2023年は1月22日が春節だったそうです。そこから半月くらいが新年のお祝いの時期らしい。日本語だと旧正月です。昔はほとんど他人事でしたが、近年では日本でもニュースになりますね。中国人旅行客が爆買いしに来る時期として。今年は入国制限あるんだっけ。パンデミックのイメージもついちゃったりネガティブでもあったりしますけど。
まあいずれにしても、春節は中国人のお正月。ほとんどの日本人には関係ねー、みたいな他人事。私なんて割と最近まで節分と混じってて、旧正月=春節=節分だと思ってたのはここだけの秘密です。節分は立春でまた別なのだ。普通は知ってるって?
そんな風にアジア人ですら自国で祝わなければ全く興味ないし知らないというのにですよ。昨今は欧米のリベラルな人たちは、有色人種に配慮しようって流れになっていて、勿論アジア系の文化にも配慮しなきゃって意識が生まれてきてるので、メディアでも十二支(ウサギ年)と合わせて紹介されてたり、話題になってるみたいです。
今年はアメリカでは春節のお祝いしてるアジア人の多いエリアで銃乱射事件が起きてたので、余計メディアの関心も高かったのもある。
どんな風に『配慮』なのかというと、アメリカで聞いた中では2023年からカリフォルニア州では公式の州休日になったとか、それ以外の州でもアジア系が多い地域は学校も休みにしたりとか、何よりも「共に祝いましょう」って政治家とかも寄り添ってるとこ。パンデミックで急増した差別を受けてのアジア系支援の一環でもあるけども。
カリフォルニア州の議会法案第2596号に基づいて制定されてます。
AB 2596
https://leginfo.legislature.ca.gov/faces/billTextClient.xhtml?bill_id=202120220AB2596
AB 2596, Low. Lunar New Year holiday.
State Holidays
https://www.calhr.ca.gov/employees/pages/state-holidays.aspx
In addition to the above state paid holiday, effective January 1, 2023, the Governor proclaimed the following holidays, which may be taken in lieu of receiving a personal holiday.
Sunday, January 22 Lunar New Year
Monday, April 24 Genocide Remembrance Day
Monday, June 19 Juneteenth
Friday, September 22 Native American Day上記の州の有給休暇に加えて、2023年1月1日より、知事は次の休暇を宣言しました。
1月22日(日)旧正月
4月24日(月)アルメニア人虐殺記念
6月19日(月)ジューンティーンス/奴隷解放記念日
9月22日(金)ネイティブ・アメリカンの日
※上の通り州休になったのは旧正月だけじゃありません。ポリティカルなお休みの数々です。そのうち広島長崎の日も休みになりそうな勢いでは…。
それを受けて、「旧正月がカリフォルニアで初めて公式に祝われた」ってイギリスBBCが記事にしてる。
アメリカだとバイデン大統領は去年もメッセージ出してたらしいですけど、今年はホワイトハウスでレセプションまでしたってよ。
ひねくれ気分で読むと、春節祝わないアジア系は重視しないのかいとなる。←意地悪すぎる。
ちなみに日本も毎年総理が春節の祝辞出してますが、あれは基本は日中友好の目的があってやってるので、「日本で活躍されている華僑・華人の皆様」とか名指ししてたりするし、あくまでも中国の春節おめでとうなのよね。故安倍総理の時は「旅行客の皆さんお金落としに来てね」みたいにも見えましたが、これも互いにわかってやってるからいいの。
それがもし日本でも旧正月を祝うアジア系に配慮しましょう――とかまで譲歩して、例えば中華街のある神奈川県で公共の祝日にしたり、政治家がお祝いし出したら結構な問題になりそうな気がする。相互主義が崩れるからね。
なのでいくらアジア差別が増えてても、逆にアメリカは配慮しすぎじゃないんかってぶっちゃけ言ってみたら、うちの友達のアメリカ人は「アメリカは進んでるでしょー」と誉め言葉として受け取ってたのでスルーしておきました。うーむ。
配慮してるはずが失礼な
そういう流れがあるせいか、リベラルな人たちもアジア人を見たら知識を披露したいって思うのか。今年初めて某所で言われましたよ。「Happy new year!」って。
不意打ちすぎて一瞬「は?」ってなったわけですけども、ああハッピーニューイヤー、春節かと気づきました。日頃は外国人に「ニーハオ」って言われても「まあ中国人多いもんね」って受け流して怒らない私ですけど、ハッピーニューイヤーはなんかムカついた。ワタクシは異文化に配慮してあげてるのよみたいに受け取れてしまったのだね。
