アメリカドラマとアメリカの17の迷信

突然ですが、何か信じている迷信やジンクスはありますか?

夜に口笛を吹くのは泥棒を呼ぶから駄目とか、霊柩車を見たら親指を隠さないと駄目とか、靴下を履いて寝ると親の死に目に会えないとか……。口笛はそもそも吹かないけど、寒い日は靴下履いて寝ちゃうし、夜に爪切るし、新しい靴おろしたら雨降ってきちゃったりするし、私はあまり守れていません。

なんでこんな話をしているかというと、先日、アメリカの友達が鏡が割れるのはアメリカでは不吉だって会話をしてたから。そのあと意識して見るとアメリカのドラマでは何かと鏡が割れてるor割ってると気が付いた。物投げてたり、殴りつけたり、肘で突いたり…。洗面台の鏡(奥が棚で薬や小物が置いてある)は特によく割られます。対して日本のドラマで鏡を割ってるシーンはあまりない、と思う。日本でも鏡が割れるのは不吉だけども、不吉度が違うのかな?

けどまあ鏡に限らず、窓ガラスも車のフロントガラスも額縁もコップも食器も鉢植えも花瓶もアメドラでは割るために存在してる面がある。なので鏡だけが特別割れてるわけでもないのかも。その辺は土足文化だから、室内でも気にせず破片ばらまいちゃうのかなとか思ったけども、同じアクションジャンルでもイギリスドラマはそんなに乱暴じゃないからアメリカが凶暴なだけだった。笑。

アメリカドラマとアメリカの迷信 American Superstitions

迷信がどこまでドラマの演出に関わっているのかは分かりませんが、エピソードやモチーフとして出てくるものも多いし、不吉さの暗示に使われてるものもある。鏡が割れるシーンも、迷信を知らなくてもなんとなく不気味なイメージはあるけれど、鏡を割るのは不吉って前提があればこそ、より印象的になる。

というわけで今回はアメリカの迷信・ジンクス・おまじないをざっと17個拾ってみました。知ってるとドラマを見る時に、より楽しめるかも。

 

1. 鏡を割るな。

これが上で書いたやつ。割れ目から魔女が出てくるとか、7年呪われるから不吉と言う。黒魔術のウィッチボトルで割れた鏡の破片を混ぜるのもここから来てるのかもしれない。

日本でも割れた鏡に顔を写すのは縁起が悪いって聞いたことがある。

  

2. 室内で傘を開くな。

雨の日に外でするものをうちの中に持ち込むのは不吉だとか、昔の神話から来てるとか説はありますが、とりあえず室内で傘を開くのはタブーらしい。お店で買おうとした傘を試しに開けるのも、ホテルの部屋とかで干してるのを見られても、嫌な顔されることがある。アメリカ人は傘干さないの?広げないとカビるよ。※柄の確認するのもお店の外でやるんだって。

ちなみにこれも日本でも、新しい靴を雨の日におろすのは縁起が悪いとか似たこと言います。死人と同じだから夜に新しい靴をおろすのは駄目ってバリエーションもある。ただし日本の場合はお通夜に新しい足袋を履かせるところに由来してて、アメリカとは理由が違います。

 

3. くしゃみをすると生気が抜ける。

魂が抜けないようにそばにいた人が「Bless you」って声をかけてあげる。アメドラでもよく見るやつね。そんな文化は日本にはないのでリアクションしないと、気になるのか「Bless youって言って」って催促してきます。ねだって言ってももらっても効果があるらしいというか、言われないと気になるんだろうね。

人があくびを無意識に手で押さえるのも、魂が抜け出ないように&悪霊が入ってこないようにって意味があるらしい。これ私もやるけどそんな深いこと考えたことなかった。

 

4. 幸運を祈る時は指をクロスする。

クロスフィンガーとかフィンガークロスとか言って、これもドラマでよく出てくる「幸運を祈る」ってポーズ。キリスト教から来てて十字架を意味してるらしい。両手で指を曲げてるのは ” ” を意味するエアクォーツやつでまた別ね。

 

5. 黒猫が横切るのを見たら良くない日。

午前中に見たら、と制限が付く場合もある。(アメリカ以外の)地域によっては反対に幸運の意味になる場合もある。

日本だとカラスかな。もしくはクロネコ○マト?


