私がこれらを意識するようになったのは、日本で続きが放映されなかったアメリカのドラマの続きを見るために輸入DVDを見ることになった苦労(といっても趣味だしそれも楽しみだけど)から生まれてます。英語全然分からない・聞き取れない状態のスタートだったので、英語字幕の有無は死活問題だった。
今は英語字幕なしのも見てるけど、たまに聞き取れない時もあるし、そもそも自分の聞こえてる台詞が合ってるのか答え合わせができないって曖昧さはあるから、やっぱり字幕はあるに越したことはない。何回か見て消すことはあるけど、なしかありかで言えばありが欲しい。
一方で日本で流通してるドラマや映画しか見ないって人は、海外作品を見る時に日本語字幕か吹き替えかを意識する程度で、字幕かCCかとかは意識しないと思う。
でも私の逆で、海外から日本のドラマや映画を見てる人もいるだろうし、日本語を勉強してる人もいるだろうし、移民でますます増えるだろうし、音の聞こえにくい人もいるだろうから、日本語字幕(か日本版CC)もアメリカ並みに普及したらいいとは思います。
さて前置きはそこまでで、これらの何が違うのかって結論を先に言うと、どれも『字幕』です。ただ用途が違っているため、表示形式や内容が微妙に違う(ことがある)。
※簡潔に書けない病にかかっているため例のごとくだらだら書いているので、結論だけ見たい人は『ここから』下の四角の中だけ見てください。
字幕 Subtitles
日本語でサブタイトルって言うと、ドラマの話ごとのタイトルとかを連想するけど、英語だと字幕の方を指す場合が多い。「Subtitled in English」ってDVDのパッケージにあったら「英語字幕あり」の意味。
そしてこの場合の『字幕』は基本的に、話されている言語が理解できない場合の補助として存在してる。日本国内で流通してる洋画等のDVD等には翻訳した『日本語字幕』か『吹き替え』が付いてますが、どうしてついているかと言ったら、ほとんどの日本人は異国語の物語を原語で見ても理解できないから。英語圏でも日本のアニメとかヨーロッパのドラマ等は、英語の『翻訳字幕』か『吹き替え』が付いてる。
そして字幕は言葉が理解できない場合につくものなので、台詞だけでなくて画面に映るものすべてが対象になる。例えば画面に映っている英語の新聞や手紙の説明に日本語の補足が付くとか。この場合の字幕は消せないパターンが多いけれど。これは他の国の場合も同様で、フランス映画をアメリカで放映する時にはフランス語看板に英語字幕の説明が付いたりとかある。
DVD(20th Century Fox Home Entertainment Japan)

異国語以外でも、方言とか聞き取れない文字に字幕が付いて来ることもある。これはどこの国でも同様の使い方をしているよう。中国みたいに地域で言葉が変わる国だと地域によって補足字幕が付くそう。
日本語字幕の場合は何秒に何文字とか制約が厳しくて時に超訳意訳もあるようですが、英語等の翻訳字幕の場合も違う言語への翻訳なので多少の意訳はあるようです。
ただアメリカの場合、DVDなども結構な割合で英語音声に英語字幕がついてます。その際、CCの機能を兼ねている場合は台詞そのまま表示されて、なおかつ音声の説明もある。そうでない純粋な字幕の時は名前とか長い台詞が省略されてることもある。更に英語字幕+スペイン語やフランス語とか多言語入ってることも多い。
どうしてこうなってるかというと、アメドラやハリウッド映画がグローバル市場を対象にしてるのと、やっぱりアメリカ国内にも英語非ネイティブの人が多いから字幕補助が必要って理由もありますが、次のCCの配慮から来てる方が大きい。
CC(クローズドキャプション) Closed Captioning
キャプションて言いながら英語だとキャプショニングなわけですが、『closed captions』『closed-captioned』て言い方もあります。こちらは基本は聴覚障碍者または難聴者向けのアメリカの字幕の規格。それが私のような非英語ネイティブの人には英語字幕として役に立っているというもの。
使い分けとしてはsubtitlesって言ったら字幕を指すけど、caption(captioning/captions/captioned…)って言ったら聴覚障碍者等向けの説明含んだ字幕を指す。――と必ずしも言えないのがややこしいところだけれど。大まかにはそういう意図で別れてる。アメリカの場合は。
ちなみにどうしてクローズドなのかというと、クローズできる=非表示にできるから。昔の主流でフィルムに焼き付けていた字幕、今もたまにある非表示にできないやつはopen captioningオープンキャプションて呼ばれます。
日本だとNHKの字幕放送等がこれの日本語版的なものだけど、アメリカの場合は障碍者が公共施設や商業施設で差別されることのないよう1990年に『Americans with Disabilities Act (ADA)』って法律が制定されて、更に1991年には『Television Decoder Circuitry Act』という法律によって13インチ以上の全てのアナログテレビ受信機に文字字幕を読み取る機能をつけるように定められ、Federal Communications Commission (FCC)って独立政府機関がそれを管理してる。その規格がCC(クローズドキャプション)になるわけです。その後の法改正でデジタル放送等にも拡大されてるようです。
