The Game [2014 BBC TV series] ネタバレ感想

 
今回は2014年製作のトム・ヒューズ主演BBC全6話のイギリスドラマ。

時代設定は冷戦下の1972年。前年に恋人Yuliaを失ったトラウマを抱える若く有能なMI5スパイのJoeが、チームと共にKGBの仕組む『Operation Glass(グラス作戦)』の真相を探り、その過程でチーム内にいる二重スパイ『モグラ(Mole)』の正体を探ったり、 Yuliaを殺したOdinという男を追って復讐しようとする話です。

このドラマは角川から日本語字幕版が出てたり、AXNミステリーでも放映されてたらしいですが、私はリージョン2のイギリス版DVDを買いました。理由は価格。日本語版だと1万くらいだったけど、英語版は2千円しなかった。これなら映画1本と同じくらいだし、外れでも許せるかなって。面白かったけど。英語字幕はついてました。

特典として削除シーン4分くらいとインタビュー20分くらいが付いてました。が、削除シーンにトム・ヒューズは出てこないし、インタビューにもちょっとしか出てこないので、彼のファンの人安心して。削除シーンの内容はネタバレなので最後に追加しときます。

そして前回、『Tinker Tailor Soldier Spy(裏切りのサーカス)』が好きな人にお勧めしますと書いたけどちょっと訂正。同じような『スパイもの』が好きな人にはお勧めだけど、『Tinker Tailor Soldier Spy』のコアなファンな人からしたら二番煎じみたいで気に入らないかも。。。

冷戦1970年代のスパイものって言ったら敵はKGBってほぼ決まってるけど、それを抜きにしてもテレビドラマ版の方は同じBBC製作で意識してるのは間違いないし、私が見たのは映画版だけども似たシーンとか出てくるし。そもそも今回のDVDの裏パケに『Tinker Tailor~的なスパイドラマ』ってテレグラフの引用載せてるし。笑。

一方でミニとはいえシリーズドラマなので、IRAとか出て来ちゃうし方向性が違う点もある。大きな違いは『Tinker Tailor Soldier Spy』はMI6(イギリス秘密情報部)でしたが今回はMI5(イギリス保安局)です。ちなみに『007のジェームズ・ボンド』もMI6です。

どちらもやってることはスパイだけど何が違うって、大雑把にはMI6が国外活動メインでアメリカのCIAみたいなもんで、MI5は国内メインでFBIのようなもんだって。日本だと(たぶん)全部警察組織だけど、イギリスは諜報機関と警察機関は管轄が違って前者には逮捕権がないそうで、今回のドラマもJimって公安警察特別部の一人がチームに加わってます。

アメドラのCIAやNSAもだけど、映画やドラマだとスパイって時には名乗っちゃって堂々と活動してますが、昔は組織の存在すら秘密だったので、事務員ですら家族にも勤めていることすら言えなかったらしい。

「毎日仕事って出かけてくけど、社名も隠すし、具体的な仕事の内容も言わないし、うちの子は本当に働いてるんだろうか…。実は公園で時間潰してるんじゃないだろうか…」って心配してた親もいたかもしれない。まあ表向きはただの公務員だとか、ダミーの社名とかあるんだろうね。※今はWebサイト持って求人してたりオープンです…。

イギリスのスパイもの、しかも冷戦やKGBが出てくる話って日本人には完全に大昔のフィクションなイメージですが、イギリスでは数年前もロシアのスパイが街中で暗殺されたなんて事件が起きてます。まあ日本にも極秘のスパイ組織はあるかもしれないけども、イギリスの方が日本よりスパイ映画の世界も日常に近いんじゃないかなと。そういう条件だとこのドラマも日本人が見るより深刻に意識されてるかも、なんて思ったりして。アメリカと銃の話でも似たことを書いたけど。←と思ったけども実際の英語圏の感想は、トムヒューズカッコイイとか日本と大して変わってなかった…。