「メリークリスマス」って言われてムカつく異教徒の気持ちはこんなんなのかしらと初めて思ってしまったり。日本は宗教緩いから今まで日本でメリクリ言われてもなんとも思わなかったけども、自分のお祝いじゃないのを言われてムカつくってこういうことねと。
「やーい中国人」なら「ちげーわ」で終わるけども、なんていうか余計なお世話で余計に失礼になってるじゃんと。
それで思わず「日本は春節祝わねーよ(Japan doesn’t celebrate Chinese new year.)」って言ってしまったわけですが。要するにアジアに配慮してあげるワタクシに対して、「中国と一緒にすんな」「アジアはひとつじゃねーよ」って返してしまったわけで、微妙な気まずさが起きましたが。すぐに「そうなんだ」で相手は去って、それで終わりなエピソードでした。オチはない。
いきなりハッピーニューイヤーじゃなく、日本は祝うの?とか、どう祝ったの?とかなら私の気分的にはまだましだった気がする。答えは「日本は春節祝わねーよ」で同じだけども。笑。
しかしこの私の答え方も『異文化』に対して全然配慮が足りないのだ。
日本人には旧正月=春節=中国人がたくさん来る日になってるので、「Chinese new year」って言ってしまいましたが、実際そう書いてる人やメディアもあるので間違いではないのですが、中国以外のアジアの多くの国も旧正月を祝うのでチャイニーズだけの正月じゃないのだよ。
私こそ「中国と一緒にすんな」「アジアはひとつじゃねーよ」と怒られるやつ。
Chinese new yearじゃなくて Lunar new year
実際この『旧正月』の外来語での呼び方は、特に中国と韓国・ベトナム辺りの同様に旧正月を祝う同士では火種になっているそうで。韓国のアイドルが私と同じく「Chinese new year」って言ってしまって自国民に怒られたってニュースもありました。
韓国やベトナムやそれ以外の国の人からしたらうちの国でもお正月なのに。「中国のお正月」って言われたら「ちげーよ」って怒る気持ちもわかる。ごめんなさい。
一方で中国では、偉大なる我が国の影響を受けた周辺属国が我が国の発明した暦を使い春節を祝っているわけで『Chinese new year』が正しいって思ってるみたいですけども。何が属国だって周りは当然反発はするわけで、この辺の軋轢を防ぐため、英語では配慮の結果『Lunar new year』と呼ぶのが正解らしい。
これは今の日本が採用してる新暦こと太陽暦(Solar calendar; グレゴリオ暦、西暦)に対して、昔の日本や旧正月で使ってるのは月の満ち欠け周期に基づいた旧暦である太陰暦(Lunar calendar)だからってLunar calendarのNew yearをそのまま英訳してます。
と言いつつ、旧暦のカレンダーは厳密には太陰暦(ヒジュラ暦、イスラム暦)ではなくて太陰太陽暦(Lunisolar calendar)だから、『Lunisolar new year』じゃねって意見もあったりで、確かに英訳間違えてる気もする。しかし今のところは『Lunar new year』であります。
旧正月≠春節
同様に日本語でも、旧正月と春節も同じ時期ではありますが、春節は中華圏の呼び方なので、それ以外の旧暦の国のお正月にはふさわしくない。そっちは旧正月とかの方がいいのではと。まあより正確に言うなら韓国の人には現地で言う「ソルラル」と呼び、ベトナムの人には「テト」って読んであげる、みたいなのが正しい配慮かもしれない。
日本が旧正月を祝わなくなってムカつく?
日本人が「日本のお正月です(Japanese new year)」って着物やお節料理やお餅や和風の風景を紹介しても、新暦の他の国は「日本はそう祝うんだー」で終わる話です。
けども韓国が「韓国のお正月です(Korean new year)」として自国のお正月の紹介をすると、「Chinese new yearだろ」「中国由来の文化を盗んでる」とか言われて中国側に反発されるとかも(ネットでは)起きてる。特に近年は中韓の文化の起源問題がこじれてるらしい。「Chinese new year」って言ってしまうと自国民に怒られるし、「Korean new year」だと中国人に怒られるしって大変ね。
ベトナムもインドネシアやマレーシアもその他の旧正月祝う国も、それぞれ独自のお正月があるわけですが、それをアピールすると中国に起源あるからって言われてしまうのはやっぱりいい気はしないでしょう。
こういう旧正月を祝う国々と中国との対立とか、特に英語の呼び名で揉めてるのを見ると、タイトルにも書いたように「日本は新暦に変えてくれてよかったー」ってなります。
なんか言われても「うちは違うから」って部外者でいられるし。アジアにもいろいろあるって実例にもなるし。
しかしですよ。
「異文化にも配慮してマス」系のメディアでもアジアの『Lunar new year』を祝う国を紹介する際に、中国、ベトナム、韓国などと一緒に日本の名前を加えてたりして。そういうの見ると「ちげーよ」ってまたなるし。
2023年1月21日 ABC7 News Bay Area
What is Lunar New Year and how is it different from Chinese New Year?
