Michael Collins マイケル・コリンズ ネタバレ感想とゴシップ話?

前回『The Wind That Shakes The Barley(麦の穂をゆらす風)』で予告した通り、今回は1996年の映画『Michael Collins(マイケル・コリンズ)』です。

前々回に書いたドラマ『Resistance(Rebellion リベリオン: Series 2)』もだけど、これらはアイルランドがイギリスの統治下だった時代の1916年イースター蜂起(Easter Rising)、1919年からの独立戦争、1921年12月英愛条約(Anglo-Irish Treaty)調印、それを巡る内戦と、ほぼ同じ時代をベースにした物語です。

なので当時から現在までのざっくりとしたアイルランドの歴史、ドラマの背景は前回『The Wind That Shakes The Barley』で書いたけど、そのまま今回も同じなので、そちらを見てください。

The Wind That Shakes The Barley 麦の穂をゆらす風 ネタバレ感想とアイルランドの歴史の話

出てくる軍や警察など対立関係と制服の見分け方は『Resistance』の下の方で書いたので、詳しくはそちら。まあこの映画は伝記映画で細かい部分はさらっと流してるので、見分けがつかなくても問題ないけども。

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前回の『The Wind That Shakes The Barley』は地方都市コーク州を舞台に、フィクションキャラとストーリーがメインの物語でしたが、本物のマイケル・コリンズが記録映像で登場してます。

ダブリン城(The Dublin Castle)周辺が舞台の『Resistance』の方は、主人公たちは架空のキャラで史実をベースにフィクションが混じってますが、マイケル・コリンズやその他の政治家たち、イギリス側の軍人や役人や、何人かの実在の人物は(役者が演じて)登場してます。更には実在の人物をモデルにしたフィクションキャラもいる。

そして今回のこの映画は『Michael Collins(マイケル・コリンズ)』がタイトルそのまま主人公の伝記映画です。登場する人物は一応ほとんど実在キャラ。ただしこれもストーリーはフィクションが含まれていて、賛否両論はあった。

というように、いずれの映画・ドラマにも登場している彼マイケル・コリンズはアイルランドの独立戦争とその後の時代において重要な人物であり、『独立戦争の』英雄です。

 
彼は1916年のイースター蜂起でIRB(IRAの元になる組織)を率き、その後にシン・フェイン(Sinn Féin)党がアイルランド共和国を宣言した後は、IRA(Irish Republican Army=アイルランド共和軍)を連れてアイルランド独立戦争を戦い、イギリス統治からの開放につなげました。――ここまでは誰もが認めるところ。

ただ休戦に伴って彼がメンバーに選ばれて結んだイギリスとの条約が、共和国でなくて自由国という名のイギリス配下の自治領だったこと、王室への忠誠を誓う必要があったこと、北アイルランドとの統合をあきらめることなどだったことから、それに賛同できない人たちからは裏切者と呼ばれ、IRAは分裂し、後の内戦が勃発しています。

なのでそこからは、人によって評価が分かれます。コリンズは全ての人にとっての英雄ではなくなった。同時に共和国軍であるIRAのリーダーでもなくなった。

『The Wind That Shakes The Barley』『Resistance』の両方にも、この条約と彼の選択に賛否を唱えるシーンは出てきます。そしてそれを境に、独立戦争を共に戦った身内・仲間が、内戦で敵と味方に変わるのもいずれのドラマにも描かれてる。それはアイルランドの歴史にとって重要な史実だから。

つまりコリンズはアイルランドの内戦のきっかけを作ってしまった人でもある。

彼をヒーローとしているこの映画や条約賛成派側は、それも後に反条約派として仲違いするエイモン・デ・ヴァレラ(Éamon de Valera)が仕組んだこととと言って庇うけれども。

――というように、この条約を巡る賛成派と反対派の対立は、その後の歴史の評価においても大きくて、いまだに両者の主張は平行線。

※アイルランドの歴史において、一番悪いのは勿論イギリスなわけですが、そこは当たり前なのであえて書くまでもない前提になっています。笑。その上でイギリス側に譲歩してる賛成派と、それを裏切りと呼ぶ反条約派の対立がある。

これも前回の背景に書いたけど、この条約に関する対決は内戦後も続いていて、賛成派は『フィナ・ゲール(Fine Gael)』の前身党を、『シン・フェイン(Sinn Féin)』を離れたデ・ヴァレラは『フィアナ・フォイル(Fianna Fáil)』を作っていて、いずれの政治政党も今も続いている。なので歴史の話が政治の話にもなってしまうので、デリケートな話題でもある。

