『原発事故を問う』補足 1994年NHKスペシャル『チェルノブイリ・隠された事故報告』

『Chernobyl(チェルノブイリ2)』『Chernobyl(チェルノブイリ3)』でドラマとの比較の参考文献として使わせていただいた『原発事故を問う』には、ほぼ元の映像と言えるドキュメンタリーがありました。『チェルノブイリ・隠された事故報告』という1994年のNHKスペシャルです。私も今回「本の内容と同じ映像がある」って教えてもらって知ったんだけど。

このドキュメンタリーでは、墓地でのアキーモフとトプトゥーノフの両親、シュテインベルクやゴルバチョフ元書記長の証言など、本に書かれていたことがそのまま映像化されています。というか時系列的には、映像を本にまとめたのが1996年発行の『原発事故を問う』でした。

 
トプトゥーノフの母親の、この発言もほぼそのまま出てきます。文字だけでも泣けるのに、息子のお墓の前で泣き崩れてる映像見ちゃったらもっとつらい。

『原発事故を問う』
「苦しんでいる息子の枕元で私が「リョーニャ(レオニードの愛称)、がんばって生きるんだよ」と声をかけると、あの子は、痛かったはずの手を動かしながら、「いつも、ありがとう」って言うんです。それで私が「どうしたの」って言ったら、急にあの子は「ママ、僕はすべてマニュアルどおりにやったんだよ。マニュアルから外れたことは一度もないよ」って言うんです。「ほかのことは何もやってないよ」って。私はあの子の苦しんでいる顔を見て、話をするのをやめました。それから、あの子は意識がもうろうとするなかで、操作盤のボタンを押す仕草をしていました。横になったまま、指で押していたんです」

『チェルノブイリ・隠された事故報告』
Chernobyl - Leonid Toptunov's mother and son

 
トプトゥーノフの息子も映ってる。一生懸命パパのお墓の掃除してて可哀想だけどかわいい。今は大人になってるだろうけど。

『チェルノブイリ・隠された事故報告』
ソ連原子力産業安全監視委員会・ニコライ シュテインベルク
1991年の彼らの報告書によって、運転員の規則違反説は否定されました。

Chernobyl - Nikolai Steinberg - a Commission to the USSR State Committee for the Supervision of Safety in Industry and Nuclear Power

 
(たぶんアキーモフ・トプトゥーノフの)病院での実際の映像や、ディアトロフの裁判の映像も出てきます。IAEA会議でのレガソフの演説や制御棒の欠陥を隠した経緯と政治的なやり取りも、関係者たちのインタビュー込みで映像がありました。

一方で『原発事故を問う』の冒頭に出てきたストリャルチュウク・キルシンバウム・ディアトロフたちのインタビュー等、ないものもある。なので本も買って損はないよ。

『チェルノブイリ・隠された事故報告』
裁判でのディアトロフ。HBOのドラマと違って実際は部下も庇ってる。
chernobyl 1994年NHKスペシャル『チェルノブイリ・隠された事故報告』

 
ただしこれはDVDどころかビデオ化もされてない。今回、このドキュメンタリーのことを教えてくれた人にビデオダビング映像を見せてもらいました。なのでブレブレである。上の画像はそれを更に撮ってきた。←違法。一応ノイズ除去したけど、歪んでる。

※同じく『Chernobyl(チェルノブイリ2)』『Chernobyl(チェルノブイリ3)』でPDFを紹介させていただいた今中哲二先生のWeb記事でも、上のドキュメンタリーのIAEAやアメリカと旧ソ連との政治的取引に触れてるのがあった。

京都大学原子炉実験所(現・京都大学複合原子力科学研究所)
原子力安全研究グループ
チェルノブイリ原発事故の原因の見直し
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/JHT/JH9605A.html

 86年報告によると、原子炉の出力上昇に気付いて運転員は、手動スクラムボタン(AZ-5)を押したが、時既に遅く暴走を防げなかったということになっている。

 しかし、1994年1月にNHK特集「チェルノブイリ:隠された事故報告」でも放映されたように、IAEAや米国代表団は、本当の原因を追究せずチェルノブイリ原子炉の欠陥を公けにしないということでソ連代表団と取引きをしていたのであった。

このWeb記事では、事故原因の変遷や、6つの規則違反の内容も「でっち上げだった規則違反」として分かりやすく説明されてます。

 
『Chernobyl(チェルノブイリ3)』の最後で私は「『原発事故を問う』の当時のインタビューなど、日本語で埋もれているものも英語に翻訳して世界で読まれるべき」って書いたけど、画質荒くても映像の方が更にインパクトはありました。本と共に、こっちも英語字幕もつけて世界へ公開すべし。これはもはや世界の財産である。

というか時系列的にもHBOドラマ『Chernobyl(チェルノブイリ)』の第6話扱いとしてそのまま流していいくらい。←無茶言うな。

でももう放映から25年も経ってるし、今となってはどこで見られるか分かりません。本の著者であり、このドキュメンタリーの製作者の七沢潔氏の所属する『NHK放送文化研究所』にDVD化or配信の要望を出せばいいのであろうか。

NHKもぜひ再放送すべし!

おまけ
ちなみにシュテインベルクさんは今もご存命のようで、『Midnight in Chernobyl』では2015年のインタビューの内容が参照されていたけれど、翌2016年にアメリカの大学でチェルノブイリ事故の講演をしている動画もありました。ほとんど姿が見えないけど…。他でも公演していたり、今年には共著で本も出したりしている様子。

Virginia Tech: National Capital Region (英語)
SIREN: Nuclear Disaster Response at Chernobyl – Nikolai Steinberg
https://www.youtube.com/watch?v=gliWZOkzkso

IMDbのページもある!
IMDb – Nikolai Steinberg

Chernobyl: Past, Present and Future
Nikolai Steinberg, Georgiy Kopchinsky
2019/8/28

彼がこうやって活動していることからも、やっぱり海外では近年でもチェルノブイリの事故への関心は高いんだと思う。