要するに、CCはアメリカにおいて聴覚障碍者等が聞こえる人と同じように生活するための権利として存在してる。そしてテレビなどの配信者にはそれを提供する義務がある。これはドラマや映画だけじゃなくてニュースなども含まれるけど、CMとか短い動画とかいくつかの免除事項もある。
まあ私はアメリカ人じゃないので受け売りの説明ですが、詳しいことは下のFCCのサイトに山のようなリンクと共に書いてありますからそっち見てね。←投げやり。
個人に参考になるのはこの辺。
テレビ番組のCCについてのコンシューマー(一般ユーザー向け)ガイド
Closed Captioning on Television
https://www.fcc.gov/consumers/guides/closed-captioning-television
FCC closed captioning rulesFCC rules for TV closed captioning ensure that viewers who are deaf and hard of hearing have full access to programming, address captioning quality and provide guidance to video programming distributors and programmers. The rules apply to all television programming with captions, requiring that captions be:
- Accurate: Captions must match the spoken words in the dialogue and convey background noises and other sounds to the fullest extent possible.
- Synchronous: Captions must coincide with their corresponding spoken words and sounds to the greatest extent possible and must be displayed on the screen at a speed that can be read by viewers.
- Complete: Captions must run from the beginning to the end of the program to the fullest extent possible.
- Properly placed: Captions should not block other important visual content on the screen, overlap one another or run off the edge of the video screen.
The rules distinguish between pre-recorded, live, and near-live programming and explain how the standards apply to each type of programming, recognizing the greater hurdles involved with captioning live and near-live programming.
(The FCC does not regulate captioning of home videos, DVDs or video games.)
インターネット配信のCCについてのコンシューマー(一般ユーザー向け)ガイド
Captioning of Internet Video Programming
https://www.fcc.gov/consumers/guides/captioning-internet-video-programming
Video programming rules
- The Internet closed captioning rules only apply if the video programming was shown on TV in the U.S. with captions.
これによるとTV番組のCCは、会話や音声と可能な限り一致して、読めるスピードで可視性を損ねることなく、表示する必要がある――らしい。なので原則は台詞そのまま書き起こしになるわけと。超訳しちゃ駄目なのね…。
そしてネット配信でも規格があって、インターネット配信のCCはアメリカのTVで放映されたCC付きのビデオ配信に適応される、と。ドラマに限らず、CBSでもCNNでもNBCでもFOXでもアメリカの放送局のWEBサイトを見てみれば、ニュース等のほとんどの動画にもCCがついてます。