そしてIRAも軍隊から分裂して近年は北アイルランド問題をめぐるテロリスト扱いの団体を示すようになったり、北と南は宗教対立もあったりという点も前回書いた通り。

条約締結後から内戦までの両者の言い分等も前回『The Wind That Shakes The Barley』の下の方に書いたので、詳しくはそちらを参照してください。それぞれに正義があるのでどちらが間違いと言えるものでもないのです。

映画の背景。ここはアイルランドの人に聞いた話。

ただ今でこそこんな有名になったマイケル・コリンズですが、1996年に今回の映画が出るまでは、この複雑さもあって、条約賛成派から設立された政治政党『フィナ・ゲール(Fine Gael)』がアピールしていたものの、今ほど英雄視されてはいなかったらしい。

日本でも戦争体験をした祖父母がそれをほとんど語らないまま亡くなったなんて話はよくありますが、アイルランドでも内戦は身内の争いでもあっただけに積極的に語り継ぐ人は多くなかったそうで、個々の評価も避けられていた。※今でも反条約派の方はあまり語られていない。

それが語られるようになったきっかけのひとつがこの映画、という面は評価されることではあります。そしてこれが今の歴史評価――条約賛成派の方が正義みたいな――にもつながってる。

でも、そもそもこの映画、条約賛成派側がハリウッドと組んで、大金をかけて作っているという背景があります。映画の際には大々的にキャンペーンをやって、マイケル・コリンズの名前のマグカップやTシャツを作ってアピールしたそうな。←アイルランドの人がやたら強調してた箇所。笑。

まあ販促グッズの話は抜きにしても、これまで別々にアイルランドの何人かとこの映画の話をした時にいずれの人も「ハリウッドと協力してお金をかけて作った」というのと「公開時のキャンペーン」の話はしていたので、それなりにアイルランドの人の記憶に残る大きな企画だったようです。

そういう流れなので、この映画は当然、条約賛成派側の視点で作られています。内戦パートになってからは、反条約側――というかデ・ヴァレラは悪役になっている。やたらオーバーアクション&くどい喋り方でイっちゃってる人みたいになってたり、笑。そこも含めて個人的にはこの映画で一番好きなキャラだけど。

いきなりネタバレから入ると、デ・ヴァレラが『暗殺』に関わってたような描写や、反条約派になってコリンズと対立することになった友達のエピソードなんかも賛成派側に都合よく改変されていて、批判も出たらしい。

公正を期すためにも(娯楽にそこまでいらないって話もあるけど…)できれば今回の映画を見た人にはぜひ、反条約側からの視線も入れた『The Wind That Shakes The Barley』をセットで見て欲しいです。

そちらの感想で書いたように、この映画には反対派が不利を承知で戦った肝心の理由――条約は富裕層に有利なもので貧困層の暮らしは変わらなかったってところが描かれていないので。けど残念ながら『The Wind That Shakes The Barley』の日本語版『麦の穂をゆらす風』は廃盤になってて中古は高い…。

 
と、ネガティブなこと言っちゃったけどこの映画のいい点も挙げると、ハリウッドと組んでるだけに、『The Wind That Shakes The Barley』『Resistance』よりもライトになってます。独立戦争につながったイギリス側の弾圧とか残酷なシーンもさらっとしてる。

『Michael Collins』
Michael Collins マイケル・コリンズ

コリンズと婚約者との悲恋、親友であり恋のライバルとの三角関係も、当時日本でも有名だった女優ジュリア・ロバーツ(Julia Roberts)をヒロインにたっぷり描いてます。ていうか最後は彼女が主役みたいな…。

そういう意味では万人受けを狙ってて、アイルランドの人も受け入れやすそうなこっちを先に勧めると言ってた。でもアイルランドでの映画の評価は『The Wind That Shakes The Barley』の方が上らしいというのも、複雑さを表してる。

国のために若くして亡くなった人たち。

世界史でも「マイケル・コリンズは独立戦争を戦い英愛条約に調印し内戦で命を落とした」って習う通り、映画でも主人公のコリンズは内戦により31歳で命を落とします。恋人が彼の死を知らされて泣いて終わり――とそこも前回『The Wind That Shakes The Barley』とほぼ同じ。ただし条約を巡る内戦では賛成派と反対派というように反対だったわけで、どちらの立場も同じように悲劇的であったと。

こちらの映画のが先で『The Wind That Shakes The Barley』は後発ですが、答えの出ない悲劇を示すため、あえて同じような終わりにしたのかもしれない。