さてそんな前提の物語ですが、スパイものなので作戦名とかダディなんてダサいコードネームとか出てくるのでその辺でつまづく人にも向かない。『Mole(=モグラ。二重スパイ)』とか『The Cousins(=いとこ。CIA)』とか、『Dead letter drop(デッド・ドロップ。使われてない郵便受けで暗号のやり取りするスパイの通信手段)』とか、『Intel(=intelligence。機密情報)』とか、スパイ用語というか、隠語や略語もたくさん出てくるので、そういうのを知らないと直訳だけでは話が分かりづらい面もある。

一方で携帯カメラや盗聴装置の数々や、当時のスパイ活動の手法とかが色々詳しく出てくるので、そういう小道具が好きな人は楽しめるかもしれない。

   

THE GAME DVD-BOX

もう日本公開から数年経ってるのでってことで、ここからネタバレあり。

※日本語の登場人物名等が分からない人がいるので、以下の固有名詞は全部英語に統一します。

大雑把な人物紹介(半分ネタバレ)

・主人公Joe Lambe。MI5の若く有能スパイ…設定らしいけど、全くそう見せないところがさすが有能スパイ。おい。ソビエト側とつながっている彼女YuliaOdinってコードネームのKGBの男に殺された過去を引きずってます。Odinは今回の事件にも関わってるらしい、ということで、物語は『Operation Glass』の真相を追うスパイものであると同時に、彼の復讐も兼ねてます。

・コードネームDaddy。MI5のボス。なんだよこの名前ってのは1話からJimに突っ込まれてます。誰も本名知らないらしい。中国(香港)の若くて美人なバレリーナに入れあげて貢いでたりプライベートは世俗的なおっさん。香港返還は1997年なのでこのドラマの時代はまだイギリス領でしたが、中国は共産圏てことで、イギリススパイの彼らにとってはソビエトと同じくらいの敵らしい。

※欧米(旧)西側国の共産主義に対する警戒心は日本人が考えるより深いっぽい。宗教対立並みに忌諱されてる。日本は宗教同様に政治思想も曖昧で雑食なのでいまいち理解できないけども。

Jim。公安警察特別部(Special Branch)からチームに配属されて、主にJoeと一緒に『Operation Glass』の謎を追ってる。チームのミーティングも参加してるけど、部外者なのでMI5の面々を冷静に見ていたり。主人公Joeも後に二重スパイ(Mole)がいるって時に、彼に打ち明けてるし、容疑者の中から除外してる。

Bobby。諜報部トップ。心配してるふりしてゴシップ広めたり、手柄横取りしようとしたりでDaddyの後釜を狙ってる野心家。全世界がイメージするスノッブなイギリスのおっさんそのものなキャラ。お洒落にスーツとか着こなしてシェイクスピア引用したり高級フレンチでフランス語喋っちゃったり。が、家に帰るとちょっと暴力的な怖いママに頭が上がらないマザコン。結婚しないのでママにヒステリー起こされまくってたり。Wendyをお屋敷の屋根裏に居候させて食事とか奢ってたり。一回り以上年下の彼女とのくっつきそうでもどかしい関係は、ママのせいで女性に奥手なのかと思ったら、同性愛設定だったらしい。カモフラ相手に地味子を選んだわけね。

・Montag夫婦。妻Sarahは有能と言われてて弁は立つけど、具体的に何が有能なのかいまいち分からない。おい。いつもポーズは決めてる。そして彼女はDaddyに気に入られてるのでBobbyに敵視されてる。スパイ活動での冷徹な面と、夫や仲間に対する情みたいなものは見せてる。一方旦那Alanは、盗聴器仕掛けたり聞える音から情報を分析したり、場所割り出したりと有能だけど気弱なオタク系。世間話が苦手で妻に書いてもらったメモ見ながら練習したり、ジョークが滑って場を凍りつかせてたり。職場でコミュ障をネタに馬鹿にされてるとこを妻が庇ったりしてる。一緒に子作りしてたはずの妻の鞄からピル見つけて浮気を疑ってイジイジしてたり。

Wendy。前髪ぱっつんで柄カーディガンに膝丈台形スカート+タイツのダサい女学生みたいな格好したおどおど系の秘書。けど早口。後半はナースに化けて爆弾魔のとこに潜入してスパイ活動したりもする。Bobbyの家に居候させてもらって母子の争いに巻き込まれてたり。彼女を丸め込んでDaddyの弱みを握ろうと画策するBobbyを突っぱねたり、融通利かない分だけ性格ははっきりしてる。