英米の迷信・俗信に関して体系化に努めると共に、
民俗学的、心理学的その他の観点からの考察を試みた本。

英米人の迷信・俗信考
―古来の信とその心を人と文芸に探る
(著)藤高 邦宏 ふくろう出版

 

6. お願いごとは木を叩け。

一神教のはずが困った時は木の精霊にもお願いごとをするらしい。そのために木とかテーブルをコンコン叩くんだって。不吉なことを聞いた時も、守ってもらうためにコンコンする。

 

7. 月を見る時は向きに気をつけよ。

右肩越しに月(満月)を見るとラッキーで、反対に左肩越しで月(新月)を見るのは縁起が悪い。()内は人によって変わるみたい。でも満月は幸運で、新月は悪運って前提があるのか、ビジネスを始めるのも満月の日がよくて新月は駄目と言うのもあるらしい。

一方で、満月の下で寝るとおかしくなる(lunatic)とか狼男の話もあるし、新月の時に銀貨をポケットに入れとくと倍になるとかも言うので、どちらが良くて悪いのかは諸説あるみたい。

他にも満月は満ちてる状態だから、満月の時には口論するなとか、病人は満月を見てはいけない(どちらもその状態が継続してしまう)みたいな話もある。

日本のスピリチュアルの人も、お金が増えるように満月の日に財布を干せ?と言っていたので、日本にも満ち欠けから連想した迷信はあるかもしれない。

 

8. 落ちている小銭は拾え。

ラッキーペニーと言って、ペニー硬貨を拾ったらその日はいいことがあるとか。

日本でも1円玉を拾うとお礼に家族を連れてくる(もっと大金が入ってくる)って説があります。日本人の方が強欲ね…。

 

9. 亀裂を踏むと母親が怪我をする。

何で?って感じですが、道の裂け目や舗装の境を踏むと母親の背骨が折れるんだって。ひえー。亀裂は墓地につながるという俗説から来ているそうですが、おそらく裂け目から落ちちゃう事故を防ぐとか、子供に危険を避けさせようとそんな話を作ったんでしょう。

日本だと家の中で「畳の縁(へり)を踏むな」は言いますが、それは端っこなので段差が危険とか、傷みが早くなるから。

 

10. 13(日の金曜日)と666は不吉な数字。

どちらも聖書由来で、13は裏切り者のユダの数字、666は黙示録の獣の数字。映画の『13日の金曜日』と『オーメン』だね。日本で「死」につながる「4」と「苦」につながる「9」が避けられたりするように、英語圏(というよりキリスト教圏)ではこれらの数字を避けたりすることもある。

   

The Omen オーメン666
なつかしい…。まだシリーズ続いてたんだ…。

 

11. 梯子の下はくぐるな。

梯子の下をくぐるのは不吉らしい。横を通るのはいいらしい。キリスト教の三位一体から来てるらしい。バランスを壊してしまうから縁起が悪いんだって。作業中に下通るのは危険だからって合理的な説もある。

 

12. 歯が抜けたら妖精がお金をくれるよ。

乳歯が抜けた時のおまじないで、枕の下に入れて眠ると、妖精がお金に換えてくれる。サンタさんと同じで妖精の正体は親なわけですが、アメドラでは子供がよくやってる。強盗にそいつの子供の歯を見せて改心させてるエピソードとかあった。

日本だと下の歯は屋根へ投げて、上の歯は土の中へ埋めろって言うね。

 