実際にも、この独立戦争と内戦を戦ったメンバーは両者、若い人が多かったので「この戦いが終わったら結婚しよう」って恋人と約束しながら片方が亡くなってしまった悲劇はたくさんあったそうで、これらの映画はその辺も表現されているのもしれない。

前回の方で書いた、コリンズと敵対する側に回った反条約派(anti-Treaty)IRA指揮官のリアム・リンチ(General Liam Lynch)もやはりそういう約束をした許嫁がいながら29歳で内戦で倒れ、残された恋人は生涯独身で彼を想っていた――という悲恋があったとか。切ない。

 
まあこの映画の話に戻ると、個人的にはラブストーリーよりクライムドラマの方が好きって好みの事情もあってか、この映画は恋愛パートを入れすぎている気がするけども。

例えば血の日曜日事件。スパイを殺しに行ってる時に指揮官がいちゃいちゃしてるのはいかがなものかと。笑。正直このエピソードにこのロマンス展開はないだろうと…。『Resistance』にもこのエピソードは出てくるけどそっちはシリアス報復シーンです。

『Michael Collins』
日が昇りカラー映像になるまでいちゃついてる二人…。
Michael Collins マイケル・コリンズ

→史実の事件の流れは『1920年11月21日血の日曜日事件(Bloody Sunday)』で。

一般的にアイルランドの『血の日曜日事件』と言ったら1972年1月30日の方が有名ですが、こちらは1920年11月21日の方。アイルランド独立戦争の象徴として重要なエピソードのひとつです。

リンク先にも書いてますが、この事件は午前・午後・夕方と3エピソードあります。史実としては早朝にIRAがイギリススパイを襲撃し、それに怒ったイギリス側が午後にクローク・パーク(Croke Park)ってスタジアムでフットボール(サッカー)の試合が開催されてる最中、IRAが潜伏しているとして市民も大勢巻き込んで銃を乱射し、夕方には捕らえたIRAとボランティアの3人を報復としてダブリン城内の牢獄で拷問死させた一連の事件を指します。

イギリスは倍返ししてますが、一応歴史評価的にはスパイをきっちり片づけたアイルランド側の勝ちと言われてます。イギリスが無抵抗の一般市民も巻き込んだのはIRAに味方した市民への報復も兼ねてるとか言われてますが、だからと言って一般人は狙っちゃいけなかった。

どれだけまずかったかというと、90年近く経過した2011年にイギリス女王がアイルランド公式訪問した際に、ダブリンにある『Garden of Remembrance』ってイースター蜂起や独立戦争を含むアイルランドのために戦った人たちの慰霊公園(後に大統領になった本物のデ・ヴァレラさんが開園した)と共に、事件現場になったクローク・パークも訪れたってくらい。このサッカー場で犠牲になった市民たちや夕方の部で亡くなった3人の名前が刻まれた慰霊碑とかも今も残されているそうです。

そんな事件なのに、イチャイチャよ…。

まあコリンズは指示しただけで、実行したのはThe SquadとかCollins SquadとかThe Twelve Apostlesとか呼ばれてた彼の配下のIRA暗殺隊のメンバーたちなので、もしかしたら当人はほんとにイチャイチャしてたのかもしれないけども…。

 
慰霊公園以外にも映画では悪役だったデ・ヴァレラさんのリアルの功績もついでに書いておくと、IRAから条約調印に任命されて政治家にもなったコリンズとは違い、彼はずっと政治家だったので戦地に直接行くことはなく内戦後も生き残って、政治家としてアイルランドの共和国化を達成したりもしてます。

戦後1935年にはリアム・リンチの撃たれたノックミールダウン山脈に彼の慰霊塔を建てたりと仲間思いのエピソードも残ってます。映画にはまったく関係ないが。今はハイキングコースの目印になったりしてるらしい。

 
他にもどうでもいいところとしては、ハリウッド映画だけにこの映画のコリンズはf*ck連呼して口も悪いです。笑。

主人公コリンズ役もアイルランド出身のハリウッドスター、リーアム・ニーソン(Liam Neeson)。実在のコリンズは31歳という若さで亡くなった悲劇の英雄のはずが、正直かなり落ち着いてて低い声なので余裕で40代以降に見えるんだけど…。おっさん好きだけど、正直このマイケル・コリンズは枯れてるよね…。←ファンの方ごめんなさい。

ちなみに『Resistance』だとマイケル・コリンズは理想に燃える若さあふれる熱い男として描かれてました。演じてたのはギャビン・ドレア(Gavin Drea)で、こちらは役者さんも若くて年齢通りに見える。いや別に、おっさんが悪いわけじゃないんだけどさ…。笑。


Michael Collins マイケル・コリンズ

Michael Collins マイケル・コリンズ

けど実際のコリンズの写真と比較すると、リーアム・ニーソンの方が似てる???

