!って言いたいけど、物価も高いし住んでる人にはそうも行かないところなんでしょうか。まあ勿論フツーにティッシュ派もいるでしょうが。もしイギリスへ行く時は、山ほどティッシュを持って行くからね!←誰に呼びかけてんだよ?

ちなみに実際の話を脱線すると、日本では若い人はハンカチ持たなくなってますが、アメリカ人の友達も持ってないって。「ハンカチなんてアメリカでは廃れた」とか言ってました。売ってもいないとか。ほんとかな?

 
……ということで、最後はアメリカの謎になってますが、前後編でざっと10個の謎を挙げてみました。
日本人はアメリカもイギリスも他のヨーロッパも欧米って括っちゃうけど、ドラマだけ見ていても国によって違う部分はいろいろあるなと思いました。他にもまだあるので溜まったら第二弾があるかも。

 

Friday Night Dinner [Series 1-5]
Channel4
[UK import, region 2 PAL format]


2019年一番面白かったドラマ。これはぜひ日本でも公開されて欲しい。
ひたすら下ネタと昭和なギャグとナンセンスのくり返しシットコムだけど…。

Chasing Shadows
ITV Studios
[UK import, region 2 PAL format]

本国でも4話打ち切りになってる超マイナーなドラマ。
何かと幼児退行してるおっさんたちが見所です。おい。※シリアスクライムドラマです。

THE GAME DVD-BOX
KADOKAWA 日本語字幕版


今回使った中では唯一日本語版がある。トム・ヒューズがヒロインより美人です。
私はおっさんの方に目が行ってますが…。
KGBが出てくる冷戦ドラマなので、ロシアンアクセントもたくさん出てきてうれしい。

No Offence: Series 1,2 & 3 Boxset
Channel 4
[UK import, region 2 PAL format]


障碍者を狙う連続殺人に宗教テロに人種差別に極右に闇医師にって、
このドラマ攻めまくってるんだけど、攻め過ぎてて日本では公開されなさそう…。