性格俳優とCharacter actorの違い?

今回は『Character actor(s)』について。日本語だとそのまま直訳で『性格俳優』となるわけですが、アメリカ人とドラマの話をしていて、日本人の私が思う『性格俳優』と彼女の言う『Character actor』が少し噛み合ってなくて何か違う気がすると気づいて、いろいろ話した時に分かった点を書いてみました。

とはいうものの、これはきっちりした定義があるわけではなくてニュアンスの差なので、そもそもの日本語の『性格俳優』も私の思うものと他の人の思うものが違っているかもしれないし、これが絶対正しいわけではないですが。

まず日本語の『性格俳優』について。

『性格俳優』と聞くと、日本人がまず思い浮かべるのは、個性的な役をやっている役者さんが浮かぶと思います。最近の役者さんではあまり呼ばれてるの見たことないけど、ちょっとやばい役とか役に入り込んでる系の役者さんが呼ばれてたり。

主人公を支える理解ある上司とか、いつも品のいいおばあちゃんを演じてる女優さん、逆にいつも意地悪な姑役してるとか、優しいおじいちゃん役をよくやってる人なども、『性格俳優』のカテゴリに入っていたりするかも。

ではそれらは英語では『Character actor』とは呼ばないのか?と言うと答えは「ノー」で、英語の『Character actor』でも、そんな感じの役者さんはいます。

じゃあ何が違うのかというと、日本語で『性格俳優』と呼ぶ時は、演技がうまい役者さん(という前提がそもそもひどい…)で、主役級の人か、ドラマなどにメインで出ていて主人公を支える『名脇役』を指している。と思う。名前の知られた人の演技に対する誉め言葉的な感じ。

一方で英語だと主役級やメインで出てくる人たちとか、名前が通った役者にはあまり『Character actor』は使わない。そして日本では意識されないような、ゲスト出演者としてスポットで登場してくる個性的な役者にも使われてる。

私がアメリカ人の話を聞いていて「???」となったのは、このゲストの個性的で(無名な)役者さんを指すのに彼女が『Character actor』って言ってたからだったりする。

では英語の『Character actor』とはどんな人か?

次に英語の『Character actor』はどんな人を指すかというと、ちょうどいい定義が書いてある記事を見つけました。

‘King of Character Actors’ Charles Durning Dies
https://fox8.com/news/entertainment/king-of-character-actors-charles-durning-dies/

You may not know his name, but anyone who watches movies and television knows the squat, tough-faced character actor Charles Durning, who died on Christmas Eve, according to his family.

これはチャールズ・ダーニング(Charles Durning)という往年の『キャラクター・アクターのキング』が亡くなった記事です。

「役者名は知らないかもしれないけど、顔を見たらあの人かって分かる俳優」

これが英語の『Character actor』。名前は知らなくても、個性的な役で映画やドラマを見たらこの人かって分かるような人。そしてただの脇役なだけではなくて、それなりに目立つシーンがあって、個性的な役柄や特徴を持った人が多い。

いつも悪党のボスをやってるとか、有能だけどうるさい社長秘書をやってるとか。ある意味、みんなが思うその手のキャラクターの典型的な役をやっていたりする人。けど完全なモブではなくて、またこの人かって思ったり、印象に残るような感じのキャラクター。

最初に書いたような、日本のドラマでもたまに見るいつも優しいおばあちゃん役・意地悪な姑役の人たちも当てはまるけど、大体若い頃は人気の女優さんとかがやってたりするので名前は知られてないかは微妙だったり。まあアメリカでベテランの『Character actor』と呼ばれる人も、若い頃はレギュラーだった人なんかもいるそうなので似たような感じでしょうか。

 
またスポットで出てくる率の高い『Character actor』は、アメドラだとイギリス系アクセントとか南部訛りがあったり、見た目が特殊だったりで、いつもその辺を強調した役を演じてたりする。ちょっと小太りで南米アクセントのおっさん俳優がいつも南米マフィアや密輸とかの犯罪してる悪役演じてたり。

アジア系の俳優さんもアジア系ってだけで特徴があるので『Character actor』と呼ばれる人も多い。日中韓のルーツがある人だと、クライムドラマではカンフーやってたりアクションやってたり、ヤクザとかの役やってたりも…。

ジェームズ・ホン(James Hong)さんもベテランだけど、一般市民役からぶっ飛んだ謎アジア人までいろいろやってる。ていうか昔は普通に『脇役』って感じだったのに、見るたびキワモノ度がエスカレートしてく…。
性格俳優とCharacter actorの違い?
性格俳優とCharacter actorの違い?

おじ(い)ちゃん俳優ばかりだけども、他にもアジア系俳優さんではクライド・クサツ(Clyde Kusatsu)、ツィ・マー(Tzi Ma)、ケン・チョン(Ken Jeong)って俳優さんたちも有名。WikipediaとかIMDbとか見ると、連続ドラマの一話ゲストで特徴的な役をやってることも多いから「名前は知らないけどどこかで見た」と思う率が高いかも。

https://en.wikipedia.org/wiki/James_Hong
https://en.wikipedia.org/wiki/Clyde_Kusatsu
https://en.wikipedia.org/wiki/Tzi_Ma
https://en.wikipedia.org/wiki/Ken_Jeong

 
『Resistance(Rebellion リベリオン: Series 2)』でいつもIRAとかガラの悪い役やってるって書いた役者さんも、いつもちょっと出てくるだけの割には、歌ってたり演説してたりキレてたり、毎回特徴的で目立ってて英語の『Character actor』のカテゴリに入る。その人の場合、アイルランドアクセントで、なおかつ見た目が怖そう的な…。←超失礼。※私が見てるジャンルが偏ってるだけで、普通の優しいお兄さん役やってるのもあるかもしれない…。