 
余談ついでに書いとくと、コリンズの暗殺隊の一人リアム・トビン(Liam Tobin)をこれまたベテラン俳優のブレンダン・グリーソン(Brendan Gleeson)が演じてましたが、『Resistance』では同じコリンズ暗殺隊のリーダーで主人公を息子のブライアン・グリーソン(Brian Gleeson)が演じてました。


Brendan Gleeson - Brian Gleeson

静止画より動いてるほうが似てて、息子さんも将来こうなるのかあと感慨に浸りつつ見てしまった…。

蛇足のゴシップ話。

さて最初にこの映画は、条約賛成派(自由国側)の視点でマイケル・コリンズを英雄として描いた映画であると書きました。彼らの側を正義としているので、偏っているところ、批判された箇所もあります。

一番大きなところは、上でも書いたような対立の際の描かれ方。

条約を巡り対立することになった反条約派の友達ハリーの死も、映画だと逃げている彼を条約賛成派=自由国軍兵士が橋の上から撃って、彼の遺体を見てコリンズが嘆いていたり、撃った兵士を責めていたりと、内戦の不条理さを出した演出になっていましたが、実際のハリーは非武装でホテルにいたところを自由国軍に射殺されたとされてます。ひどい。コリンズの死を望んでたような話もないって。

 
コリンズ自身の死も、内戦中に敵に撃たれてるわけで大雑把には『戦死』なわけですが、流れ弾に当たって亡くなったとか、暗殺されたとか立場によって微妙に解釈がずれます。この映画は暗殺的に描いてる。

彼が反条約派のメンバーたちに待ち伏せされて、映画では名もなき若者でしたが実際はDenis O’Neillという人と言われている――に撃たれたことは史実通りですが、現場は田舎だし、居合わせたのは彼ら自由国軍と反条約派という敵と味方だけ。証言も双方で食い違っていて真実は藪の中。この暗殺者自身の経歴も謎が多い。

デ・ヴァレラがコリンズを呼んだとか、彼の身近な人間が暗殺したような話も実際にはない。コリンズが撃たれた時にその近くに滞在してたことは事実だそうで、この映画はそこから話をふくらませてる。

 
他にも世俗的なところでは私生活の描き方も。

この映画で出てくるコリンズの婚約者キティが、最初に見初めていたハリーではなくて、コリンズに乗り換え…彼を選んだというのは史実です。そしてコリンズは彼女との結婚を控えつつ、内戦の最中に撃たれて亡くなった悲劇の英雄である部分も事実。映画だと最後、ウエディングドレスを選んでるキティがコリンズの死を知らされる悲恋で終わってましたが、まあそういう悲恋で終えたのも史実通り。

コリンズが彼女とやりとりしたラブレターもたくさん残っているそうで、資料としてまとめられていたり、アイルランドの博物館に展示されてたこともあったそうな。なにその罰ゲーム…。

ちなみに実在のキティは、上の反条約派の方の許嫁とは違って、その後は別の方と結婚したそうですが、息子の一人に彼の名前を付けてます。お墓もコリンズの近くにあるんだそうで、ずっと死んだ婚約者を引きずっていたと取れなくもないよーな感じです。それを許した旦那さんの心情を想像すると昼メロみたいになりそう…。

ただ一方で、映画ではキティ一筋っぽい誠実な男として描かれてる主人公コリンズも、最初は彼女の姉を好いてたとか、実は恋多き男だったようです。笑。そこが映画ではカットされてるのはずるいよねー。

彼の周囲では名前が残る恋人とされた女性は数人いて、お金持ちの奥様もいた。まあただのシンパで、イギリス側に追われてた彼を匿って援助してただけって話になっていますが。カリスマ性があると同時に女性にもモテていたのは事実らしい。逃亡生活を続けながらゲリラ戦を指示していたのに、最中もやることはやっていたと…。※男性とも親密だったバイ説もあるそーな…。

上でも書いたように『Resistance』のマイケル・コリンズは脇役だったものの、ハンサムで常に逃亡しつつも共和国のために戦う情熱的な若者的に描かれていて、恋愛話は全くなかったのですが、さりげなく史実通り(?)綺麗なおねーさんの元に匿われてるっぽいシーンはあった。笑。

まあ歴史に名前を残す男はやっぱりモテるってことで。アイルランドの歴史の話はシリアスばかりなので、たまには軽い話もしてみた。

忠誠の誓いの重さ