Chernobyl チェルノブイリ ドラマの概要と感想

今回は今年5月に公開されて高評価をつけたHBOの『Chernobyl(チェルノブイリ)』。各話約1時間の全5話で、チェルノブイリ原発事故のドラマ化です。このドラマのヒットを受けて、実際のチェルノブイリ観光ツアーが大人気ってCNNのニュースも見ました…。私はアメリカの配信で見ましたが、日本ではまだ未公開なので話のネタバレはしません。と言っても筋は実話通りなので、タイトル言うだけでネタバレと同じなんだけど…。

でもただのドキュメンタリーじゃなくてドラマなので、実際は見てのお楽しみ。日本では『BS10スターチャンネル』で9/25に初公開されるそうです。そして翌日9/26に『Amazonプライム』でも…。

配信が見られない人は、日本のAmazon.co.jpにはまだ来てませんが、英語版なら「DVD&Digital」or「Blu-ray&Digital」版がAmazon.comに売ってます。英語字幕は付いてます。
https://www.amazon.com/dp/B07SYZPDB8/

そのうち日本語版も出るんじゃないかな。

日本でも全話公開されたようなので、実際の文献を使ってドラマと史実を超真面目な検証した記事をアップます。あらすじは書いてませんが、普通に結末まで検証してるので、ネタバレしてます。ドラマを見た人だけ見てください。超長いです。

『Chernobyl チェルノブイリ2 ネタバレあり・ドラマを超真面目に検証【前編】規則違反か欠陥か』
『Chernobyl チェルノブイリ3 ネタバレあり・ドラマを超真面目に検証【後編】嘘の代償』

おまけ(上で使った参考文献のドキュメンタリー映像を発掘しました)
『原発事故を問う』補足 1994年NHKスペシャル『チェルノブイリ・隠された事故報告』

  
私は何で見たかっていうと、『The Game』のBobbyことポール・リッター(Paul Ritter)が出てたから。髪の毛薄いおっさんなので全くハンサム枠ではないよ。笑。今回はスーツも着てたけど、実在した原発副技師長アナトリー・ディアトロフ(Anatoly Dyatlov)役なので料理人みたいな白い帽子に白衣の作業姿が多かった。←なんつー適当表現。

HBO『Chernobyl S01E05』
Chernobyl チェルノブイリ

 

更に旧ソ連ということで、私の好きなロシアンアクセントもたくさん出てきそうで楽しみだった。ロシア語自体はさっぱり分からないけどあの響きが好きです。自分ではできないあの巻き舌に憧れる。笑。実際はイギリス俳優だらけでみんなイギリス英語だったけど。

でもたまにロシア語台詞が出てきたり、テープ包んでた新聞紙とか看板とか小道具はロシア語だった。原子炉の緊急停止ボタンも『AZ-5』って呼んでるのに、映像ではずっと『A3-5』だったのは何故?と思ったら、実はこれも数字の『3』じゃなくキリル文字の『З(=英語のZに相当)』だったとか。英語で話してたけど画面上はあくまでも旧ソ連なのでした。

とか書いてるとふざけてんのかって言われそうですが、勿論、原発事故の実話ベースのドラマってことで、日本人としてはやっぱり気になって見ました。と三番目にしてようやくまともな理由を挙げてみる…。

実際の事故についておさらい

『チェルノブイリ原子力発電所事故』とは、冷戦下でゴルバチョフ政権時代の1986年4月26日に旧ソ連(現ウクライナ)で起きたレベル7の原発事故です。ちなみに福島第一原発事故もレベル7です。この2つが現時点の世界二大深刻な原発事故。

正直、私も311があるまではチェルノブイリの事故は遠い国の他人事なイメージでした。多分ほとんどの日本人がそうなのでは。原発事故なんてのも「放射能って目に見えないから怖いねー」ってくらいで。まさかその後に日本でも同レベルの事故が起きるなんて想像しなかったし、「ただちに影響はない」って自分たちで言い聞かせることになるとも思わなかった。

でも福島は地震が原因の原発事故で地震に伴う津波の犠牲者の方が大きかったですが、チェルノブイリは純粋な原発事故です(地震説もあったけど)。4号炉が実験中の制御不能で炉心溶融(メルトダウン)を起こして爆発し、その後の黒鉛火災によって広範囲に放射能が拡散しましたが、ソ連は当初は事故を隠し、理由を告げずに住人を避難させます。海外へは放射線量の異変に気付いたスウェーデンから詰められて仕方なく事故を認めてます。

そして火災と放射性物質の漏洩を止めるために作業員が大量に投入され、結果たくさんの人が亡くなっています(ただし原発事故で亡くなったと国が正式に認めたのは初期の31人)。その際の4号炉から漏れ出て固まった放射性物質が『象の足』で、炉を塞いで封じ込めたのが『石棺』です。直接の作業員以外でも、放射能汚染された地域では被曝によって白血病や甲状腺がんなど健康被害が増えたり、近隣住人にも被害が出ています。また放射線量の特に多い地域は『ホットスポット』として立入禁止区域に認定されました。