 
というわけで『Character actor』って呼ばれる役者さんは、いつも似たような役をやっていたり、持っている特徴(個性)を強調したクセのある役が多い。アジア系の人が本当は生まれも育ちもアメリカで英語もネイティブ発音なのに、役柄としてあえて分かりやすいアジア訛りにしてたりとか。

そしてあくまで『脇役』なので、美男美女でもなかったり。むしろ個性的な容貌の方が多い。そういう特徴的なキャラクター性から、マニアなファンがついたりすることもあったり。

またそういう特徴が生きる役=特定のジャンルで偏っていたりするので、全然知らない人には知らない、なんて場合もあったり。

クライムドラマでよくマフィアのボス役やってる人は、恋愛ドラマを好む人には無縁だよね。私も日常系・恋愛ドラマによく出てくるタイプの人は全然知らない。とはいうもののたまに全然違うジャンルで、いつも強面悪役の人が良いパパ役とかやっててギョッとしたりするけども。笑。

日本のドラマで当てはめると、ワイドショーとかの再現ドラマでよく見る人とか、ヤクザドラマに出てくるガタイのいい人とかが当てはまるでしょうか。この辺は日本語では『性格俳優』ってより『キャラクター俳優』って訳し方の方がわかりやすいのではと思ったり。下の記事なんかも『character』を完全に日本語の『キャラクター』の意味で使ってるし。

The New Generation of Character Actors
https://www.nytimes.com/2017/11/21/t-magazine/character-actors-andy-serkis-ben-mendelsohn-don-cheadle.html

長くなるけどこれに『Character actor』の変遷っぽいのが書かれてます。翻訳して読んでみてね。

大雑把に近年のとこだけ書くと、一昔前は特定の役ばかりやってる人が多かったけど、最近はどの役をやらせても自然なカメレオンタイプが増えたとか書いてある。その辺は、いかにもな役=ステレオタイプが差別につながるとかって言われてる昨今の流れあるかもしれない。

定義に関してはたびたび

(Don’t recognize their names? Google their faces.)
名前がわからない?顔をググってみてね。

These performers may not be conventionally handsome, nor are they truly household names,
これらの役者は従来通りのハンサムでなく、誰もが名前をよく知る人ではないかもしれませんが

とか出てくる通り、誰もが名前を知ってるようなメイン級の役者さんではない。

ただ最初に

All actors play characters, of course, but only some are called “character actors.” The term is contentious ― performers rarely use it to describe their peers ―

勿論、全ての俳優はキャラクターを演じますが、『Character actor』と呼ばれるのは一部だけです。この用語は議論の余地があります。出演者が仲間を説明するためにそれを使用することはめったにありません。

と断りがあるように、明確な定義があるわけでもない。

『Character actor』とは結果論?

NY Timesの記事にもあるように、はっきり「この人は『Character actor』です」って言えるような固定したものはありません。何かの役が当たって有名になればこの人たちもみんなが名前を知るメジャー俳優と呼ばれる可能性もある。実際この記事に出てきてる役者さんたちは割とメジャーな人ばかりだし、充分有名人じゃん、て思う人もいるかもしれない。

『Character actor』は目指してなるものではなくて結果的にそうなってるだけで、視聴者は『Character actor』だと思って見ていても、役者本人はいろんな役もやってみたいけど回ってくるのがパターン的なだけって場合もあるかもしれない。ベテランの人の場合は、年を取ると似たような役ばかり、とか。

役者さんも、特に若い人はメインキャラを演じたり売れてメジャーになることを目指してる人が多いはずだし。そういう場合は『下積み』がいつも似たような役ばかりで『Character actor』状態だけど、それは進化の途中を指してることもあるかも。

これはベトナム戦争でアメリカへ渡って成功した元ボートピープル役。時代を感じるね。当時どう見ても韓国系だよなと思いつつ見てたけど、アメドラだとアジア系でひとくくり…。
性格俳優とCharacter actorの違い?

ダニエル・デイ・キム(Daniel Dae Kim)。アメドラだとよく日本人役を中国韓国の俳優さんがやってるけど、この人もやってた。上のみたいにベトナム人とかアジア系の警官とか一話完結の役でよく見る『Character actor』だったけど、『HAWAII FIVE-0』とかでレギュラーになって今は有名俳優。今年は新型コロナウイルスにかかってニュースになりまくってたし…。元気になってよかったね。

 
ちなみにショーン・ビーン(Sean Bean)とか、いつも死に役ばっかりやってて有名な役者さんとかも広義には『Character actor』ですが、大体メインキャラだし、本人の名前が既に有名なので『Character actor』って(あまり)言われない。ので、やっぱり日本語の『性格俳優』とは使い方が違う。

逆に「いつも変わった死に方してるけど名前の知られていない役者さん」が、その特徴を生かして、「万年脇役役者が事件に巻き込まれる話」の主役に抜擢された――みたいな場合は『Character actor』が主役になる。

 
ということで。日本では演技を褒めるのに使う『性格俳優』ですが、欧米の役者さんに『Character actor』って使うと「(あんた無名/脇役だけど)個性的な演技する人ね」って、()でくくった部分のニュアンスが含まれてしまうこともあるので、面と向かってはあまり使わない方がいいかもしれない。NY Timesの記事に「仲間に使うことはない」って断りがあるのもその辺が理由かな。

勿論、相手の受け取り方もあるし『キャラクター俳優の王様』くらいまで極めてベテラン化してる大御所には喜ばれるかもしれないけども、若くてメジャーを目指してる役者さんには誉め言葉にならないかも。