さて今回は昨今のニュースでいろんな人が思い出したんではないかと思うドラマです。昨今のニュースってなによ?って、アメリカ軍のアフガニスタン撤退とタリバンの支配ニュースとか。ニューヨークのビルに飛行機が突っ込んだ米同時多発テロから20年とか。まあ時系列的には、テロがあって軍隊が行ったので逆ですが。
なにしろこのドラマは、アフガニスタン侵攻中に死んだと思われていた戦争捕虜(POW, Prisoner of war)が8年ぶりに救出されてアメリカに帰還して英雄となる。一方でCIAは彼をアルカイダのスパイと疑っていて――みたいなとこから始まるので。
こういうニュースとか。
私がこれを思い出したのは、まあそんな時事ネタもあるけど『Peaky Blinders(ピーキー・ブラインダーズ) 』の新シリーズであり多分最後のSeries6が来年2月に公開かもって話題が先日出た→メインキャラのPolly叔母さん役のヘレン・マックロリー(Helen McCrory)が亡くなって話はどうなるのかな?→その旦那さんがこちらのダミアン・ルイス(Damian Lewis)って連想ゲームでありました。
なのでほぼダミアン・ルイスの出てる最初の方しかドラマの話してないよ。っていきなりネタバレしてんなよって、これがネタバレって思う人は知ってる人だからいいじゃんね。ってこういうの書いたら見てなくても気づくだろ。ってドツボです。
なんて書いてますが、海外ドラマのファンをやってると公開情報なんかとセットで役者さんのゴシップも目に入ってくるけど、基本的にはあまり気にしない方にしてます。だって撮影中に「誰と誰の仲が悪くなって片方降板」なんてニュース見たら、どこから仲悪くなったのかなって両者がいるシーン見るたびそっちばっかり気にしちゃうじゃん。まあそういう見方もあるけどさ。笑。
ダミアン・ルイスもイギリスの俳優さんで奥様はイギリスドラマに出てたわけですが、今回と同じShowtimeの『Billions』にも主演で出てるしアメドラで頑張ってます。シーズン5が再開したよ。父ちゃん出稼ぎして稼いでて偉いね――って余計なお世話じゃ、ドラマ見ろよ!って話になるじゃん。
大体役者さんとか一般人よりずっと稼いでるんだから、心配するなら自分の方だって…と、現実に返って生々しい話になってしまうので、ドラマを見る時くらいは、フィクションに集中しようと思ってます。
このドラマ『Homeland』はイスラエルで制作されたドラマをベースにその時の制作者がアメリカの会社で制作してるってことで、大雑把にはCIAの中東スパイ物語ですがシーズン重ねてモサドやロシアとかも出てきてる壮大な物語になってます。途中でメンバーが敵に捕まってたりもしますが、まあ偉大なるアメリカが正義って風に描かれてますな。
一方でイスラム圏からは抗議されたりイスラム教徒の描写が画一的とか文化を侮辱とか批判されたりもしてるそう。そしてこれとどのドラマでもそうだから、けなすわけじゃないんだけど、主要な事件のほとんどは自分たちの監視下で起こる都合いいとこも正直ある。敵も西側の価値観で動いてたり。
しかしまあ現実振り返ると、いざアフガニスタン撤退を決めたらあっさり首都奪還されてリアルタイムでタリバン制圧中ですよ。アメリカの20年てなんだったのって。現実の方がドラマより進んでいる昨今です。結局戦争に大事なのはスパイや個人のチマチマした活動よりも、ドカーンとでかい武器と武力だよと思ったりするよね。←スパイドラマ全否定かよと。
組織に関してもアメドラだと無敵なCDC(米国疾病予防管理センター)が去年も今年もマスクで右往左往する無能とバレたり(こらこら)、CIAもロシアの謎電波にやられてたり、中国のスパイに情報流されてたり、送ったスパイは暗殺されたり、現実はそこまで無敵じゃないことがニュースになってます。
むしろ「事実は小説より奇なり」とか言うように、現実の方がこええー。マイクロ波やべえー。けどこれ映像化したら地味になりそう。やっぱりドラマは演出ありきだなと。←ドラマも全否定かよと。