※Lunar New Yearの部分もほとんど中国のお正月の説明でコメント欄では他の国の人も文句言ってた。笑。
上のカリフォルニア州で旧正月を祝うって法案に知事が署名したよってニュース記事でも『日系人』が含まれてたり。しかもそれがGoogleの強調スニペットに取り上げられてたり。
Goole検索して一番上に出てくるから、ぐぐった人はみんな日系人も祝うんだーって思うやつ…。てか日系アメリカ人の皆さんは旧正月祝ってんですか?←あまりにはっきり書かれてると、私が間違えてんではと不安になってくるやつ…。
更には、「いやいや沖縄の一部の地域とかではまだ旧正月も祝われてますよ」とかも言われちゃうし。そりゃあいるでしょうよ。七夕とかお盆だって新暦旧暦は地域によって違うし。大安仏滅とかの六曜は旧暦に基づいてるけど、いまだに一部では残ってるし。
けどさ、1月1日よりも旧正月を大々的には祝わないし、とりあえず元旦は祝日だけど旧正月は日本では祝日じゃないのであります。
それに一部の地域で祝ってるからあんたの国の正月だろって言うなら、アメリカやイギリスもアジア系の人たちが旧正月を祝ってるから『アメリカ・イギリスは旧正月を祝う国』ってなるはずだろと、揚げ足取り返すもんね。単純な人数と規模的には沖縄や日本の中華街で旧正月を祝う人より欧米のアジア系のが多いでしょうね。
まあそういう流れもモヤモヤするけど、更にモヤモヤするのはネットで結構遭遇する「かつて日本は中国の属国で旧暦だったのが、西洋文化に媚び売って西暦に変えた」みたいな(おそらく中国系の人の)なんとなくカンに障る説明とかね。日本が旧正月を祝ってることにしたい人の中にも、日本は中国の影響を受けてるんだって言いたくてあえて挙げるパターンもあるらしい。
まあこの辺はたまたまネットでぐぐったり旧正月関連のyoutubeの動画のコメント見かけただけで、私が面と向かって文句言われたとかじゃないですが、もし日本笑われたら、「もう日本にとっては『旧正月はOld new year』って言って過去のことよ」って言い返すけども!
※しかしこの旧正月の直訳の『Old new year』って言葉もユリウス暦を使う正教徒とかの祝う正月を指す用語でもあるそうで、英語だと別の意味になるみたいです。名称問題ややこしい。
日本は旧正月を祝わないから放っとけよ。と思っても、アジアの国として巻き込まれてたりする。
ついでに友達に日本のお正月を説明する時に、日本の正月では花火も爆竹も鳴らさない。日本の正月は静かなんだー!と違いを力説したことがある。まあ除夜の鐘はボンボンボンボンうるさいってクレーム来てる昨今ですが、花火は夏なのよと。ちなみにアメリカ人にとっては(場所によってはニューイヤーにもバンバン上げてはいるけども)花火は独立記念日のイメージらしい。
ところが十二支は『Chinese zodiac』だし、漢方は『Chinese herbology』
アジアの文化に配慮系の話では『Lunar new year』とセットで今年はウサギ年ですってのも紹介されてます。で、生肖(日本で言ういわゆる干支とか十二支の動物たち)の説明になるわけですが、これは英語だと『Chinese zodiac』です。中国の黄道12星座みたいな。なんか違う気するけども。
しかし十二支の動物は日本は言うまでもないけども、ベトナムや韓国にもあるそうで(日本のイノシシが中国では豚になってたり、一部の国では動物が違う)すが、今のところは『Lunar zodiac』とは言いません。
くり返します、旧正月は配慮で『Lunar new year』になりますが、十二支は『Chinese zodiac』です。ほら日本も巻き込まれてきたぞ。
「旧正月は中国以外のアジアも祝うからChinese new yearって言うのは正しくなくて、Lunar new yearよ」って言われてなるほどと思ったところで、でも「十二支は中国以外のアジアでも使うけどChinese zodiac」よって、なんでやねん!と。
日本人でもややこしいのに、アジアにどんな国があるかよく知らない・興味ない欧米の人は余計分からないって。やっぱ中国の仲間じゃんとなってしまうと。ここも中国と周辺国で争い起きたら英語名が新しくできるかもしれない。
ちなみに漢字も英語だと『Chinese character』なので、欧米の多くの人がアジアの区別がつかないと同時に「日本人も中国語を喋る」とか思ってるのは、この辺に理由があると思います。日本語勉強したことあるとか知ってる人は『Kanji』で通じますが。
それ以外では漢方も『Chinese herbology』と呼ばれてたり、日本語で『漢』がつくのは由来的にも中国から伝わってるので「Chinese~」って訳されることが多い。これも近年では差別化として日本のメーカーが日本の漢方薬を『Kanpo』って書いて普及させようとしてたりもするけども。
由来とはいえ今はそれぞれ別の国・文化なのに、やっぱり「Chinese~」でなにかとまとめられがちなところが、日本や周辺国が中国の一員にされてしまう理由かなと。そしてぶっちゃけ周辺国は中国と括られたくないから反発したり独自の呼び名を使おうとすると。
というわけで。
欧米のリベラルな人たちが、アジアへの理解として旧正月を祝ったりしますけど、英訳の仕方や説明によっては、配慮どころかアジア圏のさらなる火種や分断に繋がっているような気がします。それを実感したLunar new yearでした。