他にもソビエト側とつながりがあるArkadyっておっさんとか、MI6工作員のKateって女性とか色々出てくる。

脱線しまくりのネタバレ

目の前で恋人Yuliaを撃たれた主人公Joeの回想から始まりますが、そんな経験してるくせにクールで有能スパイ的な描かれ方で進むのが引っかかります。というのもトム・ヒューズは若すぎて顔が綺麗すぎるし、迫力なくて全然怖くないのだ。彼は第二のカンバーバッチとか呼ばれたり、モデルもやってたそうだけど、ハンサムって言うよりくせのない綺麗な顔です。ヒロインよりも美人だし。ただいつもリアクションが薄くて同じ顔してる。ここだけの話、表情変えずにぼそぼそ喋るクールキャラと棒演技の区別が付きません。

スパイ活動でお姉ちゃんと寝ててランニングシャツ姿も披露してましたが、それでも『いいとこのお坊ちゃん』に見えます。スーツ姿なんて制服着た学生みたいな…。後に出てくるMI6の年上女にはボーイスカウトとか呼ばれてるし。上着全開しててタバコ吸ってやさぐれて見ても、ネクタイはぴっちり締めてるしズボンのプレスはきっちり効いてるし、育ちの良さが隠れてないって感じ。机に腰掛けてても背筋伸びてて姿勢いい。ただ火の付いたタバコを道端にポイポイ捨ててるのはいただけません。

このビジュアルで、酒瓶片手に親くらい年の離れてるおっさんArkadyとかを尋問してるのも不思議な感じ。あと十歳くらい年取って貫録出てからの方がしっくりきたかもって、彼のファンはそんなの求めてないって?実際、先日『Victoria(女王ヴィクトリア 愛に生きる)』の新シリーズのインタビューを見たら、2019年の最新の彼はちょっと丸くなって想像と違う方に育ってたので(…超失礼。ファンの人ごめん)このドラマは彼の一番美しい時期のドラマだったかもしれない。過去形にすんな。ええ、今でも綺麗でしたよ。

なんてファンの人に怒られそうなくらい散々言ってますが、この端正で繊細で物憂げな雰囲気はイギリスならでは。イギリス俳優が好きな人はこういうのが好きなんだろうねって前回同様思います。私はもういい年だしおっさんのが好きなので、彼は若すぎてピンとこないけど――って私の好みはどうでもいいって。ちなみにアメドラだともっと大味って言うか、アメリカのハンサムってもっと体育会系入っててごついのが多い気がする。

そんなわけでこのドラマのハンサム枠は彼が独占してるので、他の男性陣は個性的ではあるもののベテラン勢ばかりですが、他の面々のスーツも前回同様やっぱりブリティッシュスタイルで決まってます。石造りの街並みや建物と似合っててノスタルジックな雰囲気。そしてみんなやたらとタバコ吸ってる。

E01 
亡命を希望するArkadyが口にした『Operation Glass』の謎を追って、チームが結成されます。恋人Yuliaを殺した男Odinが関わっていると知ります。Yuliaを撃つ前と同じくるくる丸く剥いたリンゴの皮を残して行ったから――ってなんだこの設定。まあ人殺してるシリアスな場でいつもリンゴの皮を剥いてる男はそう多くはないよね。彼はそのナイフで喉切って暗殺したりもしてる。銃も使ってるけど。

銃と言えば、実際もイギリスの警察は銃を携帯しないこともあるそうで、このドラマでも暗殺用のライフルとかたまにしか出てこない。日本のクライムドラマよりも撃ってないかも。

実際もこういう作りなのかもしれないけども、みんなが慌ただしく働くデスクが並んでてその向こうにチームの会議室があるってビジュアル構成も『Tinker Tailor Soldier Spy』と似てる。横から建物を縦割りにして遠景で撮ってるとことか。ただこちらの会議室はガラス張りです。

