アメリカドラマの『電球ジョーク』に文化の壁を感じる日

アメリカドラマと書いてるけど、これはアメリカに限らず他国のドラマや映画、小説も漫画もみんな――を見ていると日本との文化の差異に気付くことも多いと思います。

時にはそれが憧れになったり(バケツサイズのアイスクリームが安いとか、羨ましい!)、日本にない習慣でよかったってホッとしたり(パーティーに恋人必須とか、外食も一人じゃしづらいとか、大変すぎる!)、驚いたり(食べ物ゴミ箱にポイしちゃうの?!)することも多いんではと思います。←たとえがほぼ食べ物ネタばかりってよ…。

 
そういうのはまあ見てて楽しいけども、今回はそうでもないパターン。とか言っちゃうと怒られそうですが。英語とかでドラマをよく見てて、他国のドラマで理解が難しいのは、言語の問題以上に、ローカルネタやお笑い、比喩とかに出てくる文化だと思ったりもします。固有名詞とかも何気に難しい。

どういうことかというと、ご当地ネタがふんだんに盛り込まれてると、英語の意味は分かっても内容の意味がさっぱりわからないってこと。アメリカで生まれ育った人には理解できる現地の流行りのネタとかが入っててアメリカ人にはバカ受けでも、その流行ネタを知らない日本人は置いて行かれる、みたいな。

例えばスター・ウォーズとか大統領とか政治ネタならなんとなくわかるけどさ、アメリカの現地コマーシャルネタみたいなのは、その辺チェックしてる人でないと笑えない、みたいなのよ。逆に数年越しでアメリカのテレビ見てて「あのドラマのあのエピソードはこのネタだったのか」みたいな元ネタに気付いたりもしたり。

    

私が好きなのはクライムドラマジャンルなのであまり笑いどころはないけども、コメディジャンルのドラマでローカルネタの笑いがふんだんなやつとかは、日本人には英語力に加えて別の問題でハードル高いのとかあったりするのではと思います。

全編そんなノリのドラマは笑いどころがないので日本公開されてなかったりもしますが。一部だけ分からないようなやつは日本語版だと、日本のローカルネタに『超訳』されてたりもする。アメリカのローカルバーガー店の名前が「マク○ナルド」になってたり。もしくは「ハンバーガー屋」って訳されてる、みたいな。

そしてそういう翻訳版・日本語版で見るたびに翻訳家の人の苦労を感じつつ、「このドラマは日本語版が出てて羨ましいよなー」と恨めしくなったりするのです。こら。私のは好きなドラマは日本語化されてないのばかりなのよね。だから英語で見てんだよ。

しかし、せっかく日本語化されて翻訳されたのを見たとしても、やっぱり笑えない。どこか楽しいのか分からないけど、何度か見たぞこのパターン、というのが今回の『電球ジョーク(Lightbulb jokes)』です。

 

電球ジョーク(Lightbulb jokes)とは何か?

ジョークと言うか日本語的にはなぞなぞなのかな。

基本は
「電球を交換するのに、何人の{ }が必要ですか?」って質問を出して、答えがギャグというかボケになってるってやつ。{ }内は無限のバリエーションがある。

元は1960年代からのアメリカでポーランド人への人種ステレオタイプのネタとして流行ったんだそうな。日本人にもわかりやすいのはこんな感じ。

Q: How many Irishmen does it take to change a lightbulb?
A: Two. One to hold the bulb, and one to drink until the room spins.

問:電球を交換するのに、何人のアイルランド人が必要ですか?
答:2人。1人は電球を押さえるための人で、もう1人は部屋が回転するまで飲む人です。

答えの「2」ってのは固定じゃなくて、もっと人数が多いのもある。要するに答えに意味はなくて、「アイルランド人はいつも天井が回るほど飲む=酒好きでいつも酔っぱらってる」って揶揄の話が主なわけ。そういう意味では大喜利的ともいえる。

電球交換てなに?とか、文章にすると変なのも、そこはただのテンプレだから。大喜利の「○○とかけまして、××と説く。その心は?」みたいなのの英語版(ほぼアメリカか?)なんじゃないかと。

 
日本人ネタのもあるよ。有名なのを貼るけど、先に言っとくよ。私に怒らないでくれたまえ。

Q: How many Japanese industrialists does it take to change a lightbulb?
A: Three. One to make sure the new bulb is not foreign, one to change the bulb, and one to look into the export potential of the old bulb.

問:電球を交換するのに何人の日本の実業家が必要ですか?
答:3人。1人は新しい電球が異質でないことを確認するため、1人はその電球を交換するため、もう1人は古い電球の輸出の可能性を調べるためです。

日本のビジネスの慣習とか意思決定のプロセスが遅くて細かいことを皮肉ってます。

 
もうひとつは――

Q: How many Japanese pilots does it take to change a lightbulb?
A: Zero.

問:電球を交換するのに何人の日本人パイロットが必要ですか?
答:ゼロ。=零戦で全員死んだってダブルミーニング。

もう一度書く。作ったの私じゃないから、私に怒らないで!

 
というように人種パターンは、ステレオタイプなんかをネタにしたこじつけの答えで笑うネタですが、人種ネタは差別を助長するってなって、昨今は職業とかが多くなってる様子。

 

Q: How many psychiatrists does it take to change a lightbulb?
A: Only one, but the bulb has got to really want to change.

