2019年はたくさんイギリスドラマを見ましたが、せっかくなので総括として、100%独断でイギリスドラマの謎というか、アメリカや日本のドラマにはない点を挙げてみました。これまでも映画やスポットでイギリスドラマを見ることはあったけど、連続して見てると細かいところも気になってくるので。
元からイギリスドラマをよく見ていたりイギリスに詳しい人には、当たり前のことばかりでしょうが、私にはいろいろと新鮮だったのよ。
1. テムズ川が大好き?
いきなり何言ってんだってとこから入りますが、イギリスドラマを見るようになって改めて思ったのが、私(日本人)はイギリスの地理を全然知らないよねってこと。
アメリカはなんだかんだで日本のニュースでも地図を目にする機会が多くて、ワシントン・ニューヨーク・ロサンゼルスとか主要都市くらいはかなりの日本人が分かると思います。場所分からなくても、ボストン・テキサス・シカゴとか地名は知ってるって人も多いと思うし。
更にアメドラを見慣れてる人だと、よく舞台になるとこは、いつも同じような場所でロケされてたりで行ったことなくても見覚えあったりするよね。
一方でイギリスってニュースでもロンドン周辺しか出てこないような…。都市名よりイングランド・ウェールズ・スコットランド・北アイルランドって大雑把な分類ばかり。サッカーとかラグビーとかのスポーツや、住んでた人とかイギリスに興味ある人でないと、地名を聞かれてもろくに挙げられないレベルと思う。
私も勿論、ロンドン以外の地名って何があったっけ?くらいの知識でドラマを見るようになったんだけど、去年見たイギリスドラマの8割くらいにテムズって台詞が出て来てたので(数少ない知ってる固有名詞であることもあって)、聞くたびに気になって、どれだけ大きな川なんだよ?と思ったの。
それで地図を見てみたら、ロンドン近郊を横に流れてる大きな川みたいですが。イギリスドラマはその辺が舞台になってることが多くて、それでよく出てくるってことなんでしょう。テムズ・ゲートウェイ(Thames Gateway)は道路、テムズミード(Thamesmead)は近郊の地名だったらしいけど、どちらもテムズ川沿いで名前もそこから来てる。テムズ川好きすぎじゃない?
逆にわざわざテムズって言わなくてもロンドン舞台で「川」といったら他にないだろって使い方もあるようで。
BBC『The Game S01E03』
直訳すると「彼女は川の南側」って謎だけど、このドラマの意味だと「彼女はMI6(テムズ川の南に本部がある)」ってこと。これは次の台詞で言ってるし文脈で分かるんけど、ドラマ見るのにも最低限の地理の知識は必要になる、みたいな。いずれにしても、何かとテムズ川が基準になってるなーと。
けどマンチェスターが舞台って『No Offence』には違う川が出てきたなあと地図見たら、マンチェスターは上の方にあって、テムズ川はかかってないみたい。とか、すごいざっくりながら、ちょっとずつ場所も覚えてきたよ。スコットランドは更にその上なのねとか。←そのレベルで分からなかったのかよと。
まあ地図見てみれば、オックスフォードとケンブリッジとかサンドイッチとかウスターとかダービーとか知ってるイギリスの地名も結構あるわって思いました。おい。
2. キッチンに洗濯機?
これは『Friday Night Dinner』の感想でも書いたけど、水回りで統一してるのは分かるけど不思議だった。単にキッチンにあるってだけでなくて、オーブンとか引き出しと一緒に埋め込まれて一体化してるのが、洗濯機って調理器具だったのかーとか(絶対違う)、キッチンに対する固定観念を吹き飛ばしてくれたと言うか。
おかげでイギリスのドラマや映画でキッチンが映るたびに洗濯機を探しちゃう病にかかってしまった。笑。広い家だとちゃんと地下とかに洗濯機が置いてあるので、キッチンにあるのはあくまで一般家庭の話みたいですが。イギリス料理では頻繁にオーブンとか使ったりするようなので匂いとか移らないのかな?