最後にYuliaに釣られて転びかけた彼を庇ったのはなんでかってJoeはDaddyに聞いてますが、彼の可能性を買ってるらしい。

E02 
Arkadyの手がかりから二重スパイでDV男のTomってやつとValerieって首相秘書を探ります。その際の盗聴待機時に、世間話苦手なAlanも妻の話題なら結構饒舌にJoeに話してます。妊活中とか際どい話してる。男同士はそういう会話するのかもしれないけども、女からしたら職場の同僚にそんな話されるのは嫌だろうと思ったり。JoeもAlanもコミュ障的だけど常にクールなJoeと比較して、Alanは表情(感情)表現は豊かです。

一方で部下がそんな真剣な任務してるのをよそにDaddyは中国人バレリーナの踊り見て楽屋でほだされてたり。Sarahが『Operation Glass』とはUKに対する核攻撃じゃとか言い出してます。Tomの裏に誰がいるか追ってるところでOdinの名前が出てきて明らかに反応してるJoeの弱みに付け込んでTomは助かろうとするけども、あっさりやられてます。

BobbyはWendyにDaddyの専属秘書に昇進したって打ち明けられてシェリー酒もってお祝いしに来て、酒の力を借りて彼女を押し倒そうとして拒まれてたり、でかい犬飼っててフラメンコ練習してるうるさい大家とかのいるアパートの相談されてうちのお屋敷に空いてる部屋があるって誘ったり。なにこの展開。←ママに結婚しろプレッシャーかけられて頑張ってるっぽい。

BBC『The Game S01E02』
The Game Bobby and Wendy

E03 
核兵器にアクセスできる権限もあるアメリカの外交官と付き合っている謎の女を追って彼女がMI6の諜報員Kateと知ります。彼女はKGBとの二重スパイ疑惑もありますが、Joeは彼女を信用して疑惑を晴らしてます。KGBがアメリカの核(B41)を事故を装ってイギリスで爆発させる、なんて推測してたり、核ってこの当時のイギリスには脅威だったんでしょうね。

そしてバレリーナにビザをお願いされてるDaddy。他の人に忠告されてもWendyにも何言われても、あきらめないとか言っちゃって結婚する気で惚れ込んでるし、プレゼントしたり金も貢いでたらしいし。けど調査で夫がいることが発覚したり騙されてたことに気づいて、赤の可能性ありで国外退去させてます。彼女は再入国もできないしバレエもクビになるだろうって。夫は中国生まれじゃないとか言ってたから多分引き離された?。ひどい。

上のKateが恋人のふりで張ってたソビエトのKasimirって男なんか、死に際に「MI6のあんなビッチは仲間じゃねえ」とか十年も騙してた彼女の正体知りつつ庇ってたのに。度量の大きさが全然違う…。

WendyはBobbyのお屋敷の屋根裏に引っ越してきてますが、高齢独身の息子の結婚を願うママに二人の仲を誤解されてたり。ここが気に入ったからママの誤解といてってBobbyに言ってたり。Wendyは何気にちゃっかりしててBobbyより上手。笑。

AlanはSarahから生理来ちゃったって言われて夫婦でショック受けてたり、自分のせいって庇ったり、最悪子供ができなくても君を独り占めできるからいいって健気なこと言ってたり。なのに最後、妻の鞄にピルが入ってるの見てしまったり。と、それぞれのプライベートも語られてます。

全然同情できないJoeのトラウマやDaddyの失恋といい、それぞれ私生活では不器用な面があるって人間らしさを表現してるんでしょう。そして一部は先のネタバレだけども、それぞれの関係は障壁のある恋愛って面もある。部外者のJimだけは前話で普通に子供たち寝かしつけてるシーンがあって、そこも対照的。

E04 
Arkadyが何か隠していると疑って彼を追うとフランスとつながる空港へ向かっている。逃げ込まれたらフランス側に捕まえてもらえばって呑気なWendyに、Bobbyは真顔で「フランス人にもの頼んだことあるか?ただでさえどんなパスポート使ってるか知らないのに、あいつら絶対探すはずない」って言って笑わせてます。だから絶対足止めしなきゃって焦ってる。

Have you ever tried asking the French to do anything?
Besides, God knows what passport he’s using.
They’d never bloody find him.