13. 母親から譲られた指輪はお守りになる。

神様の前で誓うこともあってか結婚指輪は日本人よりもつけてる人は多いけども、それ以外の指輪にも意味がある。はめる指によって意味が変わるというのは日本でもよく知られてるけど、あまり聞かないところでは、母から譲られた指輪はお守りの意味があるんだそう。代々受け継いだものはもっと強くて、日本風に言うと「ご先祖様が守ってくれるアイテム」って感じかな。おそらくヨーロッパから来た話だと思うけど。それ聞いてからドラマを見ると、確かによく母の指輪を娘が譲られてる。

日本の形見分けには守ってもらう意図はないよね。

 

14. 花婿は結婚式当日まで花嫁のウェディングドレスを見てはいけない。

見ちゃうと縁起が悪いから、花嫁は自分と女友達だけで衣装を決める。日本の結婚式では新郎新婦で衣装合わせするので全く違いますが、(ヨーロッパの)顔を見ずに親同士が相手を決めていた時代の風習から来ているらしい。

他にも結婚式で花嫁は、新しいもの・古いもの・借りたもの・青いもの(Something old, something new, something borrowed, something blue.で韻を踏んでる)を身につけるとか、ジューンブライドも結婚にまつわる迷信かな。

 

15. 骨とか足とかぐろいものをラッキーモチーフにする。

ウイッシュボーンって言って鳥の叉骨は幸運のモチーフらしい。これを使って占いをしたり、お守りにしたりする。アメドラだと子供がよくつまんで占ってたりする…。

ウサギの足もラッキーアイテムって言ってキーホルダーにしてたり。これもドラマでは車に吊るされてたりするけどぐろい…。一応フェイクも流通しているけど本物も使うらしい。おえっ。狩猟文化があるから日本とは感覚が違うのかもしれない。

日本だとイワシの頭を飾るようなものと思えば…???

他にも四つ葉のクローバーとか、馬の蹄とか、てんとう虫とか、ぐろくないラッキーモチーフはありますが、その辺は日本でも有名でアクセサリーなどにも使われてます。上のふたつが日本に入ってこなかったのは、フェイクでもやっぱりホラーすぎて受け入れがたいからでは…。

 

16. ろうそくの明かりで鏡を見ると貞子が出て来る。

貞子は嘘で、お化けが写るとか、血まみれの自分が写るとか、学校の怪談的な話はアメリカにもあるらしい。ろうそくと何かいろいろ用意して行う未来の夫を写す儀式もあるんだそう。他人なんて写らないのが当たり前ですが、何も写らなかった!相手がいない、結婚できないってことね!わーん!って泣くところまでがセット。

 

17. ひとつのマッチでタバコ三本に火をつけると誰かが死ぬ。

これはまだ割と近年の第一次大戦以降の迷信で、3人の兵士が同じマッチでタバコに火をつけたら3番目が撃たれたって話から来てる。3人が火をつけるほど長い間燃やしてたら気づかれるだろってオチらしいけども…。映画の演出とかでさりげなく使われてたりするので、知ってるとこれかって分かるやつ。『Three on a match』って由来をタイトルにした映画やテレビ番組、本などもあります。

      

アメリカだけでなくヨーロッパでも有名で、タイトルやモチーフにも広く使われている。

 
というわけで今回挙げたのはごく一部。

アメリカはまだ若い国だし日本と比べると合理的なイメージがあったけど、意外とオカルトチックなものとか占いや魔術的なものもあります。国土の広い国なので地域によって変わる場合もあるし、ヨーロッパからの移民が作った国なので、ヨーロッパに同じ迷信があるものも多い。困った時に何かに縋ったり、ゲンを担ぐのはどこでもそう変わらないのかもしれない。ただし宗教関係が多いので、この先は廃れたり変わっていくものもあるかもしれません。

海外から日本に戻って。
日本国内の俗信・迷信・民間信仰を紹介した本。
個人的なものから「井戸の水が枯れると地震が来る」みたいな一般的な伝承までいろいろ紹介されている。

魔除けの民俗学 家・道具・災害の俗信 (角川選書)
(著)常光 徹