ただしコンシューマー用のとこに「(The FCC does not regulate captioning of home videos, DVDs or video games.) 」と但し書きがあるように、ホームビデオ、DVDやゲームはFCCの規制対象外です。ホームビデオは当たり前じゃ!って気もするけど、アメリカだし、なんでCCつかないのって言う人もいるのかも。
というわけで、最近のDVDにCCを兼ねた英語字幕や下のSDHがついてる率が高いのは、あくまでも配慮してるだけということかな。テレビ放映時にはCCがついてるからDVD化でもそれを転用して字幕をつけてくれてるのが大体なんでしょう。DVD化の権利がよそに移ってたりすると字幕がないってこともある。
更にこれはアメリカの規制なので、イギリスやカナダ、オーストラリアで出た作品には適用されてなかったりもする。アメリカ国内のものでもDVDの場合には、古いドラマや映画はデータ形式が違うとか技術的な理由で字幕がないのもある。新しいものでもないのもある。だから字幕やCCが必ず付くと期待してはいけない。
そしてDVDに限らずオンラインでもテレビでも、日本で配信される場合は当然ながらFCCの管轄外なので、CCをつける義務はない。日本語版には日本語字幕か吹き替えしかないことも多々ある。
法的な話の次は技術的な話。
DVD(20th Century Fox Home Entertainment)

字幕とCCで表示内容が同じなのに、たまにこういう両方が入ってるDVDがあるのは、CCを読み取るチューナーの規格がある(あった)ため、それが使えるようにって配慮らしい。
うちにあるDVDは、『字幕なし>英語字幕かSDHあり>英語字幕かSDH+CC>CCのみ』の順で多い。普通のDVDソフトでは字幕しか表示されなかったりするので、そういうソフトを使うとCCのみしかないものは表示できずに字幕なし状態になる。
そしてCCが『(半透過)黒背景に白文字・大文字表記』なことが多いのは、アナログ時代の受信装置の規格によるもので、昔は技術的に大文字しか表示できなかった名残とか。テレビ受信機の法律制定前、最初にアメリカでこの字幕の技術を確立したのは今は亡き…というかパナソニックになった三洋電機だそうな。今は大文字小文字も選べるし、文字のサイズとかフォントも変えられるし、だいぶ進化してるけど。
また元の用途が聴覚障碍者等のためにあるので、台詞だけでなくて、雷鳴や銃声や鳴き声とか、歌ってたり悲鳴あげてたりって場合は [ ] や ♪ 付きで表示する、とか、音の説明も入る。回想とかでたまにある会話してるシーンだけど無声の時なども[No Audio]や[No Sound]などと記されてる。というように内容も決められていて、ただの字幕よりもルールが厳しい。上のFCCの規則の通り正確に書かないとならないし。が、両方並べて見てみた範囲では(ヒマ人)、最近のは英語字幕やSDHも同じ表示がされているので、基本的に今は英語字幕でCCを兼ねられることが多くなってるみたい。ますます違いが分からないね。
SDH(Subtitles for the Deaf or Hard-of-hearing)
更にアメリカのDVD業界で生まれた『SDH(Subtitles for the Deaf or Hard-of-hearing)』って、直訳すると『聴覚障碍者または難聴者のための字幕』ってものもあります。これは主に、DVDと、CCがサポートされていないHDDメディアやBlu-rayなどについていることが多くて、字幕だけど用途としてはCCの一部で、両者のいいとこ取りをしている(らしい)。ただし上で書いたようにFCCはテレビ・オンライン以外のメディアは管轄していないので、配給先がDVD等に任意でつけてくれているもの。そしてSDHとCCとの最大の違いは、SDHの方はソフトが字幕として認識してるってところ。厳密には普通の字幕とSDH、CCはエンコードの規格が違うんだそうな。
ちなみにCCは小文字が表示できるようになったり進化してても『黒背景に白文字表記』がデフォなので、字幕やSDHとの区別は見た目でもつくけれど、SDHと上の方で書いてる『台詞そのまま+音の説明も入ってるCCを兼ねた字幕』の違いは――見た目では分かりません。どちらも同じものが表示されていて、なおかつ字幕として読み込まれてるし。DVDのパッケージに「SDH」ってあったらSDHで、「Subtitled in English」だったら英語字幕ってだけ。ここはどう呼んでるかの違いなだけかもしれない。※最近のアメリカ産のDVDの英語字幕は(ついていたら)大体がSDHになってます。だから昔と違って台詞が省略されてない。英語学習する人にも便利な時代です。
DVD(CBS productions)

SDHとCCの方はもう一つ違いがあって、どちらも耳の聞こえない人のために音声を文字に起こしたものだけれど、SDHの場合は英語とスペイン語以外の言語に吹き替えされた場合にも適応される。日本語吹き替えされたアメリカドラマの台詞をそのまま日本語文字で表示していたらそれは日本語SDHになる。初めから日本語で作られたドラマに、耳の聞こえにくい人のための配慮をした字幕をつける場合もSDHと呼ぶかもしれない。まあ直訳で『聴覚障碍者または難聴者のための字幕』なわけだから、その目的を達していれば全部SDHなのかも。そしてCCと違ってアメリカの法律で要件が決まってる規格ではないので、上のただの字幕との差も含めて、使う側によって定義にブレはあるかもしれない。