けど実際はこっそりフランスで暮らさせていた妻子を迎えに行っていただけ。Arkadyは家族と暮らすためにKGBを裏切って新しい身分を欲しがっていた。彼は大使館の親友Bogdanが裏切者を始末するOdinという男のことを聞いたという。ここでまたJoeが恋人との回想始めます。Arkadyを説得してBogdanにOdinの情報を流すように指示したり必死なところに私情が混じってる…。ちなみにYuliaには9歳の息子がいるらしい。子持ちだったのね…。

Bogdanは『Phoenix』ってメモとMI5の中に二重スパイ『Mole』がいるって警告を残して殺されてます。妻子と新しい人生のはずのArkadyもOdinにやられて、取り逃がしてるJoe。さすが有能。何度逃がしてんだよ。Joeが無理強いしたせいでこうなってるのに、全く申し訳なさそうに見えない「Sorry」が違う意味で切ない。

 
MI5のオフィスは噂好きな人たちばかりのようで、Alanがからかわれてるだけでなく、Bobbyの家に居候するWendyと彼の関係も噂されてるみたい。その辺も分かってカモフラに使ってると思うけど。というのも警察がBobbyそっくりの男のことを証言した男の子を捕まえてるから。上流クラブで警察のお偉いさんAndrewにハムステッド・ヒース(ゲイに有名な公園)で手入れって新聞見せられてカマかけられたBobbyは否定して自分たちはベルグレイヴィアって高級住宅地に住んでるって言ってる。

すっとぼけた挙句に話題変えようと、警察に監視させたら死んだって前回のKasimirの嫌味言ったせいか、報復でDaddyに告げ口されてまたまたすっとぼけてます。彼とこじれたせいで上のArkadyとBogdanの密会に警察出してもらう件も断られて、ぶち切れてMI5のスタッフたちに建物確認してこいって命令してたり。

追い詰められてるBobbyは空港の件でWendyを褒めつつ食事に誘ってます。一応ちゃんとした手筈を踏もうとしてるっぽい。けど女慣れしてない彼が上流クラブの仲間にお薦め聞いて連れてった高級フレンチは職場のおっさんが不倫デートでよく使う場所だったらしく、見知った顔が何組か。そういう関係じゃないってWendyにキレられてます。

新しい部屋を探して出てくって逃げられて、「Bugger!(ちくしょう)」ってぼやいて一人ヤケ酒して帰ったら、今度はママがハムステッド・ヒースで息子が男を買ってる(my son has been buggering boys)って噂を聞いたってキレて、変態って罵って殴ってます。このエピソードで二重のbuggerの意味を覚えたけど使い道なさそうな。。。彼のプライベートは過激すぎてギャグみたいになってますが、イギリスで同性愛が非犯罪化したのはこのドラマの時代の数年前。まだまだご法度だったらしい。

E05 
一年前のJoeと恋人の回想の次はいきなり爆発シーンが入って来て、Sarahが追ってたColinって闇商人とIRAの爆弾魔Philipが接触してるらしいとつながります。フィクションでのMI5といえばIRAとの戦いがお約束なのかもしれないけど唐突感がある。Wendyがおどおどナースに変装して、顔面火傷して気難しいPhilipの家へ潜入します。打ち解けてこっそり合鍵を作ったり、彼を外へ連れ出してる間にJoeたちを潜入させたり活躍してる。

一方でピルを発見してから態度がぎこちなくて妻Sarahにも問い詰められてるAlan。Daddyの前でも変なこと口走ってたり。Philipたちの取引現場で失敗して死にかけたSarahにとうとう薬のことを言ってみたり。浮気を疑う彼に子供が欲しくなかったからと妻は謝ってます。

JoeはJimに二重スパイ『Mole』の存在を打ち明けてます。彼はArkadyとの接触後にアサインされてきたので無関係だってことで信用してるらしい。JoeがJimを前にトランプ並べて一人一人の名前を挙げながら誰が怪しいかってやってるシーンが『Tinker Tailor Soldier Spy』のチェスのシーンを意識してるなって感じです。

Bobby, the worker’s friend?
First time I shook his hand, I’m sure he wiped it on his jacket afterwards.