アメリカがアフガニスタン駐留した理由。911とアフガニスタン戦争
まずは背景のリアルの事件のお勉強。興味ない人は下の方でドラマの話してるのでスクロールどうぞ。
2001年9月11日にニューヨークのワールドトレードセンタービルに飛行機が突っ込んで米同時多発テロが発生しました。いわゆる911です。首謀者とされた『アルカイダ(Al-Qaeda)』の『ウサマ・ビン・ラディン』がアメリカの特殊部隊に暗殺されたのは10年後の2011年5月2日。
この時アメリカの若い子が「ビン・ラディンって誰?」ってSNSに投稿して大人がショック受けたってニュースを覚えてます。ビン・ラディンの姪がアメリカのグラビアで脱いでたのも記憶の隅に…ある…。
10年前でそれなんで、20年経った現在ではなおのことテロ自体も若い人は知らない・覚えてないって状況らしいですが、アメリカ本土を襲ったテロってことでリアルタイムを体験したアメリカ人には衝撃だったらしい。この事件以降のアメドラのクライムドラマジャンルだと、一度くらいはこのエピソードが出てきてたり。日本ではオウム真理教の地下鉄サリン事件が1995年3月20日に起きてるので、宗教テロって怖いなーって改めて思った人が多かったんではと。
テロの動機はビン・ラディンのファトワとされる内容によると、サウジアラビアに米軍を置いてたことやイラクへの制裁など、アメリカのイスラム諸国への度重なる干渉や攻撃が理由とされてます。十字軍にたとえて非難してる。
こっちが有名すぎて忘れられてますが、ビン・ラディンは1993年2月26日にも同じワールドトレードセンターの地下駐車場を爆破する『世界貿易センター爆破事件』を起こしてます。この時は1991年の湾岸戦争での米軍の干渉とかが動機だった。2度目なので彼が首謀者だってすぐに割れたわけ。
911では日本人も24人が犠牲になりました。私は日本の夜のニュースで見てましたが、ビルに飛行機が突撃して、更にはペンタゴン(アメリカ国防総省)やワシントンD.C.にもハイジャックされた飛行機が向かってるとか、リアルタイムで報道されてました。
後にはテロの犯人を巡っての都市伝説・陰謀論もいろいろありました。テロはアメリカの自作自演説、ユダヤ系の人たちは事前に事件を知っていて逃げてたってやつとかね。
9/11をゆがめたインターネット いたずらや陰謀論が拡散
https://www.bbc.com/japanese/video-58510850
上の記事でBBCが取り上げてないやつでは、マイクロソフトのWordって文書ソフトで『Q33NYC』ってタイプして、『Wingdings』って絵文字フォントに変えると、テロを予告したみたいな絵文字に変わるって話が当時盛り上がってました。若くてピュアだった当時の私も信じました。あほです。
飛行機とビル2棟、ドクロにダビデの星、GJマークと、これがテロを予言してるとか当時言われてた。私が日本で当時聞いたのはそれだけですが、そもそもの話としてアメリカでは『NYC』って入れると右三つが現れるのは、テロの前から「マイクロソフトが仕込んだ反ユダヤの印」って陰謀説があったそうな。大人になってスレた今見ると「だから何?」って感じよね。
そしてテロが起きた時に『Q33』はハイジャックされた飛行機のフライトナンバーって言われて予言扱いされて、日本にまで到達したと。しかし該当機のナンバーは全然違っていたので、変換後の画像ありきのこじつけだったんでしょうね。
当時はインターネットのコミュニケーションも今ほど普及してなくて、私は今はなきヤフー掲示板でリアルタイム情報を見たりしてました。今も投資掲示板は残ってるけどああいうツリー式のじゃなくて1投稿1ページ式だったので、数万ページにもなってたんだよ。
けども掲示板くらいしか情報がなかったのに、今思えばアメリカで(BBCによるとイギリスでも)言われていた陰謀説のほとんどは翻訳されて日本にも入って来てました。笑…っちゃいけないが。
[カシオ]CASIO 腕時計
スタンダード F-91W-1JF
