【後編】『主人公』と『聖母』と『魔性の女』テンプレで遊ぶ

前回はノワールの定義(曖昧)と、ノワールによくある『主人公』と『聖母』と『魔性の女』のテンプレを実際の映画を元にして説明してみました。それと同時にノワールが廃れた理由――女性の描かれ方が残念ながら時代に合ってない点も書いたり。

個人的には悪役とか好きなのに、そういうのも偏見を生むって言われちゃうのが悲しい。まあそもそもアンハッピーエンドの暗い話が受けないってだけでもありますが…。そっちのが大きな理由な気もしますが…。

【前編】ノワールによくある『主人公』と『聖母』と『魔性の女』とは?


 

テンプレちょっと復習。

細かいところは前ページに書いたけども、一応おさらい。

  • 主人公:基本的に男前。ハンサム。優男(これも死語か)。なのでモテる。仕事の腕はいいけども社交的ではなくて、頑固だったりこだわり持ってたりするけども、奥さんはそれを理解して受け入れてくれるみたいな。まあ一昔前の男性の理想のタイプだったりするね。美女の頼みを聞いて、危ない橋を渡ったり犯罪に手を染めたりもする。なので正義の味方ではない。
  • 聖母:妻か恋人。主人公を慕う従順な女性。幼馴染だったりすることも。これも一昔前のテンプレなので今時はこんなキャラ出したら怒られたりもしますが、これも男性の理想のタイプなのかな。聖母っていうのは主人公を無条件で受け入れてくれる『母性』の象徴みたいなところから。いい奥さんになりそうなタイプってやつよ。
  • 魔性の女:聖母に対するのがこちら。ワイドショーとかで不倫略奪する女性とかも『魔性の女』って呼ばれたりしますが、カタカナだと『ファム・ファタール』です。やっぱりフランス語の『femme fatale』から来てるそうな。

    こちらは欲望に貪欲で悪いこともするし性的にも開放的だったりして、色仕掛けで男性を誘惑して思い通りに操って破滅に導く女性。若いと『小悪魔』とかも言う。単独で魔性の女キャラが出てくる創作も多いし、このパターンの美女は割と人気だし私も好きですが。こっちは男性にとって火遊びしてみたい理想のタイプではあるのかね。

 

ここからが応用編。

テンプレ設定が分かったところで、じゃあ役割を変えたらどうなるのかって話が後半。

・男女逆にしてみる。

女は男のサポートじゃダメ、同じように活躍させろ。なら男と女の役割をひっくり返せばいいのかって?はい、そうです。男女反対にしたやつは今も現役でよく見かけます。日本の創作にもよくある。

例。同期の平凡君と結婚するつもりだったヒロインの前にハンサムでお金持ちの運命の彼が現れて、平凡君と天秤にかけつつも、運命の彼に惹かれて翻弄されてしまう――みたいなパターンとか。まあ古典の『金色夜叉』も視点変えたらこれです。

普通に少女漫画、昼メロとか恋愛物の王道パターンですな。ハーレクイン物語にもありそうだからワールドワイドな乙女の好みであろう。破滅はせずにハッピーエンドが多いところがノワールとは違うけど。まあこういう改変だと『恋愛物語』になるのでジャンルの違いってのもあるかも。

 
さてここでの一番のポイントは、男性を翻弄する美女は『魔性の女』だけど、女性向けだと『王子様』よ。彼女を平凡な世界から救い出してくれる救世主になったり、役割も正反対なのです。まあ平凡な生活に満足してたヒロインを危険な世界に引きずり込む『魔性の男』――みたいな世界もないとは言わないけども。昼メロはこっちかな。

いずれにしても女性向けだとヒロインが受け身になりがちなので、厳密に言ったらフェミニズムとかでは固定観念にとらわれてるってなるかもしれないけど、とりあえず今でも人気よね。

 
そういう意味では女は女向けには甘いとか男性からの批判もされそうだけど、男性向けの恋愛話でも幼馴染と何となくの関係続けてたところで美(少)女が登場して――的な三角関係物はよくあるので、平凡に満足しかけたところに現れた刺激的な異性とかないものねだりは不変なのかも。

上の『金色夜叉』の逆バージョンで、恋人とつつましく暮らしてる平凡なサラリーマンが重役の娘さん(美人)に惚れられて、出世のために乗り換えてしまう、みたいなのもビジネス漫画にありそう?北野映画の『Dolls』もそんな話だったけど、これは聖母と男を破滅させる美女が一体なところが日本的かつ少しひねってあった。

ついでにこれが特定の美男・美女だけでなく、たくさんの美女・美男・性別不詳に好かれる系だと『ハーレムもの』とか言われてますな。こっちは男性向けの方が多いんではないかと。

 
・聖母と魔性の女を交換する

ちなみにノワールのテンプレのモテる男性と彼を受け入れる聖母的な恋人、ある日現れる魔性の女のテンプレの、女性の従順と奔放を反対にすると――。長く付き合った恋人との腐れ縁にはもはや刺激を感じずにマンネリ化してるところへ、無垢でおしとやかで従順な美女が現れた。みたいな展開になります。

なんとなく年齢制限必要そうな話になりますが、アダルト抜きで主人公に好意を持ってるお姉さんキャラと、後から現れた後輩キャラみたいにすると、少年漫画でもある感じ?

そんなん物足りないよって人は、無垢な美少女にあれこれ教え込む――とかの方向性に行っちゃうと、あかんです、ロリコン変態物語になってしまいます。違う意味でノワールだ。他人様の性癖には文句言いませんけども、二次元だけにしといてください。

こういうのも、全能者の男性が思い通りに無垢な女性を育てるって男に都合いい話って批判されたりもします。逆に無垢な男の子がお姉さんに教えてもらう系とかも嗜好としてはあるけども、それもやっぱり批判あったり。要するに何でも批判はできる。

そしてそういう声を色々と取り入れていくと今時の創作者は何を描いていいのか分からなくなるかと思いますが、やっぱり行きつく先は全員平等に出してやるよ、でスーパーヒーローなんだろね。恋愛話でスーパーヒーローものは、ただの乱交ってやつになってしまう気がするんですが…。

 
……と、アホな話ばかりですが。『主人公』『聖母』『魔性の女』のテンプレを少しいじるだけでも、結構どこかで見たような話がたくさんあると分かったかと思います。これ要するに、三角関係の基本設定でもあるから。正反対の異性にモテてどちらを選ぶか悩むってのは、みんなが憧れる展開であり、ドキドキハラハラでまあ売れる話のテンプレなので、どうしても多用されがち。似たり寄ったりになりがち。

よくある勇者の冒険話も、大体キャラの配置がパターン化するのはそれが鉄板で受けるからだよ。

別に自分が創作する人じゃなくてもこういうパターンやテンプレを知っとくと、映画とか漫画とか見ていて、これもあのパターンだとかいろいろ分かって面白いです。そしてそういう創作の基本の話でもやっぱり、アンハッピーエンド、暗い話は売れないって言ってるよね!

実際、ノワール小説なんかも読んだ後「後味悪くて切なくて面白かった!」って私は気に入ってアマゾンのレビュー見ると酷評、あれ?みたいな。世間とのギャップが…。

不幸ネタ・ノワール、観た後に気持ちがどんよりするような余韻を残す陰鬱な話が人気の時代が来てほしい。←一生無理。

  

平然と殺人を犯すような主人公はまずい
結末がおもしろくなければ失敗作とみなされる
読者はハッピーエンドを好むものなのだ

※クーンツ先生の言う『売れる設定』は私の好みを全否定してる…。