マリオはニューヨーク育ちのイタリア系アメリカ人でないと?

今の時代、明らかに海外の顔立ちの人を見かけても表立って出身地とか聞くのはよくないとか言われたりもします。特にアメリカはその辺を間違えると「差別」って訴えられちゃったりするからセンシティブ。まあ私みたいに見るからにアジア顔で英語へたくそだったら「アジアから来た」ってわかりやすいけども。

アメリカには日系人も二世三世四世…くらいまでいるから見た目じゃ分からない。まあお化粧とかファッションとか、ぼーっと歩いてたり隙がありすぎるとかで現地人じゃないってバレるのもあるらしい。と言っても、現地生まれか移住者か、移住者でも短期長期いるし、旅行者だって色々いるし、気にしていられないのもある。

じゃあ全く気にしてないのかというと、正直日本人以上に気にしてる、気にしすぎってのが今回の話。私的にはどーでもいいじゃん、みたいなとこにもこだわってたり。

それはリアルの話だけでなく、フィクションのドラマやキャラクターの話でも。むしろフィクションだと英語圏のレビューは役者のアクセントとルーツと人種の話ばかりだ。

 

マリオのルーツって?

まずこれ読んでる方に聞きたい。
ゲームやアニメのキャラクターの出身地とか気にします?

まあ学園ものとかご当地ものなら地域のこだわりあるかもだけど、明らかに架空の世界が舞台のスーパーマリオのルーツはどうよ?

キノコ星とか架空の国の生まれなんじゃないかな。うーんどうでもいいや、ってのがほとんどの日本人の答えだと思います。(※キノコ王国にお住まいだそうで惜しかった)

しかしアメリカでは、マリオと弟は、ニューヨークのブルックリンのイタリア系移民なんだそうで。アニメなのかゲームなのかはよく聞かなかったけど、ちゃんとイタリア訛りのアメリカ英語でしゃべってるらしい。てか喋るべき、らしい。「マンマ・ミーア」が口癖だったらしい。しかし一方でそのキャラがイタリア系のステレオタイプとか言われたりもしてるらしい。

これはイギリスドラマの『Peaky Blinders: Series4(ピーキー・ブラインダーズ: シーズン4)』でも、両親はイタリア系イギリス人のギャングファミリーでイギリスアクセントなのに、アメリカから戻ってきた息子がイタリア訛りのアメリカ英語で、英語レビューで突っ込まれてたの思い出したね。イタリア訛りはどこから来たんだとか。このキャラはアメリカ俳優のエイドリアン・ブロディが演じてて、『ゴッドファーザー』を意識してたからこういう喋りになったんだろうということらしいが。

マリオに戻ると昔の実写テレビとかも、それを世襲してちゃんとマリオはイタリア系の役者が演じてたそうな。それが最新映画(アニメ?)でイタリア系じゃなくなりそうでファンが抗議してるそうで。その一連の話をアニメとかゲームに詳しいアメリカ人に教えてもらった。

  
その話を聞いた時に、まず前提のマリオがイタリア系ってところから私は「は?」ってなって、「そうか、マリオだからイタリア系か~」くらいに気楽に考えてたんだけど、英語版では明確にそうなってるらしいとかの話を聞いてなるほどと感心してしまった。試しに英語で「Super Mario Italian」とかでぐぐると普通に常識みたいな。

昔からの設定だそうなので、日本人でも知ってる人は知ってるんだと思いますが、私は日本で子供の頃にゲームやってキノコに突っ込んで毎回死んでたくらいのレベルと知識しかないので、そもそもマリオが喋ってたかすら記憶にない。まず何をこだわってるんだこいつはから始まって、いかにアクセントとキャラの設定が大事かを聞かされて、「まじかー」って笑ってしまったよ。

そもそもこれ日本のゲームでしょ。日本人に勝手にそんな設定作ってたのかーってびっくりしたけど調べたらこの設定作ったのは任天堂の方でした。。。ちゃんと公式だって。英語版では。

しかし日本語版だと任天堂のアメリカ支店の大家(イタリア系)から名前を取った、みたいなところまではちゃんと出てきますが、たぶんイタリア訛りの喋りとかそこまで細かく設定してない…はず。されても分からんし。リアクションに困るし。

というか日本の感覚だと、架空の世界が舞台のゲームのキャラにそんなリアルな設定を作る方が無粋って感じがします。ファンタジー世界のキャラなんだからファンタジー設定で通してほしいというか。喋ってるのもイタリア訛りの英語に聞こえるキノコ王国語であってほしい、みたいな。だってキノコ王国との落差が…。