※『ビン・ラディンモデル』とか言われたカシオのこの腕時計『F-91W』型も話題になりました。
彼以外のテロリストも若い頃のオバマ元大統領もつけている写真を撮られてる由緒正しきチープカシオ。安くて丈夫で正確な信頼の日本製なので、爆弾作る時のタイマーにも使えるらしい…。
と、ネタから入って真面目な話に進むと、このテロの首謀者『アルカイダ』とウサマ・ビン・ラディンがアフガニスタンを拠点とするところから、米軍のアフガニスタン侵攻は始まってます。当時のアメリカ大統領ブッシュがアフガニスタンを支配していたタリバンに彼の引き渡しを求めますがタリバンはそれを拒否。アメリカはアフガニスタンへ軍を送ったってわけ。
そして米軍は1996年から続いた旧タリバン政権を倒します。この1996年から2001年までのタリバン支配のアフガニスタンの国名は、日本名では『アフガニスタン・イスラム首長国』なんですが誰もそんな呼び方しないね。ちょうど先日、新タリバン政権が発足しましたが、また彼らはアフガニスタンに新しい名前つけるかもしれない。しかしきっと第二次タリバン政権とか呼ばれてしまうであろう。
「反政府勢力」となったタリバンはゲリラ戦とか自爆テロとか武力抵抗を続けます。不安定なアフガニスタン情勢の中、米軍含むNATOの支援組織・国際治安支援部隊(ISAF)はタリバンと戦い、新政権を支援して民主化を勧めたり、ビン・ラディンを探したりで居座ってた。
そして2011年5月2日に隣国パキスタンに潜入していたビン・ラディンを殺害し、当初の目的は達成。上でCIAを笑ったけど、パキスタン側の情報提供を受けて彼の居場所を見つけたのはCIAです。やることはやってる。テロリストを水責め拷問にかけて口割らせたとかCIA長官がテレビで言ってたが…。
それでISAFは撤退を決め、米軍も2016年末までに撤退するぞって言ってたのに、タリバンの勢力が強くなってきたから2017年まで延期ってオバマ大統領が言ってズルズル居座ってた。
けども次の大統領のトランプはこれ以上ムダ金使いたくないって、2020年2月末にアメリカとタリバンとの和平合意を締結して2021年5月までの期限で今度こその撤退を決めた。
その後大統領がバイデンに変わって撤退期限も8月末…やっぱ9月…とかまた言い出して、何度も延ばされてイライラしてたタリバンは(アフガニスタンの復興に尽力した日本に配慮してオリンピックの閉会を待ってから←勿論大ウソです)アフガニスタンの各地を次々奪還し、とうとう8月15日には首都制圧。
8月末には絶対って言っただろってトドメ刺されて米軍も他国の軍や支援者もみんな逃げだして、悪夢のタリバン政権の再開だってニュースになってるとこ。
日本は西側諸国側なので日本に来るニュースは欧米を通していることが多いので、どうしても「野蛮なタリバンを倒して民主化を進めた世界の警察アメリカと正義の仲間たち」といった報道になりますが、アラブ・イスラム諸国からすると、「アメリカは難癖付けて何かと干渉したり攻撃してくるウゼエやつら」になるわけで。
タリバン側からすると、曲がりなりにも政権取ってたのにいきなり攻め込まれて民主化とか望んでもないことで権力奪われて、ビン・ラディンがいなくなってもその倍の期間も居座りやがってなんだよとなると。女性の権利の向上や娯楽やスポーツなんかも、彼らの価値観だと西側のキリスト教的文化侵略・堕落になる。だから元に戻そうとしてると。
天然鉱物資源とかの利権狙ってんだろってのもあったりするし。実際ズルズル居座って米軍からも多くの被害者出したことはアメリカ国内からも批判出てます。
――と、これが2001年から2021年8月末まで続いたアフガニスタン戦争です。日本語のニュースだと『紛争』『侵攻』ってマイルドになってることが多いですが、英語だと大体『War』表記です。
戦争と紛争の定義の差って何かって、国際法だと国が当事者の争いとかってなってますが、軍事上とかだと各国で違ってたりする。アメリカの定義だと紛争の中でも大きなものが戦争だそうで、要するに一緒じゃんって…。