問:電球を変えるのに、何人の精神科医が必要ですか?
答:1人。でも電球が本当に交換したいと望む必要があります。

これはほぼ同じ内容でドラマの台詞になってるけど、元々あるフレーズらしく、他のドラマでも見かけました。電球に交換してほしいか主体性を求めてる=精神科らしい言い回しって笑いのようですが、なるほどねとは思ったけどもあまり笑えない。何かと精神科とかカウンセリングにかかるアメリカ人には笑えるネタなんでしょうか。

ちなみにいつも答えは決まってて、精神科医の部分がセラピスト(therapists)だったり、職業にちょっとバリエーションがある。

 
一方で、いま日本のメディアで何かと話題な(?!)アメリカの弁護士バージョン。

Q: How many lawyers does it take to change a lightbulb?
A: Two. One to do it and two to sue him for malpractice.

問:電球を交換するのに何人の弁護士が必要ですか?
答:2人。1人目はそれを行うため、2人目は不正行為で彼を訴えるためです。

Q: How many lawyers does it take to change a lightbulb?
A: Three. One to change it and two to keep interrupting by standing up and shouting “Objection!”

問:電球を交換するのに何人の弁護士が必要ですか?
答:3人。1人はそれを交換するため、2人は立ち上がって「異議あり!」と叫んで中断し続けるためです。

これはアメリカの弁護士がすぐ訴えるのとかを皮肉にしてる。そして弁護士はネタにしやすいのか、上の精神科のやつと違って、答えが違うバージョンがいろいろ見つかる。

 
え、いろいろって、いろいろあるの?って感じですが、ほんとにいろいろあります。定番ネタも勿論あるけど自分で作れるからさ。どんなのかが知りたいなら「Lightbulb jokes」で、特定の職業とかのネタのバリエーションを知りたいなら「How many { ここに知りたい単語を入れる } does it take to change a light bulb?」で、それぞれぐぐると古くから最近のまで無限に英語圏のサイトが出てきます。

この電球ジョークはアメリカでは古典かつ定番ネタみたいです。私の友達もよく知ってた。

 
なので上の以外のアメドラでも、この形式の台詞はたまに出てきます。が、日本語化されてる時は大体「何人の { ここがネタ }が必要か?」「○人、だって○○だから」みたいにフツーに訳されて、ドラマ見てる側もフツーに台詞として聞き流してるんじゃないかと思います。

だってジョークって言ってるけど、ほとんどのパターンが日本人には(私には)別に笑えないんですもの。「電球を交換」ってフレーズを入れると、なんで電球がいきなり出てくるの?って元を知らない日本人には分からないから、そこが訳される時に省略されてたりもするので、電球ジョークと気づかないでドラマ見てるパターンもある。

 
勿論アメリカでも「ガハハ」ってバカ受けする系の笑いじゃなくて「クスっ」とする系みたいだけど。クスっともしなくね?と、これ見るたびにお笑い文化の差を感じるのであった…。まあ上で日本の大喜利みたいなものと書いたけど、あれもたまに滑ってるネタとかあるし、必ずしも笑えるわけじゃないから、そういうもんなんでしょうな。

そして裏返すと海外の人も日本のお笑いが分からないってのは多々あると思うので、海外で活躍してる日本人のコメディアンとかすごいと思います。

 
ちなみに警察バージョンもあるけども、昨今の差別ネタの皮肉が多いみたい。

Q: How many cops does it take to change a light bulb?
A: None. They just beat the room for being black.

問:電球を交換するのに何人の警官が必要ですか?
答:1人も必要なし。彼らはただ部屋が暗いという理由(黒人だというだけ)で叩いている。

これは電球がなくて暗いのblackと人種のblackをかけてる。警察はアフリカ系には理由なく厳しいって意味。精神科バージョンと同じくこれも答えは決まってて、細部が微妙に違うバージョンがいろいろあって、もっと物騒なやつとかある。

Q: How many cops does it take to change a lightbulb?
A: None. They’ll just shoot the room for being black

問:電球を交換するのに何人の警官が必要ですか?
答:必要なし。彼らはただ暗いから(黒人だから)部屋を撃ちます。

これは「クスッ」っと笑うどころか、ブラック・ジョーク(black joke)って感じなので、トリプルミーニングになってんのかも。ブラック・ジョークが差別語とかってのは抜きにして。

……というように、元の人種ネタは「くだらない」笑いですが、そこから進化して知的っぽいとか社会風刺にもなってるのが、いまだにバリエーションが増えてる理由みたい。

 
ドラマではないけどたくさん見てて、一番面白いと思ったのはこれ。

Q: How many Dragonball-Z characters does it take to screw in a lightbulb?
A: One, but it takes 6 episodes!

問:電球をねじ込むのに何人のドラゴンボールZキャラクターが必要ですか?
答:1人ですが、6話かかります!

ドラゴンボールにZってのがあるのは知らなかったけど、日本の少年漫画・アニメのネタ引き延ばしでの展開の遅さは理解できるのでなるほどって笑えた。※Zはアニメ版の名前らしい。

ただこれも元は

Q: How many graduate students does it take to change a light bulb?
A: Only one, but it takes nine years.

「電球を替えるのに大学院生何人が必要か」「1人だけど9年かかる。=なかなか卒業できない」みたいなのを改変してるようだけど。

やっぱり自分の文化に関わってるからこそ笑いが理解できるってことなんだろね。とするとこの電球ジョークの背景が分かってるアメリカ人はほんとにおもしろいと思ってる…のかも…。深い溝を感じる…。

※Amazonでシャツも売ってた。精神科バージョンは鉄板らしい…。