ITV Studios『Chasing Shadows S01E01』
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試しに英語で検索すると「何故キッチンに?」って同様の質問はいくつもヒットしたので、イギリス以外の国の人はみんな不思議に思うらしい。笑。やっぱりドラマを見て気になる人も多い様子。
Channel 4『No Offence S01E04』
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答えとしては、ネットの情報を総合すると、イギリスの家はアメリカとかと比べると狭いから独立洗濯スペースがない。更に火災や感電の危険があるから、法律で洗濯機・乾燥機とかの電化器具を浴室に設置することは禁止になってる。それらの理由から、キッチンにはめ込むタイプの洗濯機が普及した、ということみたい。たぶん。
でも日本はイギリスの家より更に狭いんですがー。なのにちゃんと洗濯機置き場が独立であるぞ。
そもそも浴室に洗濯機(電化製品)なんて、法律で禁止してない日本でもありえないって思ったけど、よくよく考えるとユニット式のトイレにウォシュレット設置してる人もいた…。まあ電圧電流が全然違うから、欧米のミステリーであるような、プールやお風呂にドライヤーを投げ込んで感電!なんてことも日本ではあまり聞かないけども。※危険なのでやってはいけません。
イギリスの洗濯機をぐぐると白くてドラム式で小型のこればかりみたいなので、ほんとにお金持ちから庶民までみんな同じタイプを使ってるのかな。基本キッチンに埋め込む前提だと、形とか統一されてた方が買い替えも便利なのかもね。
ちなみにアメリカ人に聞いたら、探せばアメリカにもイギリス式の「キッチンに洗濯機」な家はあるかもしれないけど、普通の家は洗濯室があるし(!)、狭いアパートはそもそもキッチンもなかったりするので、コインランドリーへ行く方が一般的だろうって。国土の差…。
3. CCTVって防犯カメラが街中に網羅されてる
現代クライムドラマだと警察がCCTVを確認して不審者を割り出すシーンがよく出てきます。ドラマで見る限り街中には配置されまくっているようで、イギリスは日本よりカメラだらけなのか――と思ったら、CCTVは『Closed-circuit television』の略で、要するに監視カメラ・防犯カメラの意味だった。Surveillance footage(監視映像)とかも言ってたけど。
実際のニュースでもCCTVって言ってたからイギリスではこの名前で一般に通ってるみたいですが、別にイギリスの特定のカメラシステムだけを指すんじゃなくて、同じタイプのは日本のもCCTVです。日本じゃそう呼ばないだけ。
ちなみにアメドラだと、Security cameraとかSurveillance camera(要するに防犯カメラ・監視カメラ)とか言ってて日本と同じく特定の呼び方はしてないっぽい。
日本の警察が管理してるカメラには、主要繁華街の『街頭防犯カメラ』とか『防犯カメラ車(移動防犯カメラシステム)』があったりします。実際の事件のニュースでよく聞く『自動車ナンバー自動読取装置(Nシステム)』はナンバーを読み取る装置なのでちょっと違う。※このNシステムと同じ装置も先進国では大体あるようですが、呼び方がそれぞれ違う。
民間のものは、チェーンの店舗や施設には大体防犯カメラがあるし、個人宅でも設置するところもある。そして車のドライブレコーダーも普及してる。実際の事件事故の際は、それらも任意で警察に提出されて捜査に使われています。
――というのは日本人は大体知ってると思いますが、この辺の流れは大体イギリスも同じみたい。イギリスのCCTVの運用とかについても調べたら、勿論警察が管理するものもあるようですが、民間の企業や個人のものも多いそうで、設置条件もそう日本と変わりなかった。
Channel 4『No Offence S03E02』
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呼び方以外の違いとしては、日本のドラマで防犯カメラの映像が出てくるシーンは大体、白黒で画質が悪いですが、イギリスドラマでいくつか見たのはやたら画像が鮮明だった。ある程度フィクションは含まれてそうだけど、カラーでばっちり見えてますよって方が実際にも犯罪の抑止効果はありそうな。
そしてアメドラでよくある、拡大したら小さく映ってたナンバーや影になってる人の顔まで見えたり、浮かび上がって来たりと、カメラの映像や解析ツールがやたら高性能な万能設定もイギリスドラマでも出てきてた。笑。
まあ拡大すると詳細に映るやつは技術的には画素を上げればいいので可能だけど、データの容量が重くなるので24時間撮り続ける防犯カメラでは実用的ではないとか、鮮明すぎるとプライバシーの問題が発生するとかで、少なくとも日本では程々の画質にしているみたいです。最初から映ってないものはそもそもいくら画素を上げても映りません。あれはドラマの演出ね。
4. bloody連呼しすぎ
これぞイギリスドラマって感じですが。
『City On A Hill』のとことかでも書いてますが、アメドラの場合は主に悪役で「すべての台詞にf*ckをつける勢い」なキャラが出てきますが、これはレイティングが適用されます。なので三大ネットワークのキャラにはまずいません。ケーブルドラマか映画。まあ下手に使うと引かれる単語だってのは日本でも知られてると思いますが、そういう単語をあえて連呼させてるのはあくまで破天荒なキャラ付けのためで、ある種のアメドラの形式美。