独立戦争みたいに大国に支配されてる側が蜂起するのは、大国側から見たり負けたらただの内部紛争って結果論なとこもあり。実際大国が「ただ内輪もめしてるだけ」ってもみ消す例もある。
こういう力の差があるのを『非対称戦争』って言って、今回のアフガニスタン(タリバン)と米軍ISAFとの戦いもこれと言われてる。なのでWarなのです。そして勝ったのはタリバン。アメリカの敗戦です。
アルカイダとタリバンの違いとテロ組織とは
実際のアフガニスタン侵攻では最初に狙ってたのはテロの首謀者『アルカイダ』のビン・ラディンなのに、『タリバン』が引き渡さなかったからって途中から相手が変わってることに気付いているでしょうか。
ドラマでも最初はアルカイダのテロリストを追っていたのに、シーズン4からはカブールに移動してタリバンと対決してる。
日本だとまとめて「簡単に人殺す怖いなんかやばいイスラム原理主義の人たち」って括りですが、両者は大きな違いがあります。現実のニュースを見ていれば区別されてるので、そんな今更ってくらいみんな知ってるかもしれないけど。
ニュースでは、アルカイダはテロ組織。タリバンはテロ組織じゃない。
のです。
分かりやすい記事を見つけたので貼ってみる。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021091000685&g=int
・過激派組織「イスラム国」
・国際テロ組織アルカイダ
・イスラム主義組織タリバン
納得しかけたけど、よくよく考えると、三者とも過激派組織だし、国際テロ組織だし、イスラム主義組織なのである。日本語って難しい。
ニュースだとアルカイダは『国際テロ組織アルカイダ』とか説明されます。一方でタリバンは『イスラム主義組織タリバン』とか『イスラム強硬派組織タリバン』とか。いずれにしてもテロ組織とは呼ばれてません。
ヤフーからいろんな配信の記事拾ってきた。
産経とNewsweekは一緒で他はそれぞれ微妙に違う呼び方してる…。何故統一しないのか…。
タリバンは上でも書いたように過去にも曲がりなりにも政権を取って国を運営していたわけで、その辺からテロ組織ではないという線引きでしょうか。
それにタリバンは攻めてきた人には武力攻撃し返しますが、他国へ攻め入って無差別テロはしてない。今も米軍が撤退すれば満足って言ってるし、侵略は興味ないって。とりあえず現時点では。その辺が『テロ組織』と呼ばれない理由かな。
とはいうものの、タリバン新政権に、アメリカが指名手配してる犯罪者がいるとかってニュースがあったけど、タリバンの中にアルカイダのメンバーがいたり、アメリカがテロリスト認定してる他のグループの人がいたりしてる。アメリカとタリバンの和平合意でも「アルカイダに攻撃させない」みたいな取り決めしてたり、タリバンがアルカイダの窓口になってる面もある。
『特殊武装集団』ってなによって感じだけども。アメリカではテロリストだけど日本では認定されてないからこういう曖昧な書き方になっているんでしょうか。産経だと『最強硬派「ハッカニ・ネットワーク」』って書かれてた。やっぱバラバラ。
ちなみに『ハッカニ・ネットワーク』を作ったのは、記事のテロリストとして指名されてるシラジュディン・ハッカニ師(Sirajuddin Haqqani)の父ジャラルッディン・ハッカニ(Jalaluddin Haqqani)。ドラマでも同じ苗字のやつが出てきてたので、この家族がモデルかもしれない。単によくある苗字なだけかも。
ISも『イスラム国』って名乗ってるくらいなので、本人たち的には国と政治組織のつもりかもしれないけども、成立当初にアルカイダに忠誠を使ってテロに突撃してるので、『テロ組織』として国際的に監視対象になってます。が、ニュース記事だと大体は『過激派組織』だね。
※ここはニュースでも前は『イスラム国』って言ってたけど、イスラム圏からクレームが来て避けるようになったので、何て呼ぶか取り決めしてある程度統一されてる。