個人的にはBobbyの名前を挙げた時に、Jimが「彼が労働階級と組むなんてありえない。自分と最初に握手した時もおそらく後でスーツで手を拭いてた」みたいなこと言ってるのが階級社会ってひどいって思ったり。アメドラ見る時は全く意識したことなかったけど刑事って労働階級の仕事なのね?上流階級は彼らに指示するオフィス勤務の役職者と。

BBC『The Game S01E05』
The Game

そしてこのシーンで二人が飲んでるのがミルクティなところもイギリスだなぁと思ったり。男二人のシリアスシーンでこんな可愛い色の飲み物を頼むこともアメドラにはない…。

二人はMI6のKateと共に二重スパイを追って、罠にかけようとしてます。連絡先のホテルの電話ボックスを張ってた。そこに現れたのはAlan。お前が二重スパイだったのか!ってあと一話残ってるからね。そんな単純なオチじゃないだろって薄々読める。Daddyも彼の変な言動は警告しようとしてきたからだって別の誰かを想定してたし。夫が捕まって動揺してるSarahが帰宅するとそこにOdinがいたり。

今回は取引を阻止されたPhilipがヤケになって自爆しようとして最後に、Wendyの純朴さを思い出して電話してきたところで、捕まって手錠かけられた姿のまま電話の背後の音や声からかけてる場所を探り出すやっぱ天才設定のAlanとか、ビルが吹っ飛ぶ派手なアクションとか見どころはありましたが、最初に書いた通り、IRAのエピソード丸ごと本編に関係ない気もする。けど予告とかでも爆破シーンは使われてたから目を引くシーンではある。

というか全話見てからIMDbやBBC公式の予告動画見ると、全部ネタバレしてんじゃんて。まあ最後まで見ないとどれがネタバレだったのか分からなくなってますが。

E06 
前回最後のSarahとOdinの続きから。Alanは自分を庇って罪を告白したとか言ってる彼女。夫はトレーニング受けてないから自白しちゃう前に何とかしないとって。そして彼の牢屋にはKGBが忍び込んで自殺に見せかけて殺そうとします。そこで妻は知ってるのかって問いかけてるAlan。彼は妻の浮気を疑って後をつけて正体に気づいた。

JimたちはColinを追って彼にKGBの依頼でJoeの偽造パスポートを作ったと自白されてます。Joeもまさかの裏切り者か?!と。死んだと言っていた彼の父が生きてることが分かったり不審な点はあるものの、Jimはどこか疑い切れてない。Joeは一人で『Operation Glass』とOdinを倒す気らしい。

Alanが『Phoenix』について調べていたテープのひとつをWendyに託されたJoeは、固有名詞とsheが消される細工されてることから、AlanがSarahを庇ってることに気付く。けれど追い詰めたSarahに恋人Yuliaは生きてると打ち明けられて動揺します。

Sarahは同情誘って二人きりの面会させて、コインに隠した毒薬で夫を殺そうとしてたり。それでも「妻は『Mole』だったけど自分のことは裏切ってない(浮気じゃなくて)よかった」とか言ってるAlan。妻の方は「信用させるために結婚しただけ」って追い打ちかけてます。可哀想すぎる半面、Alanの態度がもどかしすぎてイライラしてくる。。。たまにはガツンとやり返しなさいよ!そういうキャラなんだけども。そして自暴自棄の彼が毒を飲もうとした時に妻はそれを止めて――殺せなかったと。

WendyはBobbyと共にAlanの日記やノートなど所持品を洗い直していて、警察副補佐官やら法務長官やらがなりすましで入り込んでいることを突き止めてます。背乗りってやつね。そんな時も出世が気になるBobbyに「手柄独り占めしたいなら好きにすれば」ってキレてたり。

報告を受けたDaddyも経歴の怪しい人たちを指名したのは内務大臣と気づきます。『Operation Glass』は首相を暗殺して、彼らが長い年月をかけてイギリスを内側から支配しようとする作戦だったと。スケールでかいんだか小さいんだかここにきて分からなくなったよ。※内務省はMI5と警察を統括してるので、見返すとE01の最初にDaddyが大臣にArkadyの件を報告してる。

JoeがSarahの話通り宿敵Odinの元へ向かうとそこには死んでなかった恋人Yuliaもいた。Odinと狙撃者が首相を暗殺しようとしているところで、撃つJoe。実はマイク仕込んでてOdinたちの企みは全部Daddyたちに伝えてあった。逃げるのを追うとOdinは毒薬で自害します。Yuliaは今でも自分たちの一味だって疑惑を残して。

The year we were apart, where were you?