  

 
けどアメリカ的には、キャラクターには(たとえ土管飛び越えたりキノコ踏んでるファンタジー世界のキャラでも)人種や生まれ育ちのルーツ設定は必要不可欠であって、そこがちゃんとしてないと興味を持たれないと。任天堂のお偉いさんもそこをちゃんと気にしてて、英語版ではバックグラウンドを作り込んだんでしょうね。たぶん。

だから日本だけじゃなくてアメリカでも、ひいてはヨーロッパや世界中でも人気のゲーム・キャラクターになったと。こういうのもローカライズって言うんでしょうかね。

そしてそれを当然として子供の頃からゲームに馴染んできたから設定が変わったら怒ると。その辺の前提を知らない私には初めて聞いて笑える話でしかなかったんだけど、去年のニュースなので日本語でも話題になってたようです。

Chris Pratt’s ‘Super Mario Bros.’ casting angers Italians and Nintendo fans
https://nypost.com/2021/09/24/chris-pratts-super-mario-casting-angers-italians-nintendo-fans/

タイトル直訳:クリス・プラットの「スーパーマリオブラザーズ」。イタリア人と任天堂ファンを怒らせる

個人的にはピーチ姫の声がアニャ・テイラー=ジョイってのは見てみたいと思ったけど。

日本で言うとサザエさんとかずっと続いてきたアニメの声優が変わる抵抗感みたいなものなのかも?関西弁のキャラがいきなり標準語しゃべり出す感じ?もっと根深い感じも…。

 
そしてアメリカのルーツにかける思いを改めて理解しました。

てか私は常日頃から、アメリカ人は常にルーツと人種を気にしすぎてるから、余計に気になって人種差別しがちなんでは――説を唱えたりしてますが、「この気にしすぎてる」の感覚も私の予想以上に根深いと思った。まさかゲームキャラにまで当てはめてるとは思わなかった。

 

アクセントに対するこだわり…細かすぎ。

このこだわりはアメリカに限らずで、ドラマや映画は人間が演じてるから当たり前のように人種と性別は設定されるし、なんだったら英語のアクセントでルーツも表現される。その上で「このキャラはカリフォルニア生まれの設定なのに(役者がイギリス人だから)イギリス英語が混じってる」とかやたら英語圏だと突っ込まれたりします。

「○○アクセントが下手」とか、違う出身の役者が演じる時には常に言われてるし、私の友達もアメリカ人だけでなくアイルランド人もよく言う。

そんなん「フィクションで、イギリスの役者が演じてるんだから、当然じゃんか」ってぬるい目でみるべきなんだけど、まあほとんどの人はそう理解してるわけだけど、フィクションだって理解してても突っ込みたくなる気持ちもあるらしい。そこまでちゃんと演じてこそプロだろってなるらしい。厳しい…。

海外の役者さんのファンで、エージェントのサイトとか見ている人は知ってるかと思いますが、役者のスキルの説明で使えるアクセント&ダイアレクト(Dialect)が載ってます。ダイアレクトは方言とか訳されるけど、地域訛りとか、広義のアクセント。

例:前回書いた映画のヒロイン、シモーヌ・カービー(Simone Kirby)って女優さんのエージェントのサイトより。
http://jag-london.com/clients/item/simone-kirby.html


Dialects(*native)
American-New York (アメリカ、ニューヨークアクセント)
American-Standard (アメリカ、標準アクセント)
American-West Coast (アメリカ、西海岸アクセント)
Australian (オーストラリア英語)
Cockney (イギリス、コックニー)
Dublin (アイルランド、ダブリンアクセント)
Irish RP (アイルランド、容認発音)
Irish-Northern(北アイルランドアクセント)
Irish-Southern*(南アイルランドアクセント)
Liverpool(イギリス、リバプールアクセント)
London(イギリス、ロンドンアクセント)
Manchester(イギリス、マンチェスターアクセント)
RP(イギリス、容認発音)
Scottish-Standard(イギリス、スコットランド標準アクセント)
Yorkshire(イギリス、ヨークシャーアクセント)

 
彼女のスキルのとこに喋れるダイアレクトが載ってるけど、アイルランドの女優さんなので、イギリスドラマにも出てるしハリウッド映画にも出るしで、喋れる範囲が多い。ついでにゲール語も。