このアルカイダ・タリバン・ISはニュースでもよく出てきますが、タリバンとISは仲が悪いとされてる。ISはタリバンの制圧したカブール空港を爆破してたり現在進行形で邪魔してる。タリバン政権の目指すものは、多分彼らの理想とは違うんであろうね。
とか書きつつ。
しかし日本の公安はタリバンもアフガニスタンのテロ組織としてカテゴリしてるのであった。。。
勿論、アルカイダやIS、ハッカニ・ネットワークも別ページに載ってます。
結局みんなテロ組織なんかい!と。
つまり、少なくとも日本のニュースでは、『テロ組織』って言葉はできるだけ避けてて、アルカイダみたいに「明らかに海外でテロ活動しました」って組織以外は、『過激派組織』『武装集団』とか別の言い方してるようです。しかしそこが統一されてないので、各自思い思いにネーミングするフリーダム状態になってると。
そもそもテロって何よって、また定義の話になりますが。少なくとも日本では下線部分のこれです。
警察庁組織令 | e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=329CO0000000180#Mp-At_31
(国際テロリズム対策課)
第四十条 国際テロリズム対策課においては、次の事務をつかさどる。
一 外国人又はその活動の本拠が外国に在る日本人によるテロリズム(広く恐怖又は不安を抱かせることによりその目的を達成することを意図して行われる政治上その他の主義主張に基づく暴力主義的破壊活動をいう。第四十二条第三号において同じ。)に関する警備情報の収集及び整理その他これらの活動に関する警備情報に関すること。二 第三十八条第二号並びに前条第二号イ及びロに掲げる犯罪その他警備犯罪で前号に規定する活動に関するものの取締りに関すること。
実際は解釈が分かれたりするし、テロ組織の明確な定義ってないんだな。とりあえず分かりやすいのは、国にテロ組織として認定されてるかどうか。とはいえ日本と他の国では法律も違うので、海外だと定義もまた違ってきたりします。
ドラマにもちょっと出てきてた『ヒズボラ(Hezbollah)』はレバノンのイスラム系原理主義団体で、日本やアメリカなどでは『テロ組織』ですが、ロシアはテロ認定してない、とかね。ヒズボラは反イスラエルであり反米でアメリカ大使館とかの爆破もしてるので、ロシアは静観してんだろうね。
もっと極端な例で言うと、『Munich(ミュンヘン)』のところで書いた、オリンピック中に選手村のイスラエル選手を人質に取ったミュンヘン事件のパレスチナ側の過激派『ブラック・セプテンバー』は、民間人の選手殺してるし西側諸国には(私の感覚でも)テロリストですが、アラブ諸国は英雄と見てて、犯人の亡命を受け入れたリビアでは祝賀会や記者会見が開かれました。
今回の『Homeland』でも、アメリカのテレビで彼らをテロリストって言ってるのを見て怒ってるシーンがあったけど、イスラム原理主義の人たちはイスラム法にのっとって正義の戦いしてると信じてるので、自分をテロリストだとは思ってないし、むしろアメリカがテロ国家だと思っている。
※勿論、こういう極端なのは原理主義者や過激派組織の人たちの話。
更に歴史上は勝てば正規軍、負ければテロ組織って身も蓋もない結果論もある。これも戦争か紛争かと似てるけど。だから自らの正当性をアピールするプロバガンダが大事なんだね。
そして、組織だとややこしいけど、人に対するテロリストって用語は多少はわかりやすくて、ただ無差別殺人を起こしてもテロリストではないけども、政治やイデオロギーの主張を元にそれを行うとテロリストになる。
ようやくドラマの話。ネタバレあり
『Peaky Blinders』でもIRAネタで脱線しまくりましたが、世界の歴史や過激派組織の話は楽しいよね。リアルじゃ関わり合いたくないけど。え、私以外誰も興味ないって?……というわけで今回も散々脱線した後に、最後におまけみたいにようやくドラマの話です。
タイトル『Homeland』は日本語に直訳すると『祖国』とか『故郷』とか。壮大です。一方『ホームランド』ってカタカナにすると響きが軽いんですけど。ホームコメディとかホームドラマとかホームランとかそんな単語が浮かぶから?英語だと日本語みたいにそれなりに重い感じなんでしょうか。