イギリスのドラマでも基準は同じようで、今まで見た限りではBBCのドラマではf*ckは出てこないね。他では見かけたけど、基本は頻度もアメドラと比べると少ない。犯罪者とかダメ人間が出てくるクライムドラマであっても、イギリスドラマの方が下限が低いというか、全般的にまだお上品です。
イギリスドラマでf*ckをあえて使うのは、とんでもなく強調したい時だけで、フツーはその下のランクの(?)、bloodyを使ってるようです。f*ckがf*ckingになるように、bloodyもbleedingとか変化してることもある。派生としてbloody hellもある。これはアメドラだとthe hellに当たるやつかな。
そしてf*ckの代わりにこのbloody系を連呼してるキャラがたまにいる。
更にbloodyも品のない言葉ではあるようですが、ドラマだと伏字にならずに使えて割と万能ワードのようで、連呼はせずども若者からお年寄りまで揃って使ってる。けどそこが逆に違和感。だって日本の感覚だと、スラングや強調ワードはお年寄りはあまり使わない、どちらかというと若者言葉であるので…。意味は分かるんだけどさ。よく見かける割に、その辺の感覚がいまいち掴めない…。
5. 言い回しがお上品
上でもアメドラよりもお上品て書いたけど、表現の仕方もそう。ジャンルや設定にもよるけど、割と家族とか仲間と話すのも「May I~?」とか「Could/Would/Can you~?」とか使ってたり丁寧です。
ニュアンスとしては、イギリス「Shall we?」アメリカ「Lets go.」みたいな。フォーマルとカジュアルの差というか。※実際はどちらも使ってるのでイメージです。「Why don’t we?」もよくある。
なのでイギリスドラマ見た後にアメドラ見るとぞんざいに見える。笑。みんなぶっきらぼうにしゃべってる感じ。というかアメドラって身内や仲間に何か頼む時、基本命令形じゃない?せいぜいpleaseつけるくらい。そして「Can I~?」はよく見るけど「Can you~?」はあまりない。自己主張が多いのか?シチュエーションにもよるけど、お願いしてるのなんて店員さんとか慇懃無礼なシーンとか。「あえて」な時だけ。
この違い。
Please take me there.
Would you take me there?
台詞はドラマなので脚本も勿論あるけど、文化の差というか、階級社会と平等意識の強い国の差、対人距離感の違いもあるのかな。アメリカでイギリスみたいに話してるとよそよそしいし、逆は失礼な人に思われそうと思った。
そして使う単語や言い回しも(聞き慣れてないのもあって)アメドラよりもお上品な響きだったりかわいい。好きの意味の「fancy」とかさ。若いハンサムもおっさんも「lovely」とかさ。
この「lovely」はラブリーの意味ではないのは分かってるけど、アメドラだとこの辺は「good」や「cool」になるのと比較すると、響きがもうかわいい。私の好きなアメリカ俳優は死んでも言わなさそう。笑。てか、ごついアメリカの俳優には似合わない気がする。←偏見。
他もやたら「Oh」を使うとか。「You know」を使いすぎると聞いてる方が気になるって話はどこかで見たことあるけど、イギリスドラマを見ていて私は「Oh」が気になりました。どのドラマでも伸ばし気味に「Oh, ***(yesとかdearとかreallyとかいろいろ入る)」みたいに使いまくってる。まあアメリカ人も言ってるけど頻度が違う気が。イギリスドラマだとこのワンテンポがちょっと優雅な感じ?
更に台詞そのものもアメドラの方がストレートに表現するけど、イギリスドラマは控え目だったりするのもある。回りくどいとも言うけど。それと付加疑問文(「, aren’t you?」みたいなやつ)もよく使ってる気がする。
ということで、アクセントだけじゃなくて、主に使う単語のチョイスとか、言い回しとか抑えた表現とか、いろんなものが積み重なってイギリス式な響きになってると思った。
→ここの部分の比較は具体例を出すと長くなるので別にいつか書いてみる。
脱線するけどファッションも、アメドラのカジュアルは年行っててもほんとにカジュアルだけど、イギリスドラマのカジュアルは、ティーン以外だと週末のお父さん的なきっちり感が残ってるような。笑。体格とか髪型のせい?
後編に続く。
Friday Night Dinner [Series 1-5]
Channel4
[UK import, region 2 PAL format]
2019年一番面白かったドラマ。これはぜひ日本でも公開されて欲しい。
ひたすら下ネタと昭和なギャグとナンセンスのくり返しシットコムだけど…。
Chasing Shadows
ITV Studios
[UK import, region 2 PAL format]
本国でも4話打ち切りになってる超マイナーなドラマ。
何かと幼児退行してるおっさんたちが見所です。おい。※シリアスクライムドラマです。
THE GAME DVD-BOX
KADOKAWA 日本語字幕版
今回使った中では唯一日本語版がある。トム・ヒューズがヒロインより美人です。
私はおっさんの方に目が行ってますが…。
KGBが出てくる冷戦ドラマなので、ロシアンアクセントもたくさん出てきてうれしい。
No Offence: Series 1,2 & 3 Boxset
Channel 4
[UK import, region 2 PAL format]
障碍者を狙う連続殺人に宗教テロに人種差別に極右に闇医師にって、
このドラマ攻めまくってるんだけど、攻め過ぎてて日本では公開されなさそう…。