上の画像の『Blue Bloods』のパッケージの説明も、『Subtitles: English SDH, French, Spanish, Portuguese』でSDHになってるのが英語だけなのは、英語で喋ってるドラマだから。それ以外の言語は翻訳なので普通の字幕。場合によっては意訳もされている。
――と言うように、技術的・見た目的には近年は字幕もSDHもCCも変わらなくなっていたりするので、区別する意味もなくなってきてますが、普通の字幕はひとつの配信に多言語が存在するけど、CCとSDHは聞こえない人のために言葉を文字に起こしたもののことだから声と対応する1言語しかなくて、更にCCはアメリカの規定に基づいてるから基本は英語(かスペイン語)だけ。これはFCCの規定するCCはアメリカ国内の耳の聞こえない人・聞き取りにくい人のためという用途でアメリカ国内の配信番組についているもので、番組の音声をそのまま表示しているから。アメリカ国内配信でスペイン語で話してる番組があれば、音声そのままの規則通りにCCもスペイン語になるらしい(英語とスペイン語以外の言語に関しては例外事項のようです。アメリカが多言語化したら更に増える可能性はある?)。
アメリカ以外・その他追加
最近はアメリカ以外の国でも、普通の字幕ではない、聴覚障碍者等のための字幕が増えてます。ただし任意なので色々と呼び方があります。探せばもっとバリエーションがあるでしょう。
Amazonの場合は、アメリカ以外の作品も扱っているため、SDHも含めて一律に
- Amazon.com Subtitles for the Hearing Impaired: English
- Amazon.co.jp バリアフリー字幕: 英語
という呼び方をしてるようです。普通の字幕と別についているのは、音の説明などが入った聞こえにくい人のための字幕だから。
※Amazon.comでアメリカ向けにPrime配信をしているドラマなどは、アメリカの法律に準じて『Closed Captions』がついてます。
イギリスBBCのDVDは『SUBTITLES: English for the Hard of Hearing』って、耳の聞こえにくい人用の字幕のことを呼んでました。これも通常の字幕とは違って音の説明が入ったもので、アメリカのSDHに当たるもの。なのでソフト上は字幕として読み込まれます。
というわけで結論
- 字幕:画面上の会話・表記を視聴者に理解できる文字で補助するもの。ひとつの動画に複数言語が存在して切り替えられる。英語・日本語・フランス語収録とか。
- CC(クローズドキャプション):アメリカFCCという政府機関が管理する、アメリカ国内のテレビ及びそれを配信するWEB放送番組につく、聴覚障碍者等向けの字幕。会話や音声と可能な限り一致して、読めるスピードで可視性を損ねることなく表示する必要がある。そのため動画中で話されている言語に一致するが、アメリカ国内の法に基づくものなので英語(とスペイン語)のみ。
※FCC管轄のアメリカの放送局以外も、これに準じた字幕をCCと呼んで表示していることがある。新聞社のWEBサイト動画にもCCが付いていたり。その場合、英語・スペイン語以外もCCと呼ばれることもある。 - SDH(Subtitles for the Deaf or Hard-of-hearing):FCCの管轄外であるアメリカのDVD・HDDメディア・Blu-ray等に任意でつけられている聴覚障碍者等のための字幕。表示される内容はCCに準じて、会話や音声と可能な限り一致して、読めるスピードで可視性を損ねることなく表示されているが、画面上は字幕として読み込まれる。任意でつけられているものなので言語は限られないが、基本は動画中で話されている言語に一致する。
- その他、アメリカ以外:特に規格のない国などでは、台詞の他に音の説明等が入った、CCやSDHに当たる聴覚障碍者等のための字幕は『English for the Hard of Hearing』『バリアフリー字幕』などと呼ばれることもある。
うちのDVDソフトのCCの設定画面だけなぜか英語になってるのが不思議だったんだけど、これももしかしたら元がアメリカの規格だからかもしれない。バグってるだけかもしれないけど…。※もちろん正規品です。そして字幕と違ってここは言語の選択肢もない。→バージョンアップしたら日本語に直ってたのでほんとにバグだったかもしれない。。。
補足。今回は字幕を取り上げてるので耳の聞こえない人が対象の話になってますが、勿論アメリカのADA法は聴覚障碍に限ってはいないので、目の見えない人のために音声読み上げ機能をつけたり・通常の音声以外に状況説明のナレーションを入れるとか、その他の障碍を持つ人のための取り組みもあるようです。
※ちなみに今回の説明引用画像に写ってる男がみんな同じなのは、うちにあるのがこの男のDVDばかりだからである。彼はアメリカ俳優のMichael T. Weiss(マイケル・T・ワイス)という人で、私にとっては世界一ハンサムな男だけれども、日本では「格闘ゲーム MARVEL vs CAPCOM 3 のドーマムゥ様の声の人」って言うのが多分一番通じるっぽい。とオチをつけてみる。
彼と作品の話については、サブドメインの方で死ぬほどしてます。→Movies -ただ一人の俳優-