まあこのドラマの場合は『The Department of Homeland Security(国土安全保障省)』ってテロ対策機関のダブルミーニングみたいですが。
ドラマは一応完結してて1シーズン12話×全8シリーズの96話。日本でもあちこちで配信されてたり、日本語版DVDも出てたり、至れり尽くせりなのでみんな見てね。
私はこのドラマは何シーズンが放映された後から見始めて、日本語版だったり英語版だったりまぜこぜで数年越しで完走したけれど、間が空いてて正直、記憶が曖昧なとこがある。今回最初から見返してるわけですが、名前とか忘れてるのもあったり。
粗探しする気はないので、イラクで金髪のチャラい若い姉ちゃんがイスラム側の若い男を情報提供者にしてる1話の最初を見た時点で嘘くせーって思った、なんて正直なことは…言っちゃうよ。始まって即話が終わっちゃうけど。ポリコレより宗教の方が強いと思うなあ…とか。まあドラマだよ。
自爆テロってのも、イスラムテロ=自爆ってイメージを入れたかったんだろうなとか。と、これはシーズン1ですが、けなしてるわけじゃなくてツッコミ入れつつ楽しみました。Carrieの情報提供者とか協力者って次々死ぬよね!とかさ。その後のシーズンも荒唐無稽も含めて面白かったです。
ただ最初はSergeant Brodyが主人公のドラマだと思ってました。捕虜になってた軍人の彼が8年ぶりに帰還したけど、夫が死んだと思ってた妻は親友とデキてるし、子供たちはそれなりに育ってるしで居場所がなくなってる。
ちょっと浮いた感じからの、赤毛で(役者の地毛だしイギリスの人ですがアイルランドに多い)母のアイリッシュシチューが好物で、夕飯にお祈りしてって典型的なアイルランド系ですアピール(つまりカトリックって言いたい)からの、ガレージでこっそりマット敷いての「Allahu Akbar」のイスラムのお祈りシーンとか。
一方、アメリカ捕虜が寝返ったって情報聞いてたCIAの女捜査官Carrieは彼がテロリストだと疑って、Brodyの家に監視カメラ仕掛けまくったりプライベートでも親しくなって情報探りつつヤってるし。と思えば権力選んだBrodyは彼女をあっさり捨てちゃうし。
この時のシーンでは、カトリックからムスリムになったBrodyにCarrieはシャンパンだかワインだか酒を手渡そうとしてたのが配慮なさ過ぎです。振られて流しに捨ててたけど。
まあ原理主義組織の元にいた割にはBrodyさんも割と戒律ゆるゆるに行動してますが…。彼女とバーにも行ってたし、ビールとかも飲んでたし。何よりソーセージ焼いてたし。世を忍ぶ仮の姿だよ。
英語版で見てると、ロッジで一晩過ごした後に問い詰められて改宗認めた数分後の会話で「No. Jesus」とかも言っちゃってるし。まあこのドラマ元々「Jesus」「Oh, God」とかみんな言いまくってんだけど、私はアメリカ人に英語圏のイスラム教徒は驚いた時とか「Jesus」とか「OMG」とか言うのか思わず確認したし。彼らはキリスト信じてないし、慣用語でも気にするから言わないはずって答え。
なのでこういうゆるゆるシーンはあえて何か意図があるのかとか、イスラム教徒になったふりしてて実は違うとか無駄に深読みしてました…。
英語の話ついでにもひとつ書いとくと、奥さんは不倫相手のことは「Mike」って名前で呼んでるのに、夫をずっと「Brody」って苗字で呼んでて(フルネームだと夫Nicholas Brodyで奥さんはJessica Brody)、自分も同じ苗字じゃないのかって謎だったけど、これはアメリカの軍人家族ではよくあることらしい。
Showtime『Homeland S01E03』
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アルカイダのAbu NazirはBrodyを「Nicholas」って名前で呼んでたので、こっちの方が距離が近く見えちゃう。そういう意図も出してたのもしれない。