アメリカの役者だと大体、ニューヨークと西海岸とテキサス訛りとか国内の喋りしか書いてない。それでやっていけるから。そういう意味では英語圏でも地域ハンデある。

これだけ区別してアピールしてるってことは、それだけ細かくキャラ設定もあるってことで。私はほとんど聞き分けできない自信があるけども。

この辺は前にどこかでも書いたけど、日本語には「ワタクシ~ですわ」と「俺は~だぜ」みたいな、キャラの人格を口調で設定できる役割語があるけど、英語はその辺があまり豊富でないので、地域アクセントとかでキャラ設定を作りがちって違いもある。ハリウッドだと悪役はイギリス英語とかさ。

 

人種やルーツも気にしすぎ…。

アクセントは地域を示してるので当然、ルーツにも関わってきます。人種による喋り方の差もあったりするから、人種も勿論関係する。ドラマは上で書いたように役者が演じるから役者の属性が大きく関わってくる。だから原作と違う属性の役者をキャスティングしてしまうと「ホワイトウォッシュだ」とか抗議されたりしてるわけ。

更にはアニメなんかも、私は好きな役者が声優をやってたアメコミヒーローものを見た限りだけど――アメリカのはキャラの人種と目の色・髪の色・肌の色・骨格とか細かく設定決まってる。日本のアニメもカラフルだけどさテキトーじゃん。見分けつけるために塗ってるだけ的な。←失礼な。色に意味あったら申し訳ない…。

アメコミはそうじゃなくて、人間に関してはルーツに基づいてリアルさを出してるから、現実にあり得るパターンを描くのが基本で、それを外れると見てる人が「黒い目と金髪は不自然(だからこの髪色は染めだろう)」とかフィクションにも突っ込んでしまう。更には日本のアニメも「日本人(アジア人)で青い目はありえないからこのキャラは白人だ」とか言われちゃったりすると。それならピンクやブルーの髪は何人だよ?←こういうツッコミが既に日本人的らしい。

 
しかしさ、ここまで気にしておいて「人種を気にする/出身地を聞くのは失礼です」とかアメリカも本音と建前違いすぎだろって感じだけども。このルーツを気にしてしまう感覚はもはや「アメリカ文化」というかそういう国だからなので、アイデンティティに関わってくる。そしてここに特にこだわり持ってる人と話していると議論が平行線になります。

「日本のアニメキャラは白人ベースなんでしょ?」
「日本人は日本人としてみてるよ。肌の色が明るめなのは画面映りだろうし、髪色目の色もリアル求めてないから、日本的な言動してたら日本人。なんだったらマリオだって日本人でいいよ。てか突き詰めるとフィクションにそこまでリアルさ求めてない」
「白人に寄せてるのは、憧れてるからでしょう」
「(どれだけ自意識過剰だよ)だから寄せてないし、フィクションなんだって」
みたいな。

私だってキャラの設定が大事なのはわかるし、リメイクで設定変わったら文句言ったりもするけども、人種をリアルに合わせたいってこだわりはないし、そこはどーでもいい。現実にありえないキャラクターが描けるのはフィクションならではなんだし。けど今時は、フィクションのキャラの人種や属性と役者を合わせましょうって世の中なので、きっちりしたい派の方が優勢なのかもしれない。

そして私が常に架空の人種設定まで気にする心理が分からないように、向こうは「フィクションの人種なんてどーでもいい」心理が分からんらしい。そしてどーでもいいや派は、どーでもいいので議論になると面倒臭くなって負けるのであった…。

 
実際上で書いたようにアメリカのマリオはイタリア系アメリカ人でないとファンには認められないらしいけど、日本は安倍元総理ですから!日本人はフィクションの人種とかこだわってないんだっての。日本人はフィクションはフィクションとして見てるから!

と力説したところで、世界の流れはアメリカの影響が大きいわけで…。そのうち安倍元総理のコスプレが「イタリア系のキャラを日本人がやってたけしからん時代があった」なんて言われちゃったりするのかなとか思ってみたり。さすがにそれは…ないよね…。

まあ任天堂もかつてはアメリカ人のそのこだわりにフィットするキャラ設定の作り込みをしたからこそ人気キャラになったんだけど、やっぱり感覚的にはそんなのどーでもいい国の会社なわけで(こらこら)、新しいキャラを作ろうとして分岐点に立ってる感じなんでしょうか。もしくは固定イメージ付きすぎてるから一新したかったのかも。

ということで、たまについて行けなくなることもあるけど、キャラの人種――見た目だけでなくルーツ設定やアクセントも英語圏では大事みたいですという話でした。