解決して恋人と再会するJoeはしかし彼女の正体を疑いつつも終わり。最後Joeの台詞がループしてるのが怖い。そしてエンディング見ると、駄目だったんでしょうねって感じ。

日本語版は字幕付き。
ただしAmazon.co.jpによると『時間: 312 分』で
私が買った英語版『時間: 350 分』と比べて38分少ないので
インタビューとか足りないのかもしれない。

THE GAME DVD-BOX
KADOKAWA 日本語字幕版

ネタバレだから後回しにしたDVD特典の削除シーンは、WendyとBobby&ママのシーンと、実は二重スパイだったSarahとOdinのやり取りや、スパイ活動がばれないために結婚しろって言われてAlanを落とすとこ、結婚式のシーンとか。任務のために非情に結婚しただけ設定は削って、徐々に愛情が芽生えて殺せなかったって話に持って行ったみたい。そちらの方が救いがあるけども、もうちょっとで家族と幸せになれそうだったArkadyは殺させといて自分だけずるい。まあAlanとは二度と会えないっぽいこと言ってたけども。

スパイとしては、Kasimirの財布から自分の写真が出てきて、オエって顔して「彼はセンチメンタル過ぎたから死んだんだ」って言ってたMI6のKateの方がえげつない。

しかし犯人分かってから見直すと、E01で「この中に二重スパイ『Mole』がいるかも」ってSarahが口にしてるシーンとか、いろいろ考えさせられます。E03で(実はピル飲みつつも)妊活中で生理来ちゃって謝ったら、僕が悪いって庇って慰めてくれる夫に「You devastate me. Every day.」って逆の意味で言ってるシーンがあったけど、これも実は、夫がいい人すぎて割り切れなくなってて文字通りの意味で言ってたのかもとか思ったり。のちに喘息だって言ってた夫の前でタバコ吸ってたとこも愛情なかったからか?とか。深読みしすぎ。

Alanが二重スパイだって言われた後に彼の資料とかを再調査する過程で、Wendyは経歴の怪しい男たちを探し出してますが、彼女がそこまで突き止められたなら、この長い年月の間にAlanもとっくに調べられそうな気がしたけど、彼はデスクワークより機械いじりの方が好きなタイプだったんでしょうか。しかしメインのキャラはアクションや指示するだけだからいまいち有能さが分からない分、具体的な結果出しまくってるAlanやWendyが有能すぎる。笑。

個人的に好きだったキャラはBobby。ポール・リッターのビジュアルは全く好みじゃないけど(正直すぎ)、基本は慇懃無礼で気取ってて表情変えずに嫌味なやり取りをしてる反面、ママの前では殊勝な態度だったり、Wendyに対してはコメディチックになってたりで面白かった。リアルでは身近にも上司にも絶対欲しくないタイプだけど、フィクションで見る分にはいかにもイギリス的で飽きない。

舞台がイギリスなので言葉もイギリス英語です。ただ1970年代なので少し古い言い回しらしい。それでも前回書いたようなアクセントと同じく、アパートをflat、廊下・通路をcorridorとか、palとかmateとかchap、materって呼び方とかmuck inとか単語も微妙に違って新鮮です。bloody hellとかbloody多用してたり。すごい!って感嘆にcapital使うのもアメドラでは見ない。逆にwannaとかgonnaとかイギリスでは使わないと言われるけど、gonnaは今回も出てきてた。上流は使わないっぽいけども。

ということで、最初は劇中でもおばさんにbeautifulって呼ばれてるトム・ヒューズの美しさが見所で、このまま彼のイメージビデオで終わってしまったらどうしようと思った部分もあったものの、後半へ行くほどスピードアップして、疑惑がひっくり返されまくって更に別の真相が!ってなってなかなか面白い物語でした。脇役キャラは結構あっさり死んでるけどチームは誰も死んでない辺りで続編の可能性は残していたんでしょうが、続編はないって明言されてます。