娘が母をたまにMaって呼んでたのは、単にキャラクターの喋り方ってだけかもしれないけど、アイルランドルーツっぽさ出してたのかもしれないとも思った。→『Love/Hate [2010-2014 RTÉ] 【後編】ドラマで見るアイルランド(ダブリン)英語&スラング講座?!』の11番目参照…。
Brodyはほんとにテロリストなのか。死んだはずの仲間の方?いや違う。というドキドキありつつの、家族や恋愛のドロドロ話。
そう思いきや、Brodyやっぱテロリストでした。アメリカで議員になって活動続けます。からの正体バレ。娘の恋愛話とか妻の再不倫とかで家族壊れて、彼もCarrieを選んじゃうし。正直このネタでシーズンいくつも引っ張るのかよって思ったら、イラクで殉教してるし。というわけでシーズン3でBrody途中退場して最初に書いたネタバレにつながると。
この辺ももしかしたら、このドラマの当時は欧米から改宗してISに参加してしまう若者がニュースでも話題になっていたので、イスラムテロリストになると悲惨な結果になるんだよというメッセージもあったのかもしれない。
そして知る衝撃の事実。
嘘くせーから始まって、Brodyのストーカーからの不倫相手になってるし彼の家族壊すし、仕事捨てて彼に走るし、頭おかしい…と思いきや本当にお病気設定で家族の薬もパクりまくってるわ、ヒステリックで切れまくりのウゼー女のCarrieの方か主人公であった!
知ってからドラマのOP見返すとCarrieのが目立ってるので、最初から彼女が主役だったらしい。みんな気づいてた?
シーズン初期は両者とも主演賞取ってたから途中までは両方主演だったのは確か。まあ途中でメイン交代とかはアメドラあるあるだけど、そもそも主演て何よってね。今回はいろんな言葉の定義を考える回である。
私は今はアメリカの配信で見てますが、日本のDVDとかも同じデザインだよね。最初はBrodyの方が目立ってたのに、だんだん追いやられて消えてく…。笑。
※10月5日追加。とか言ってたら『Billions』でも現Series5で…。ぎゃー!←よそのネタバレすんな。
お国柄と思ったのは、日本だと明らかな遺伝要因の病気以外は差別を助長しないようにとかで、現実でも創作でも遺伝って簡単に言わないけど、アメドラだとその辺の配慮はあまりないよねとあらためて思ったり。他のドラマでも家族で同じ精神疾患の設定見たことあるし。これは予防切除とかが進んでる国だから?とか思ったけど、イギリスドラマでも父がBipolar(躁鬱)で息子が同じって設定があったりしたので、単に配慮の向け方が違うだけかも。
※一般によく言う「ガン家系」なんてのも、家族は似たような食生活だからとか他の要素もあるそうで、単純に遺伝とは限らないんだそう。私も母と祖母が甲状腺ガンになったことがあって、遺伝するかお医者さんに聞いたら「かかりやすくなる体質は受け継いでる可能性があります」って遠回しな返答だった。それが遺伝じゃないんかい?って思ったけど、医学的な遺伝は明らかに受け継いでるものなので、一部でそういうガンもあるけど、ほとんどは医学的な定義の遺伝ではないらしい。脱線。
その後はCarrieはCIA辞めたり復活したりしつつBrodyの子を産んでアフガニスタンへ行ったり、命狙われたり主人公らしくなってます。
なんかネット掲示板でウイルスもらってハッカーにキレるギャグなのかってネタもあったよね。そんなCIA嫌すぎんじゃん。インターネットネタはロシアの暗号みたいなストーリーにつながって、彼女はさらわれてたけども。
見てるうちにウザさには慣れて来ましたが、妄想って言うか女の勘ていうか謎のこだわりで突っ走って、説明がないので見てる側が置いて行かれてる感は否めなかった。笑。
Brodyの方は行動理由が説明されてて分かりやすいし感情移入もできるけど、彼女は違う。感情移入するキャラというより突っ込み入れたくなるタイプの主人公だね。みんなも画面に突っ込み入れまくって見よう!