事故の原因は当初は運転員の規定違反と言われていましたが、後に制御棒の欠陥等の施設の不備が認められています。この事故では現場責任者は裁判で有罪になると共に、事故を隠蔽し対応が後手に回った政府の責任も問われました。この事故のせいでソ連が崩壊したとも言われてます。


福島第一原発事故後に文庫で再刊された、チェルノブイリ原発事故後のインタビュー。
今回のドラマでも取り上げられてた消防士と妻の話も出て来ます。
インタビューによると脚本家と役者さんも、これの英語版『Voices from Chernobyl』を読んだそう。

チェルノブイリの祈り――未来の物語
(著)スベトラーナ・アレクシエービッチ
(岩波現代文庫)

ということで今回のドラマもこの事故をベースに作られてます。以下、ざっくりと。

ドラマの大雑把な感想

E01 “1:23:45” 事故発生、消火活動
E02 “Please Remain Calm” ホウ素砂投入、避難開始
E03 “Open Wide, O Earth” 水抜き、トンネル掘り
E04 “The Happiness of All Mankind” 除染、石棺、IAEA会議
E05 “Vichnaya Pamyat” 真相、裁判

話の流れはこんな感じ。ほぼ時系列通り。

We did everything right.

事故からきっかり2年後の1988年4月26日午前1時23分45秒のシーンから始まり猫の可愛さに見とれてると、事故の日に戻って謎の爆発音と火柱で、ポール・リッター登場。今回はシリアスドラマなのでコメディパートなし。1話目は活躍してるけどその後は3話まで出番なし。←私以外にはどうでもいい情報。そしてドラマは事故対応と調査で派遣された科学者のヴァレリー・レガソフ(Valery Legasov)と副首相ボリス・シチェルビナ(Boris Shcherbina)を中心に、事故後の流れが描かれていくと。

※最大のネタバレ…。
HBOの公式Webサイトには、既に全5話分の脚本PDFも公開されてます。英語ですが。

Chernobyl Scripts
https://www.hbo.com/chernobyl/episode-scripts

ドラマは事故の映像化と役者の演技がキモなので、これ読んじゃっても楽しめるけど、できれば先に見ちゃ駄目よ。と紹介しておいて無茶を言う…。

 
基本的に登場人物は実在の人物を役者が演じています。でもただのドキュメンタリーではないので、作業に当たる人々のエピソードも入ってくる。女性原子力専門家のUlana Khomyuk(カタカナ不明…)とかフィクションキャラも混じってる。事故から数年の物語なので、後の評価とは違う部分もある。

災害もの・パニックムービー的な面があり、ホラー的でもあり、事故の責任追及になると政治的・組織的な駆け引きがあり、更には悲劇や人間ドラマもあり、色々な要素が混じって飽きさせません。ソ連と言えば共産圏なので「Comrade」って呼びかけてたりKGBも要所要所で出てくる。やたらアメリカを気にしていたり。これらは冷戦ソ連のお約束。

ドラマなので実在の人物もエピソードも勿論フィクションは混じってます。KGB長官のカッコよすぎる脅しの数々とか記録残ってるはずない(と思う)し、実際の事故の時間は、アキーモフ(Aleksandr Akimov)が『AZ-5』ボタンを押した午前1時23分40秒とされていて、爆発の時間は7秒後と言われてるけど(定かではない)、ドラマではキリ良く1:23:45の並びにしていたり。

HBO『Chernobyl S01E05』
Chernobyl チェルノブイリ

善悪対立が強調されてる部分とかドラマならではの描かれ方もしてます。一方で普通のドラマは重すぎると視聴者側が疲れるので、息抜きや笑えるエピソードも入れたりするんだけど、それがほぼないってところはドキュメンタリー的な表現に比重を置いてるとも言える。笑えるシーンをあえて挙げるなら、我らがポール・リッターの「Raise the power」ダメ押しと、ボリスが電話ぶっ壊して新しいのくれって言ってたところくらい?

It is beautiful.

事故対応の流れは事実の通りなので見てる側には先の予想はつくんだけど、このドラマの場合はむしろ知ってるからこそ、それダメ!って止めたくなったりハラハラする。最初に消火活動に来た消防士が何も知らずに破片触ってたり、住人たちが火災を野次馬してたり、若い作業員や動員された炭鉱夫たちが軽装で無謀なことしてるのも、その後を想像すると怖い。実際もそうやって決死の作業をしたおかげで被害拡大を防いだそうだけど、急性被曝で全身溶けてる人とか出てきたりきついシーンもあります。

そして色々考えさせられるところも多かった。例えば上が吹っ飛んでる原発施設の向こうが見えてるシーンは、ニュースで散々見た福島3号機思い出したし。日本は放射能より津波の被害の方が大きかったので原発被害は軽視されがちだけど、原発事故ってやっぱり怖いなって思ったし。東海村の方の事故も思い出した。隠蔽とか政治的な対応もやっぱり日本と比べちゃう。

というわけで。全編シリアスでエンタメというにはヘビーだったので「面白い」って言い方も変な気がするし、「日本で公開されたらぜひ見てね!」って軽く言える内容ではないけども、ぜひ見てね!